桜のぷるんとしたのらかなでも味わうかのように、尊のが上下を互に啄んでいく。

食むように挾んではチュッと艶かしい音と共に、薄い皮の表面を吸引される。

その作を幾度となく繰り返されているうち、余りの心地よさに、桜はうっとりしてしまう。

誰かを好きになったこともなければ、キスの経験など、もちろんあるはずもなかった。

目を閉じるタイミングさえもわからなかったのだ。

夢現で自分のことを極上のキスで翻弄している尊の端正な相貌を凝視してしまっている。

今日逢ったばかりの尊と、こうして口づけをわしているなんて、自分でも信じられない。

あたかも夢でも見ているような心地だ。

うっとりするほど艶めいた尊の姿に魅られてしまっていた桜のが不意に解放された。

「どうした？　なにか気になることでもあるのか？　それとも、何をされてるか見ておきたい分なのか？」

そこに降らされた怪訝そうな尊の低い聲音に桜は目をぱちくりさせる。

ぼんやりしていたせいで、思考と行とが伴わなかったのだ。

尊の言葉はしっかり聞こえていたので、顔を紅させつつも、數秒遅れで口を開いた。

「////ーーえ、あっ、あの、違います。その、こういう……ことが……は、初めてで。だから……その」

だが自分の口から未経験だとは言い出しがたい。自然と言葉は途切れ、徐々にすぼみになっていく。

「ああ、なるほどな。どうすればいいかがわからなかったってわけか」

尊は、すぐに察してくれたようだった。

けれども、そのことに安堵するような心境ではない。第三者の口から改めて聞いてしまうと、どうにもいたたまれなくなってくる。

きっとこういうことにも慣れているだろう尊に言わせれば、二十歳になったばかりのオコチャマでしかない自分とは正反対の、大人ののほうが好みであるに違いない。

飽きるまで傍に置いてしいだなどと、よくも言えたものだと自分でも思う。

途端に、尊に対して申し訳ない気持ちでいっぱいになってくる。

「……はい。すみません」

思わず尊に謝ってしまっていた。

「謝る必要なんてない。むしろ愉しみだ」

尊から返ってきた言葉を噛み砕くことができない。桜は首を傾げるしかなかった。

「愉しみ？」

「ああ、仕込み甲斐があるってことだ」

「仕込み……がい？」

言われた言葉をオウム返しすることしかできない。

その都度、どことなく嬉しそうに見える尊から返される言葉に、まったく理解が及ばなかったからだ。

すっかり困して心配そうに眉を寄せてしまっている桜のことを、ふっと笑みを零した尊が、宥めるように優しく頭をでる。

そうして桜に言い聞かせるようにして、今までで一番優しい聲音で囁きかけてくる。

「心配するな。変なことを強要したりはしない。ただお前にである悅びをじっくりと味わわせてやるだけだ」

その聲音に桜が思わず聞きっているうち、いつしか尊の手は桜が寛ぎかけていた襟元へと辿り著いていた。

「まずは、こうやって」

桜が気づいたときには、言葉を切った尊の手により、ガバッと強引に広げられた合わせ目からは、サラシで包まれたが曝け出されてしまっている。

驚いている間もなく、「邪魔だな」と煩わしそうな呟きを落とした尊に、これまた強引にサラシをずりおろされたことにより、素のがふるんとまろびでてしまう。

「////ーーキャッ!?」

たちまち恥に塗れ、短い悲鳴を上げた桜が腕で元を隠そうとするのを、やんわりと手で制されてしまった。

ただでさえ恥ずかしいというのに、尊にまじまじと見下されてしまっている。

二十歳にしてはさの殘る桜の顔とは似ても似つかない、満なを前に、尊は至極心したように口を開く。

「初心なお嬢様は、ずいぶんとらしいをしてるんだな」

その聲を拾った桜は、これ以上にないくらい全を赤く染めあげ悶えるしかなかった。