妊娠発覚から一週間が経ったこの日。桜は骨盤腔MRIの検査をけるために石総合病院に訪れていた。

検査も終わり、用意してくれていた控え室で沈痛な面持ちで待っていた桜だったが、幸いにも誤診だったことが判明し、診察室でその詳細を聞いているところである。

「実は、たまにあるのですが。おそらく腸の容が影となって見えていたんだと思われます」

「……そ、そうですか。なんかすみません」

「あー、いえいえ。の方は多いですからねぇ。こちらこそ、妊婦さんを不安にさせてしまい、申し訳ございませんでした」

「……ああ、いえ」

張の糸が緩んで安堵するよりも、普段から便がちだったことが原因であるとわかり、恥ずかしいやら居心地が悪いやらで、でもあったらりたい心境だ。

今日も樹里が付き添ってくれていたのだが、數分前に誤診だとわかるや否や、のっぴきならない重要案件のことで大至急電話をしなければならないとかで席を外している。

病気でないとわかったものの、このことを樹里にも話さなければいけないのか。そう思うとなんだかいたたまれない心持ちになってくる。

それに、尊にも妊娠の報告をしなければいけない。

妊娠が発覚したときには、嬉しくてどうしようもなかったが、最悪なことばかり考えてしまっていたせいか、なんだか気が抜けて、そこまで考えが及ばない。

ーーでもよかったぁ。

説明も聞き終え、畫像を見ながら説明をしてくれていた三十代ほどの男醫師がPCの電源を落としているのを目に桜がそろそろ部屋から出ようかとしていたちょうどそのとき。

出り口の引き戸がバンッと叩きつけるような豪快な音を立てて開け放たれた。

醫師も桜も何事かと振り返った先には、鬼のような形相でこちらを睨みつけた尊が肩を上下させ荒々しい呼吸を繰り返す姿があり、驚きすぎてなにがなにやら思考が追いつかない。

尊の目は走っていて、今にも襲いかかってきそうな狂気を孕んでいるように見える。

ーーこ、これは一なにごとですか？

なにがあったのかは皆目見當もつかないが、ただごとではない雰囲気が漂っていることだけは理解できた。

けれどこんなに怖い顔をした尊にお目にかかるのは初めてで、どう聲をかければいいかがわからない。