《【コミカライズ】寵紳士 ~今夜、獻的なエリート上司に迫られる~》「悪い子にはキスできないな」6

◇◇◇◇◇◇◇◇

土曜の夜、ふたりはホテルの展ラウンジにいた。

今日は、橫浜の港を一するこの景の中を一日中デートし終え、このホテルに一泊する。

今日はふたりが付き合って一ヶ月。

高級ホテルのスイートルーム、夜景を眺めながらのディナーは、晴久からのプレゼントだ。

付き合うのが初めてである雪乃のために、晴久は些細な記念日も祝う心がけをしている。

雪乃は夢見心地でワイングラスを傾け、素直に「味しい」とコース料理を楽しんだ。

「ねえ、あそこのカップル、ふたりともすごい形じゃない?」

そんな噂話がヒソヒソと聞こえてきた。

ドレスアップしたにホテルの誰もが振り返るが、本人達は完全にふたりの世界に浸り、見つめあっている。

「でも、よかったです。晴久さんと伊川さん、仲直りできたんですよね」

紅茶のティーカップを両手でふんわり包み、雪乃は揺れる水面を眺めながらつぶやいた。

「いや、仲直りっていうか……。出社したら普通に謝ってきたし、帯同中も反省していたから仕事中は問題ないよ。でも雪乃は引き続き警戒するように」

「はい。よかった、誤解がとけて」

お持ち帰りされそうな雪乃を発見したときは肝が冷えたが、彼のおかげで伊川と和解できたのも事実。複雑な心境だが、平和な彼の笑顔に絆されつつあった。

最後のデザートの盛り合わせをスプーンで掬いながら、雪乃はキラキラとした瞳を瞬かせた。

「そうだ晴久さん。私、皆子さんっていう仲良くしてくださっている先輩がいるんですけど」

「うん?」

すでに小山を通じて知っている人だが、雪乃から改めて話が出るのは初めてである。

「さっきメッセージが來てて。今日、彼氏さんにプロポーズされたんですって」

晴久は食後のコーヒーを飲みながら、だから最近小山の様子がおかしかったのかと納得した。ついにやったな、と後輩を思い笑みを落とす。

また、無邪気に〝プロポーズ〟と言葉を使う雪乃にドキッとが鳴った。

「どんなだったって?」

「いつも居酒屋に行くのに、今日は高級なホテルのディナーにわれておかしいなーと思っていたんですって。指を渡されてプロポーズされたみたいで」

(やったな、小山)

「でも……ふふふ、彼氏さんが指をはめようとしてくれたら、手が震えて、紅茶の中に落としちゃったみたいです」

「ハハハッ」

晴久は數秒本気で笑い、雪乃も彼の笑顔がうれしくてクスクスと聲をもらす。ふたりでしばらく笑った後、雪乃はテーブルに目を戻した。

(……あ)

今夜はこちらも高級ホテルのディナー。雪乃はちょうど、食後の紅茶のティーカップを持っていた。

目の前の晴久は、じっとこちらを見ている。

「……晴久さん?」

彼の余裕のある瞳に囚われながら困している雪乃に、晴久はフッと笑った。

「今夜は、俺はプロポーズじゃないよ。ごめんね」

耳までみるみる真っ赤になった雪乃は口をパクパクさせる。

「え!  あ!  やだ、そんな意味で言ったんじゃありません……!」

「ふふ、知ってる」

まだ付き合って一ヶ月なのだから雪乃も期待をしていたわけではないが、するつもりはないと斷言されると心に刺さるものがあった。

(分かってる、分かってるけどっ)

しぎこちなく、紅茶をすする。

いつか彼のお嫁さんになりたいという夢はいとも簡単に膨らみ、最近はそればかりを妄想している。まだ一ヶ月。

そんな短い期間ではとても葉う夢ではない。

(あとどれくらい先になるのかな……それとも、まだそんな気はないのかな……でも、ずっと一緒にいたいって言ってくれたし……)

無意識に拗ねるような尖った口もとで紅茶をすすっていた。

そんな分かりやすい彼の様子に気付いた晴久は、かわいくて頬が緩みながら、すかさずフォローをれる。

「まだもうし、俺のことを知ってもらわないと。雪乃には全部知りつくしてもらいたいからね」

「晴久さん……」

「今、予約ができたらいいんだけどな。そういうのは卑怯だろう?  だからこうして雪乃にずっと好きでいてもらえるように頑張ってる」

本當はすぐにでも自分のものにしたい、と告げそうになるも、そこはグッと堪えた晴久。しかし控えめだが獨占を隠せていない発言に、雪乃は十分、が熱くなった。

すぐに「もちろんずっと好きですよ」と答えようかとも考えたが、彼の冗談に合わせて「頑張ってくださいね」と小悪魔な笑顔を見せた。

食事を終え、予約していた部屋へ移する。

今夜は全て晴久のチョイス。雪乃は見たことのない豪華なスイートルームに張し、背筋をばす。

「すごい……」

夜景、ベッド、バスルームと控えめにき回りながら、嘆の聲を抑えて晴久を見た。

「最初から同棲してるから、たまに気分変えたいだろ?」

「こんなに素敵なところ初めてです。夜景も綺麗」

「よかった。気にってもらえてうれしいよ」  

窓にり付いて夜景を見ていた雪乃。やがて目の前のガラスに、やってきた晴久が映った。

彼は後ろからそっと雪乃に寄り添い、両手を捕まえて握った。

雪乃も目を閉じて、彼に背を預ける。

「今のうちに見ておくといいよ。始まったら、すぐに朝になっちゃうから」

何が始まるの?と疑問に思った後、意味が分かった雪乃の表はコロコロと移り変わり、最後にはカアッと赤く染まっていく。

「雪乃」

我慢できず、振り向かせた彼にキスをすると、それはすぐに深いものになった。

ガラスに押し付け、開放的な景を背景に、をむさぼり合う。

手をとり、腰をとってそのままベッドに連れ込むと、本気になった晴久がジャケットをぎ捨てる。

「晴久さん……」

「まだ夜景見てないのに、ごめんね。我慢できない」

キスを再開する。コツを摑んだ雪乃はついばむように応え、能的な表を見せる。彼長を日々じている晴久は、複雑ながらもやはりたまらず、激しく気持ちをぶつけだした。

「雪乃……」

甘く名前を呼ばれるたび、晴久に溺れていく。

彼は頑張ると言っていたが、雪乃はこれ以上頑張られたら好きの気持ちが自分ばかり募ってしまう予がした。

「晴久さん……私も、頑張ります」

「え?」

キスの合間で宣言をする。

「晴久さんに好きでいてもらえるように。……今夜はなにか、してしいことはありますか?」

ギョッとした晴久は一度キスを止め、「雪乃?」と戸いの聲をもらした。

「なんでも言ってください。晴久さんのしたいこと。なんでも」

かわいらしくもうような目つきで煽られ、晴久の脳裏には生々しい想像が一瞬で駆け巡っていった。してみたいことは山ほどある。

「……いいの?」

試しにそうつぶやくと、彼はコクンとうなずく。

(ああもう、ダメに決まってるだろ)

天然な彼の代わりに、晴久は自分で自分に正しい返事をした。

「……決めた。雪乃、今日もおしおき」

「え!?  なんでですか!?」

慌てて逃げようとする雪乃の両手を捕まえて、枕へと押し付ける。再び止まないキスをしながら、彼を激しく求めた。

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