《【コミカライズ】寵紳士 ~今夜、獻的なエリート上司に迫られる~》「どんな出會いでも好きになってた」3

始業時間までかかると見込んでいた會議だが二十分の余裕を持って終えることができ、晴久は余った時間でフリースペース前の自販売機でコーヒーを買った。

心なしか、フロアが騒がしい。

(なんだ?)

フリースペースの向こうは総務部である。

先ほどからそこへ営業部の社員も吸い寄せられるように集まっていくのだ。

「あ!  高杉課長!  會議お疲れ様でした!」

「……小山」

総務部へ集まっていく流れに乗っかっている小山が、ちょうどやって來た。

「課長も総務部行ってみましょうよ!  すごいことが起きてるらしくて!」

「すごいこと?」

「細川さんですよ!  隠れ人の!  なんと今日、顔出しで出勤してるんですって!」

「……は?」

晴久の腳は慌てて流れに乗り、小山を追いかける要領でゆっくりと総務部のオフィスへと寄っていく。

まさか、そんな、と思いながら総務部のり口であるガラス戸の側まで來ると、そこにはすでに営業部の若い男社員が群がっていた。

その視線の先には、しい素顔を何も隠さず皆子と話している雪乃の姿がある。

カーディガンもスカートもジャストサイズになっており、クリームの明るい味に変わっている。

(雪乃?)

ガラス戸を隔ててし離れた場所にいる晴久は混気味に雪乃を見つめていた。

どうして今日は素顔で來たのか。疑問が募る中、周囲の男たちはそんな晴久にかまわず騒いでいる。

「細川さんってあんな人だったのか」

「なんで隠してたんだ?」

「ていうか、デケー」

さすがにカチンときた晴久は大人げなく男たちを睨んだが、それでも騒がれている本人である雪乃がギャラリーを全く気にしていない様子に、やがて彼の目は釘付けになる。

雪乃はガラス戸の側のオフィスで、皆子と始業準備を始めた。

「めちゃくちゃ集まってるよ、雪乃ちゃん。男ってやーねー」

「いいんです。今まで不自然に隠していた私も悪いんですから」

雪乃は至って冷靜。

皆子の煽りには相槌をうちながらも、不安がる様子はない。男たちの歓聲が聞こえないかのように、まったく気にせずに手だけをかしていた。

「でも、本當にいいの?」

「なにがですか?」

「もうすぐ、他の皆が出勤してくるよ。巖瀬さんとかも。寫真が回ってる人には、高杉課長のツーショットの彼が雪乃ちゃんだってバレちゃうじゃん」

「いいんです」

雪乃はうなずいた。ふとガラス戸の方へ目をやると、そこには男たちの群れから一歩引いたところで心配そうにこちらを見ている晴久がいた。

(晴久さん……)

雪乃は彼に微笑みかけるようにアイコンタクトをとり、目の前の皆子に答える。

「もう隠す必要ないんです。私の顔も、プライベートも。全部守ってくれる人ができたので」

吹っ切れた彼の清々しい表に、皆子は「あら」と頬を赤らめ、もう過去のトラウマを払拭している雪乃に安堵した。

一方、ガラス戸にり付いている男たちは微笑みかけられたのは自分だと盛り上がり始める。

「見たか?  今の!」

「ああ!  スゲーかわいい!」

小山だけが呆然と雪乃の姿を見つめており、しばらくして晴久を振り返った。

彼の視線に気付いた晴久は、踵を返し、営業部のフロアへと足を戻し始める。

「高杉課長。どういうことですか」

「なにがだ」

「細川さんですよ!  高杉課長の彼じゃないですか!  デートの寫真に寫ってた!」

晴久は足を止め、小山を振り返る。

「そうだ。悪いか」

挑発的な表

小山は「クーッ!」と羨ましがるような悔しがるような聲を上げた後、子犬のように晴久の後を付いていく。

「隣にいたのが小山の彼か?」

「そうです!」

「そうか。大事にしろ」

「します!  してます!」

皆子の口止めを守った試しのない小山に「どうだかな」と返そうと思ったが、そのおかげで雪乃と上手くいった恩がある。

小山が憎めない晴久は、意地悪な臺詞を飲み込んでフッと笑みを落とすと、営業部の仕事に戻った。

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