《噓つきは人のはじまり。》親友への報告
される覚悟ってなに、よ。
玲は通り過ぎていく街並みを橫目にただぼんやりと考えていた。九條の話した容がずっと頭の中で繰り返されてその度に自問自答をしていた。
確かにこの先、玲の近くの人達がをひょんなことから過去を知ってしまうかもしれない。それを九條のようにお金をかけて正しく調べて理解してくれるならまだしも、どこからその話を聞いたのかによって、関係が崩れることはあるだろう。
ただ、知られない可能もある。リスクは取っておいて損はないが、だからという理由で好きでもない男と一緒になるのはどうだろう。玲だってひとりのだ。打算でも妥協でもない、純粋にをしていつか好きな人と一緒になりたいと考えていた。
ただ、その相手はロバートだと思っていたけれどはたしてそれは本當にそうなのか。それともただ玲が思い込みたいだけなのか。ここ最近はそんなことを考えるようになった。現時點では何が正直な気持ちなのかわからない。すぐに答えを出す必要もない気がして玲は運転席でハンドルを握る九條の様子を窓越しに眺めて目を逸らした。
「著いた」
長く家を開けた気がするが、つい數時間前に出たばかりの自宅だ。と言っても既にもう夕方。
疲れた。さすがに疲れたわ。
ぐったりとしながらシートベルトを外す。
今日一日を振り返って疲労が増した気がした。
リアルプリティウーマンごっこ、からの容室でのヘアメイク。この時點すでにくたくた。
食事時に充実した仕事の話ができたのはよかったけれど、気が抜けていた時に告白なのかなんなのかよくわからないことを言われて頭を抱えることしかできない。
冗談、と笑い飛ばしたかった。でもそんなことできなかった。なぜなら九條はずっと玲を真剣な目で見ていた。玲が誤魔化そうにもそれを許しはしてくれなかった。
(どうしてそんなにも踏み込んでくるのよ…)
つい恨みがましい目で運転席の男を見上げた。
「なに?」
「べつに、なんでも」
「そう」
玲はシートベルトを外すと後ろから車が來ていないかどうか確認して扉を開ける。
なぜか九條も一緒に降りてきた。そして後ろに回りトランクを開けた。
不思議に思っていると、おもむろに取り出された多數のショップ袋に玲は目を剝いた。
「な、なんですか、これ」
「ん?玲の服」
「は?」
九條はさも當然のように肩や腕に掛けるとトランクを閉めた。そして呆然としている玲の背中を押して部屋にるように促す。
「この辺に駐車場は?」
「確かもうし行った先に」
「なるほど」
九條はふむと頷くとにっこり笑顔で玲にあるお願いをした。
「ここの管理會社に確認して駐車場の空き報を調べてほしい」
「…どうしてですか」
近くに駐車場があるのになぜ、と玲は眉を顰めた。その間にマンションのエレベーターに乗り、自宅の前に到著する。玲は「ありがとうございました」と逃げるように部屋にろうとするが、もちろん九條はそれを許さなかった。
「夜は焼きそばだろ」
「そんなこと言って…」
言ってない、と言いかけた玲だがすぐに言ったことを思い出した。
九條は玄関に荷を置くと無防備に扉の近くのフックにかけた玲の自宅の鍵を奪うように取る。
「とりあえず、車れてくる」
このまま出ていったら締め出されるとでも思ったのだろう。だからって鍵をとっていくなんて。
玲はぶつぶつ言いながら複數の紙袋を部屋の中に運んだ。
******
「一どれだけ貢がせたのよ」
「貢がせてない。人聞の悪いこと言わないで」
それから數日後のこと。今夜は未玖が玲の自宅に來ていた。先日、九條が急に自宅にやってきて拉致られた話を未玖に愚癡っていたのだ。
そして未玖が「服を見たい」と言うので、まだ袋にったままでタグも著いたままの洋服たちを見せた。未玖は一著一著眺めながら「これ可い」だの「これとこれの組み合わせがいい」などとはしゃいでいる。
「いいじゃないの。貰っておけば」
「…だってもらう理由がない」
「馬鹿ね。そんなこと深く考えなくていいのよ」
