《気になるあの子はヤンキー(♂)だが、裝するとめっちゃタイプでグイグイくる!!!》
先ほどまで見ていた悪夢を振り払うかのごとく、自転車のペダルを力いっぱいこぐ。
なんで、あいつなんかが夢にでるのかね……。
古賀 ミハイルか。
正直、今まで俺はノン気だと思っていたのに、まさか両刀使いではあるまいな?
いかんぞ、琢人。あれはのように見えるが、ただの男だ。
認識を改めよ!
「おはようございます」
店にると、既に何人かの同僚が支度を済ませて、バイクを店から出していた。
「おはよう、琢人くん。昨日は學式だったんだろ? どう、可いの子とかいた?」
期待を膨らませた『毎々まいまい新聞』真島まじま店の店長が言う。
「いやぁ……」
一瞬、脳裏にあいつが浮かんだ。
古賀 ミハイル……確かにあいつは俺が出會った人生でどんなの子よりもかわいかった。
天使だ、天使すぎる男の子だ……。
そんなグレーゾーンな輩は俺の格が認めることなどないのだよ!
「店長……尋常ないぐらいのバカ學校で、ブスばかりでしたよ」
「そ、そう……」
店長の苦笑いが辛い。
「で、三年間やれそう?」
そう言いつつ、店長はぎゅうぎゅうに丸めた新聞紙の束をバイクの荷臺に積んでいる。
「どうですかね……」
俺は視線を店長からバイクにそらす。
この毎々新聞の真城店でお世話になって、早6年。
小學校4年生にして、この世に絶し「學校なんて俺にはいりません!」と豪語し、まだ白髪のない店長にせがんだ。
店長はあの時「君が學校に行きたくなるまで責任をもって預かるよ」と優しく頭をでてくれた。
いつだって俺の味方でいてくれた。登校刺激もしないし、「うんうん」と俺の話を聞いてくれる恩人だ。
「だってさ、僕もずっと思ってたんだよ……琢人くんを小さいな時からここで預かってはいるけど、このままでいいのかな? ってさ」
「なにがです?」
「琢人くん、中學校だってろくに通わなかったでしょ? 正直、休日に映畫ばかり見に行く君がね……僕は責任をじてしまうんだよ」
いや、映畫館はリア充も行きますよ? 映畫を責めないでくださいますか?
「……」
「君が小學生の時、この店に來て以來、頑張っているのは知っているよ。けど、同じ年代の子たちは毎日學校に行って、友達と勉強して、帰りなんか天神てんじんとかで遊んじゃってさ……」
最後の言葉に引っかかる俺は、すかさずツッコミをれる。
「天神なら俺もよくいってますよ」
「いや、それって“もう1つ”の仕事でしょ?」
もう1つの仕事とは小説家のことだ。
相変わらず的確なツッコミ返しだ……俺はいころからこの人のことを摑みづらいところがある。
「それは否定できませんが……」
「僕はさ……高校いけてないんだよ」
「店長って中卒だったんですか?」
教養のありそうな喋り方をするのでてっきり大學までいっているのかと思っていた。
「うん、僕の父が病で倒れてからはこの店を手伝ってさ……だってろくにできなかったよ……」
「でも、奧さんもお子さんもいらっしゃるじゃないですか?」
そう言って、店長の自宅でもある、店の二階を指してみる。
「ああ、それはね……」
そう言うと店長はし遠い目で、どこか寂しそうに語る。
「実は僕、お見合い結婚なんだよ」
「はぁ……」
「別に妻のこともしているし、子供も生まれて幸せだけどさ……」
それってリア充じゃないのか? なんだ自慢か?
「ならいいじゃないですか? 俺もいつかは……とか思いますけど。別にお見合いでも良くないですか?」
「でもさ……君みたいな若い男の子がこう、なんていうかさ。勿ない気がするわけだよ」
いや、なんか今日の店長えらく語っちゃってるし、俺の存在もすんげー可哀そうなやつになってるよ?
「青春は1回しかない……そんな気がするんだ。だから君には取り返しのつかないように、高校生活を楽しんでほしいよ」
おっかしいな~ これって何かのフラグ?
俺は學式の帰り際。駅のホームでクソ編集のロリババアとメールのやり取りを終えたあと……。
退學しよっと♪ てへぺろ☆
みたいなじで決心してたはずなのに、なんでバイト先の店長にここまでガチガチにマウンティングされているの?
「店長のお気持ちはありがたいです。ですが、俺は……この新聞のように事をなんでも白黒ハッキリさせないと落ち著かない分でして……昨日も學した高校のバカさ加減に呆れていました。正直、園ですよ、あそこは」
いや、マジで。
「フフ、バカだろうと園だろうといいじゃないか。はい、バイクの準備OKだよ」
そう言って店長がバイクを外に下ろす。
なんかこのまま「君の高校生活は僕が逃がさない!」てなじになってない?
ここは丁重にお斷りすべきだ。
「俺はあんなところ、絶対にイヤです」
それを聞いた店長がニッコリと俺に微笑みかける。
「顔を見ればわかるよ。何年君を見ていると思うんだい? だからこそ、僕にはわかる」
店長は嬉しそうに語る。
「え?」
「學前の君とは顔つきが違うんだよ。なんだか嬉しそうに見えるよ、僕には」
そんな人の顔でなにがわかるんだ?
能力者とでも言いたげだな。
一時期流行ったよな、俺の右目には邪眼がっ! とか……。
「俺の顔がうれしそう……?」
「うん」
店長は「次は君の番だよ」と微笑むと、バイクの鍵をまるでバトンのように手渡す。
「じゃあ気をつけていっておいで」
「はい、いってきます」
俺はアクセル全開でバイクをぶっ飛ばす。もちろん法定速度でな。
なんなんだ、みんながみんな。俺をまるで『可哀そうなヤツ』みたいな扱いしやがって……。
立派な社會人だし、小説家だし……。
べ、別に収だってあるんだからね!
そんなに人格破綻者に見えるか?
友達だって、小學……三年生まではいた……よね? 記憶が曖昧すぎる。
人だって、きっと俺の小説がアニメ化さえすれば、アフレコ現場に取材して可いアイドル聲優に出會い、『先生の大ファンなんです! 抱いて!』と迫れて、今流行りの『授かり婚』も乙な生き方だろう。
まあかく言う俺はそんな不作法な真似はしない。
ちゃんと聲優とSNSで匂わせてからの結婚して、子供を三年後に生むのがベストだ。
なぜ三年も空白がいるのかというとだな。
聲優の嫁さんとイチャイチャする時間がないだろ?
子供にとられるまでは俺のもの!
そう、最高な人生計畫、明るい家族計畫。
すべては俺のシナリオ通りなのだ。
だから……みんな。そんなに俺を憐れむような目で見ないでくれ。
俺は今までだって一人でなんでもやってこれた。それなりに楽しめていた。
あんな園だけは絶対に嫌なんだよ。
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