《【コミカライズ】寵紳士 ~今夜、獻的なエリート上司に迫られる~》「どんな出會いでも好きになってた」4

◇◇◇◇◇◇◇◇

総務部。

「ちょっと細川さんっ!  なんでそんな人なのに顔隠してたの!?」

「すみません……」

「ていうか!  営業部の高杉課長と付き合ってるんでしょ!? 」

「は、はい……」

案の定、始業時間直前まで社員に詰め寄られ、デスクに埋もれていた雪乃。

皆子が「みんな一気に聞きすぎだよ」とたしなめるが、雪乃は丁寧に相槌をうつ。

ギャラリーは始業直前になんとか捌けた。その代わり、今まで寄ってこなかった巖瀬が雪乃のデスクへとやってくる。

「巖瀬さん?」

巖瀬は真顔のまま、「あとでふたりで話せますか」とポツリと告げた。

雪乃は驚いたが、晴久の人だと知られ、彼と一度きちんと話をすべきと考えていたタイミングだったため、ちょうどよかった。

「じゃあ、お晝に」

うなずくと巖瀬は納得し、席へ戻っていく。それを見送りながら、雪乃は修羅場を覚悟した。

◇◇◇◇◇◇◇◇

晝休憩。

晴久の歩みは力強く、軽やかに、晝食のためフリースペースへと向かった。

午前の仕事にいつも以上に気合いがり、プレゼンや営業指導は納得のいくパフォーマンスを発揮した。

彼の心の片隅には、ずっと、先ほど素顔で微笑んでいた雪乃がいて、まるで彼の存在が勝利の神のように心強かった。

流出した寫真を目にした者にはもれなく雪乃と人同士だと知られてしまう。

しかしもう彼が隣にいてくれるから、顔を隠すことも、朝からカフェに寄ることもしなくていい。

何にも怯えず、素を明かしていいのだと思うと、今までの憑きが落ちたかのように晴久の心は軽くなった。

(雪乃が勇気を出してくれて、よかった)

自分たちの生活を取り戻せる。

雪乃とふたりでこれから本當のができるのだ。

(……ん?)

いつもは人のいないフリースペースに、今日は先客がいた。

気にせずろうとしたが、れてくる聲から、中にいるのが雪乃と巖瀬だと分かった晴久は、咄嗟にドアの前で足を止めた。

巖瀬に呼び出された雪乃は、フリースペースのど真ん中で彼と対峙している。

「私、高杉課長に告白しました。すぐ連絡が來て、フラれましたけど。細川先輩ひどいです。知っててなにも教えてくれなかったんですね」

綺麗な顔をぐすぐすと崩して泣いている巖瀬を前に、雪乃は困していた。

後輩、しかも新社員に沙汰でこうも責め立てられては、どう対処していいのか分からない。

「ごめんなさい。巖瀬さんが告白したときは、人ではなかったんです」

正直に狀況を伝えてはみたものの、雪乃は素顔を隠すとともに、その後も関係を隠していたのは事実。

巖瀬をフォローせず放置していたことに違いはなかった。

それを自覚している雪乃は、彼の文句は甘んじてけようと覚悟していた。

「……どうして付き合うことになったんですか。私はダメだったのに、高杉課長はその後すぐ先輩と付き合ったんですよね。どうして私は選ばれなくて、細川さんが選ばれたんでしょうか」

難しい質問をされ、雪乃は息を飲む。

そもそも雪乃も、答えを知らなかった。

外で聞いている晴久は悩ましくうつむいている雪乃の代わりに自分が答えてあげたいくらいだったが、雪乃と部下の問題が絡んでいる狀態で出ていくべきではないと判斷し、彼を見守っていた。

雪乃は首を傾げながらも自分なりの答えを見つけ、ポツリと答える。

「タイミングだったと思います」

「……タイミング?」

巖瀬は眉を寄せた。雪乃は続ける。

「私は口下手ですし、面白くもないですし、一緒にいて誰かを楽しませることは苦手です。でも本當に運がよく、高杉課長と巡り會えました」

「どうやって、ですか?」

「會社以外の場所で出會いました。し運命的だったと思います。どうやって出會ったのかは、にさせてもらいたいんですが……」

「そう言われると聞きたくなっちゃうんですけど」

雪乃はし考え、やはりできないと首を振る。

です。本當に運命的だったので。そのときの相手が私ではなくて巖瀬さんだったとしたら、巖瀬さんが人になっていたと思います」

外で聞いている晴久は、じっと耐えていた。

雪乃は本心を告げたつもりだったが、それは巖瀬を納得させはしなかった。

代わりに彼は「細川さん、全然分かってない!」と頬を膨らませ、さらに雪乃に詰め寄っていく。

「巖瀬さん?」

雪乃は彼の勢いに押され、一歩後退りをした。

「タイミングって、そんなわけないじゃないですか!  細川さんだから選ばれたんです!」

「……え?」

巖瀬は腕を組み、「ハァーッ」と大きなため息をつく。

「細川さんって、自己評価低すぎですよね!  仕事もできるし、優しいし、フォローしてくるし。総務部にったときから細川さんみたいになりたいって思ってたんですから!  だいたい、眼鏡とマスクをしてても人だって分かりますよね。ほかの先輩方が知らなかったなんて呆れました」

「巖瀬さん……」

「でも最近、私が課長に告白したのを知ってからすごく余所余所しいですよね!  あれやめてくれませんか!  私、細川さんに距離を置かれたくありません!」

雪乃は晴久に告白されたときと同じくらいに顔が熱くなり、「えっえっ」と慌て出す。

終始睨み付けてくる生意気な巖瀬だが、それ以上に懇願する目を向け、気難しい貓のように拗ねていた。

雪乃は後輩の意外すぎる本音に思わずキュンとする。

「……ごめんなさい。後ろめたい気持ちがあってあまり話せなくなってしまって。これからはたくさん話しましょう。ね。巖瀬さん」

「……ううぅ、お願いします」

相変わらずグスグスとベソをかいている巖瀬がかわいくなり、ショートカットの髪をポンポンとでた。   

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