《気になるあの子はヤンキー(♂)だが、裝するとめっちゃタイプでグイグイくる!!!》
「おまえ! もういっぺんいってみろ!」
のような年は顔を真っ赤にして激昂している。
「だから、かわいいって思ったことが何が悪いんだ?」
「この……」
拳を振りかざしたその瞬間だった。
「ミーシャ、こんなことでなにやってんのよ♪」
「おいおい、ミハイル。お前、初日からケンカかよ? 退學すんぞ」
片方は赤に染め上げた長い髪を右側で1つに結んだミニスカギャル。
スカートの丈がミニすぎる。
床に腰を下ろしている俺からはチラチラと言うよりはパンモロだ。
もう片方は対照的に髪の一本もないスキンヘッド。ガチムチなマッチョで老け顔。
四十代ぐらいに見える。
「ミハイル、こいつ。ヤンキーじゃねーだろ? ダメじゃないか。カタギに手出しちゃ……」
カタギってあんた……。
「うるせー! こ、こいつはオレのことを……」
「なんだ? ケンカでも売られたのか? そんなヤツには見えんけど」
「それはその……」
と言って顔を赤らめる。
いやもう男と分かったからには、俺は萌えないよ。
「あんちゃん、大丈夫かい? ほら」
と言って、俺に手を差し出す。
あれなにこのデジャブ。なんか今日で2回目じゃない、手を貸されるのって?
「あ、ありがとうございます……」
「ハハハ、敬語なんていらねーよ。タメ口でいいっての!」
そう豪快に笑うハゲは頼もしささえじる。
「いや、でも年上の方は敬ないとですね……」
俺がそう言うと赤髪ギャルが吹き出す。
「年上って! あんたこそ、年いくつ?」
お前がタメ口かい!
「俺は十七だけど」
「あーしもこのハゲも十七だよ」
と言って腹を抱えて笑っている。
「リキ。あんたがハゲてるからだよ!」
いや、ハゲは関係なくて老け顔のせいだと思いますけどね。
「ああ? ハゲてねーよ! 俺は剃ってるって言ったろが!」
タコがゆでダコになる……。
心中お察しいたします。
「まあいいや、俺は千鳥ちどり 力りき。そんでこっちのバカは花鶴はなづる ここあ。そんでお前さんは?」
いや聞いてもないし、なんなの。この勝手な暴力からの自己紹介タイム。
あのパンチはヤンキーになるための通過儀禮なの? 俺、ヤンキーとかなりたくないよ?
「俺は新宮。新宮しんぐう 琢人たくとです」
「だからタメでいいってんだろ」
そう言って俺の髪のをぐしゃぐしゃとかき回す。
「はぁ……」
俺のセンサーではハゲの千鳥がコミュ力、2萬5千。
ギャルの花鶴が3萬といったことろか。
「ねぇ、琢人ってさ。オタクでしょ?」
花鶴はニタニタと意地悪そうな顔で俺を見る。
てか、子に初めて下の名前で呼ばれたわ。惚れちゃいそう。
「まあオタクとは自覚しているな」
「じゃあさ、今度からオタッキーね」
「それ悪口だろ。やめろ、斷る」
「ダメダメ、もうあーしは決めたんだからさ♪」
決めたんだからさ♪ じゃねー。返せよ、俺の純。
「いや、俺もオタッキーには反対だな」
なんか嫌な予。
「俺が思うにオタクで琢人だろ? タクオでいいだろ?」
よくねー。なんかもっとランク下がっている気がする。
「人の外見で遊ぶな。怒るぞ」
「ハハハ、お前。いい度してんな」
「それはこっちのセリフだ」
なぜ俺は非リア充でありながら、ヤンキーやギャルとトークをしているのだろう。
こいつらのコミュ力は半端ない。その力が要因か。
「そうだ、肝心のこいつを忘れてたぜ。タクオを毆った張本人」
「……」
未だ男は顔を赤らめて、うつむいている。
「おい、ミハイル。自己紹介して仲直りしろよ?」
「そうだよ、ミーシャ。オタッキーもこれからウチらと同じ高校じゃん」
いや、一括りにしないで。
「……」
「しゃーねーな」
そう言うと、千鳥は男の頭を無理やり、下げさせる。
「悪かったな、こいつの名前は古賀こが ミハイルってんだ。年は俺らより二個下でまだ十五。これから三年間よろしくな!」
「……」
黙ってうつむいている。
こいつもコミュ障なのか?
咳払いして、改めて挨拶した。
「俺にも不手際があったかもしれない(知らんけど)。その事については謝罪する」
「いいってことよ!」
「そうそう、あーしらクラスメイトじゃん!」
コミュ力たっけー。
「とりあえず、よろしく」
依然として古賀 ミハイルは顔を赤らめたまま、床を見ている。
床が友達なのかな?
笑う千鳥と手まで振ってくれる花鶴を殘して俺は教室に戻った。
そこでやっと気がついた。
「トイレ、行き忘れた……」
こうして、俺の最低最悪の學式。
高校生活がはじまったのだ。
一ツ橋高校を後にした俺は駅のホームでクソ編集部の『ロリババア』に電話した。
忘れているかも知らんが、一応俺はライトノベル作家。
『ロリババア』とはこの園(一ツ橋高校)を薦めた張本人であり、兇悪犯だ。
怒りでスマホを持つ手が震えていた。
しばらくベル音が聞こえはするが、一向に出ない。
「クソ、あのロリババアめ!」
俺はメール作畫面に移り『クソ編集、騙しやがったな』と送る。
するとすぐに返信があり『センセイ、ご學おめでとうございます! センセイが高校とか、草生える』とあった。
電話を無視したことにイラついた俺は『お前の(特に間)には草は生えないだろ?』とディスる。
よし、明日にでも退學しよう。
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