その合間にも、桜の放ったもの以上に、嬉しい言葉を返してくれる。

三ヶ月前、尊が極道の世界から引退したあの日を境に、こうして気持ちを惜しげもなく明かしてくれるようになった。

元極道だけあって、大抵は、獨占剝き出しの狂気めいたものだったり、々傲慢なものだったりする。

けれどそうやって伝えようとしてくれる気持ちが嬉しい。

なにより、同じ想いでいてくれているってことが嬉しくてどうしようもない。

もうそれだけで堪らない気持ちになってくる。

いてもたってもいられなくなった桜は背後の尊の元に振り返る。

尊の相変わらず端正な相貌は、普段とは比較にならないほどに艶めいて見える。

思わずうっとりと見れてしまうほどだ。

それが桜の顔を目にした瞬間、心底嬉しそうに、けそうな笑顔を綻ばせる。

そうしてうっとりするほど甘やかな聲音での言葉を低く囁きかけてくる。

「桜、してる」

「私も。私もしてます」

「俺の方がもっともっとしてる」

「私だって負けませんから」

「桜はらしい顔に似合わず、昔からそういう強なところがあるよな」

「……っ」

尊への想いを伝えたいという気持ちが急く余り、桜はついついムキになってしまった。

そのことを尊に指摘されてしまい、しっとりと大人ののようにできない自分の不甲斐なさにシュンとなり言葉に詰まってしまう。

けれど尊はコツンと桜の額と自のそれとをくっつけ、｢こーら、真にけるな｣そう言ってくるなり。

「俺はそういうところも全部可いと思ってるんだから安心しろ。いいな？」

「はい」

いつものように、たちどころになにもかもをすっぽりと優しく包み込んでくれる。

尊とは歳が一回り近く離れているせいか、こうして時折自分のさに落ち込んでしまうけれど、無理に背びしなくてもいいのかなと思わせてくれる。

思わずジーンとしているところに、ふっと笑みを零した尊の軽口が耳に屆いて。

「桜はすぐにぼーっとするよな」

桜は思わずムッとしてしまう。

ーーこういうところが、子供っぽいんだろうな。

なんて思っていると。

「そういうところが可くて堪らない。昔も今も。だから変わらないでいてしい。それくらい桜のことをしてる」

「ん、んぅ……んんっ」

けそうなほどのとびきりの笑顔を満面に綻ばせた尊に、に満ちた言葉を不意打ちでお見舞いされてしまった桜は、続け様にお見舞いされた甘やかな口づけにより骨抜きにされるのだった。

＊

そんな甘やかなひと時を経て、気づいたときには、尊の逞しいに抱き寄せられ、優しくお腹をさすりつつ、を気遣ってくれる。

「桜、キツくなかったか？　張ったりしてないか？」

「……はい。大丈夫ですよ」

「そうか、よかった」

あんまり心配そうにしているので、思わず吹き出しそうになったが、なんとか堪えた。

とそのとき、お腹のなかでなにかが蠢くような覚が駆け巡る。

「桜、今のもしかして」

「尊さん、今、きましたよね？」

「あっ、またいたぞ」

「ふふっ、元気にいてますね」

初めての胎を尊と一緒にじることができて、それだけでも激なのに……。

「元気なのはいいが、あんまり暴れて桜に負擔なんてかけるなよ。生まれてくるときも、桜を苦しめないようにすぐに出てこいよ。おい、こら、聞こえてるのか？」

「赤ちゃんにそんなこと言っても通じませんてば」

「そんなのわからないだろ。あっ、いま返事したぞ」

「ふふっ、そうですね」

お腹の赤ちゃんよりも、桜のことを一番に気遣ってくれる尊の姿に、心を打たれてしまった桜は嬉し涙を浮かべながら、この上ない喜びと幸せを噛みしめていた。