《狂的ロマンス〜孤高の若頭の狂気めいた執著〜》鳥籠から出るために⑥
ついさっきまで、飽きられたら売られるかもしれない。そう思うと、不安で仕方なかったはずなのに。
ーー居なくなった途端に寂しいだなんて。一、どうしちゃったんだろう。
尊の姿が見えなくなってからも、尊の面影に、囚われてしまっているかのように一歩もけずにいる。
桜がぽーっと思考に耽っていると、尊から桜のことを任されたヤスから耳慣れない呼稱で呼びかけられた。
「じゃあ、姐さん。部屋にご案しやすね」
一瞬、自分ではないのかとも考えたが、何度目を瞬いてみても、ヤスの視線は自分にしか向けられていない。
確か、任俠映畫などでは、『姐さん』というのは、極道の世界でいうところの、『奧さん』と同等の意味合いがあったと思うのだが、違うのだろうか。
それとも、そういえば既に知っているようだったため、自分の自己紹介はまだだった気がする。
ーーもしかして名前を知らなくて仕方なくそう呼んだとか……。
「あの、『姐さん』ではなく、桜ですが」
そう思いおずおずと名前を名乗ったのだが。
あたかも車中でのことを再現でもするかのように、ヤスとその傍に控えていた兵藤に、またもや同時にぷっと吹き出されてしまう。
ーー何? どうしちゃったの?
困する桜に対して、なかなか笑いがおさまらない様子のヤスは、腹を抱えつつ笑みじりの聲を放つ。
「名前は知ってますって。いや、でも、お祖父さんがよく観てたって言う任俠映畫でも出てくると思うんすけどねぇ」
その口吻からして、どうやら名前は知っているようだ。だが、やはり自分の知識とはズレがあったらしい。
一度言葉を切って、すっと笑みを引っ込めたヤスが何やら思案するように宙を見つめること數秒。
う~んと唸るような聲をらしてから。
「世間知らずのお嬢様にもわかりやすく説明するとですね~」
そう前置きしてきた。そして今度はやけに得意げな顔で、桜の正面にずずずいっと進み出てくる。
桜は、『世間知らずのお嬢様』という言葉に過剰に反応してしまうのだった。
ーーや、ヤスさんまで……! 確かに世間知らずだけど、そんなにハッキリ言わなくても。
華道一筋で外の世界を知らないという自覚はある。
けれど、他人から言われるとなんだか馬鹿にされているようで面白くない。
尊に言われたときは、々あったうえに、禮を返さなくてはという思いに突きかされていたので、そんなことを思う暇さえなかったのだ。
々不貞腐れ気味にヤスのことを見遣っていると。
「社長のイロ、つってもわかんねーか。社長のこれ。つまり、ってことっすよ」
自分にもわかりやすく、眼前に掲げた右手の小指を立てつつ説明してくれはしたが、桜はますます困することとなる。
ーーって、つまり、人ってことで合ってるのかな? でも、初対面だし、違うよね。じゃあ何になるんだろう?
「姐さんこちらです」
僅かに首を傾げ思い悩む桜は、やけにニコニコとした笑顔のヤスに促されるままに歩みを進めつつ、尊の言葉を思い返した結果。
『飽きるまで傍に置いてやるから一杯勵め』イコール、沢山いる遊びののひとりとして囲ってやる、という意味だったのだと結論づけ、改めて覚悟を決めたのだった。
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