未玖はあっけらかんと言うが、だったら自分ならどうするんだと聞いてみたい。
「タダより怖いものはない」
「そうだけど、タダじゃないでしょ」
「タダよ」
「ちゃんとせっせと餌付けしてるんでしょ?」
「餌付けじゃない。毎日來るもの。仕方ないでしょ」
九條から特に洋服の代金について言われることはなかった。本人に聞いたところ「同じ手は使わせないため」らしい。
よほど玲が仕事のような服裝で食事にきたことが嫌だったらしい。洋服は春夏メインなので、秋服が出たらまた行こうとわれた。今度は玲もわれる前に準備をしておくつもりなので丁重にお斷りする。そしてもっと困ったことにあの日から九條は當たり前のように玲の家にやってくるようになった。食事をしたら帰るけれど、ここはレストランでも居酒屋でもなんでもないのに、と思う。
「今日は?」
「今日は未玖が來るからダメって言った」
「あら、わたしは良かったのに」
未玖が殘念そうな顔をする。せっかくなので生九條梓を拝みたかった、と非常に落膽された。
玲はあの男のどこがいいのか、と聲を大にして言いたいが賢く黙った。
でもよくよく考えれば特別悪い人ではないのだ、多分。ただ、自分には人がいるのに「付き合おう」と言ってきたり、人でもないのに當たり前のように夜に家にやって來ることが非常識なんだ。
「いいなあ。わたしも玲みたいに迫られてみたい」
「迫られてませんが」
「え?何もないの?」
「何もないよ」
未玖がうっとりした聲で両手を組んで桃のため息をついていたときに玲はバッサリと切り捨てた。玲の言葉に未玖は素に戻る。
「三十前後の男とが夜を過ごして何もない、と?」
「語弊があるから。食事して終わり」
「ちゅーは?」
「ありません」
「押し倒されたりとか」
「だからないって!」
そう。本當に何もない。あの日、拉致られた日も夜は焼きそばを食べて帰った。次の日は日曜なのに當たり前に夜ご飯のいがきた。酒が飲みたいと言うので近くの居酒屋に行った。ビールで乾杯して普通に食事をして帰った。その次の日は晝すぎにメッセージが屆いた。『夕食なに?』とまるで母親に送るような容だった。玲が『考え中』と送ると『が食べたい』と返ってきた。仕方なくやってきた九條に手抜きで作った生姜焼きを提供するとご飯もお味噌もお代わりまでした。その次の日は煮と焼き魚にした。『今度ハンバーグ作って』とリクエストされた。
いつとは言ってないが渋々了承するとカレーや唐揚げ、オムライスと子どもメニューが追加された。九條の味覚は案外子どものようだ、と玲はこっそり笑いそうになった。
「何を話すの?」
「何を、とは?」
「ずっと仕事の話?」
「いや、そんなこともないけど」
玲は何を話したっけ、と思い出しながら枝豆に手をばした。未玖は広げた洋服を丁寧に元の袋に戻すとソファーに座る。
「本の話とか」
「本?」
「ビジネス書もそうだけど、好きな小説とかが一緒で」
「へぇ
「あとは、うーん」
記憶に殘らないほど他のないことだった。それでも自然と居心地は悪くない。
あとはテレビを見ながらその日の出來事を話してくれた。香月や木下の昔のやらかした話も聞かせてもらった。九條は案外おしゃべりでよく話してくれる。玲はその話を聞きながら時折笑ったりツッコミをいれたりしてなんてない時間を過ごしていた。
「そういえばいつだっけ?來週?ほら、來るじゃない」
「あ、うん。來週」
まもなくゴールデンウィークが始まる。つまり、ロバートが日本に遊びにくる。
「九條さんに言ってるの?」
「地元に帰るとは言った」
「後でバレても知らないからね」
「大丈夫だよ」
わたしが誰と會おうが九條さんに関係ないし。
この時の未玖の忠告をきちんと聞いておくべきだったと後悔するのはそれから間も無くのこと。だが、この時の玲はそのことに気付かなかった。
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