《気になるあの子はヤンキー(♂)だが、裝するとめっちゃタイプでグイグイくる!!!》

「あの……タクトさんはミーシャちゃんと、どういう関係なんです?」

「え? 俺とミハイル?」

って、お前が本人なのに、どんな設定なの?

今日はリア充どもの仮裝パーティーなのかもしらんな。

ま、告白をフッた罪悪もあったことだ。

一日ぐらいミハイルの戯れに、付き合うのも悪くない。

「俺とあいつは友達……かな?」

なぜか頬が熱くなる。

「そうですか☆ ミーシャちゃんにお友達ができて、安心しました☆」

「え?」

「あの子、いつも私とお姉さんとしか、遊びませんから☆」

それ自分でいう? 悲しくない?

「そ、そうか……ところで、今日はこれからどうする?」

「タクトさんの行きたいところが、いいです☆」

ニッコリと笑う天使……( )

なんかドキが、ムネムネするから、やめてくださいますか?

素のミハイルさんじゃ、ダメだったんですか……。

「じゃ、じゃあ『カナルシティ』はどうだ? あそこなら一日遊べる」

カナルシティとは、博多駅から徒歩10分ほどの複合商業施設である。

ファッションからグルメ、映畫など全て揃っている建だ。

リア充はこぞって、ここを休日の場所として選ぶこともなくない。

それに現在は、外國人の方々もよく遊びに來る。

「わぁ! 私、『カナルシティ』いったことないんです☆ いきたい!」

「そ、そうか。ならば、俺についてこい」

「うん☆」

博多駅からまっすぐ『はかた駅前通り』を直進する。

今日はなぜか、ミハイルこと古賀アンナちゃんは、行きかう男どもを釘付けにさせる。

俺以外の、人間も彼を『』として認識しているようだ。

いや、誤認というべきか……。

「みろよ、あの子! 可くね!?」

「うわぁ、俺タイプだわ……」

「つーかさ、連れの男がないわ……」

最後の一言いるぅ!?

「あの、タクトさんって『世界のタケちゃん』が好きなんですか?」

首を傾げるアンナ。

「え? ……ああ。俺がこの世で一番尊敬している人間だ」

って、お前知っているくせに!

はかた駅前通りをまっすぐ歩くと、緑で覆われた建が見える。

これがカナルシティの口だ。

數年前に『カナルシティ イーストビル』という別館が作られ、より目立つ建になった。

「うわぁ、キレイな建ですね☆」

「そうか? それより、アンナ……ちゃん?」

「あ、私は『アンナ』と呼んでください☆」

「む……ま、待て。ならば、敬語はやめてくれ。俺もアンナと呼ぶから『タクトさん』ってのもなんか正直、嫌だ」

言っていて、自分で恥ずかしくなっちまったよ。

なにこれ、男同士でなに自己紹介しあってんの?

「じゃあ、タクトくん☆ これでいいかな?」

その笑顔……やめて……。

食べちゃいたいぐらい、可すぎる。

「お、おう。じゃあアンナ。カナルシティのどこにいく?」

「タクトくんが決めて☆」

「え?」

「だって私、田舎育ちで全然わかんないもの」

そういうアンナはどこか寂しげだ。

ていうか、マジでミハイルさんも、カナルシティ來たこと、ないんけ?

「了解した、ならば、映畫を見よう」

これって初デートのテンプレだよな?

「うん☆」

イーストビルのエスカレーターに乗り、2階に上る。

そのまま歩いていると、本館に繋がる渡り廊下が見えた。

本館にると今話題の『アヴァンゲリオン』のフィギュアがお出迎えだ。

汎用イケメン型決戦機AVA初號機様である。

近年、リメイクが行われ、またブームが再燃しているようだ。

「これって、プラモデル?」

え? 知らないの? あのAVAだよ!

「アンナはアニメに詳しくないのか?」

「アニメ? アニメはえっと、スタジオ『デブリ』とか、夢の國の『ネッキー』とかなら、知ってるよ☆」

そこの設定は、そのままなんかい!

「そ、そうか。これはAVAと言ってだな。すごい兵なんだぞ」

「ふーん。ロボットなの?」

「……」

なにかと、リア充や非オタクたちは『機械』や『ロボット』という単語で終わらせてしまう。

説明がダルいので、俺は「映畫館にいこう」とアンナをう。

映畫館につくと若者がいっぱいチケット売り場で並んでいた。

それもそうだ、今日は土曜日。

學校が休みだったり、授業あがりの制服を著用したままの高校生たちもいる。

あとは年中暇そうな大學生だな。

これだから、俺は土日の映畫館は好かん。

俺は映畫は靜かに鑑賞するのを楽しむ。

よって……“こげん”にわかな映畫好きなどという、下等生と同じ空間で、同じレベルで、俺の大好きな映畫を観たくないのだよ!

「タクトくん? 映畫、なにを見るの?」

「あ、すまん。目の前にリア充どもがいて蟲唾が走った」

「リアじゅう? なあにそれ?」

そこはバカだな!

「アンナは知らなくていいことだ。映畫はもう決めているぞ」

「なに見るの?」

フッ、よくぞ聞いてくれた。

本日はめでたくも、俺の生涯における師匠である『世界のタケちゃん』の新作、『ヤクザレイジ』の封切り日なのだ!

「アンナ、ここは上級者の俺に任せろ」

「うん☆」

チケット売り場に並ぶと、後ろから何やらヒソヒソ聲が聞こえる。

「ねぇ、あの二人付き合っていると思う?」

「いや、ないでしょ? の子が弱みでも握られてんじゃね?」

「ハーフかな? わたし……あの子だったらいけるかも」

怖えな! 最後のやつ、ただの変態だろ!

「いらっしゃいませ! 作品はお決まりですか?」

付嬢が営業スマイルを見せる。

「うむ、『世界のタケちゃん』の『ヤクザレイジ』を高校生2枚!」

「あ、作品名だけで結構ですよ?」

笑顔で毒つくな! ムカつく店員だ!

「タクトくん……私、高校生じゃないよ?」

「え?」

そうか……ミハイルとばかり思っていたから、その『設定』を忘れていた。

しかし、ならば分はどうする気だ、アンナ?

「私、プータローだから……」

アンナも床がお友達になっているぞ。

「あ、そうなのか……。じゃあ高校生一枚と大人一枚」

なんか地雷を踏んだ気がしたので、俺が二人分支払った。

「かしこまりました。では、チケットをお持ちになられて、エスカレーターをお登りください」

付嬢からチケットをけ取る。

「気にするな、アンナ。無職は悪いことではないぞ? 俺の親父も無職だから安心しろ」

なんか自分で自分が悲しくなってきたよ……父さん。

「う、うん……でも映畫代は払わせて!」

今日一番強気な顔だ。

ちょっとミハイルよりな顔つき。

「了解した。では1800円だ」

「はい、2000円ね」

け取ったお札から、200円のお返しでーす。

こいつって、結構こういうところ、しっかりしているのね。

長い長いエスカレーターを昇る。

何度來ても、カナルシティの映畫館のエスカレーターは楽しい。

左手を観れば、窓ガラスからカナルシティが一でき、右手を観れば、ハリウッドスターのアートが壁一面に並んでいる。

これだけで俺はテンション上がりなのである。

エレベーターから降りると、さっそくチケットもぎりのスタッフが笑顔でお出迎え。

「チケットをお願いします」

二人分のチケットを手渡すと、半券を返される。

ちなみに、俺はこの半券をコレクションしてしまうクセがあるのだ。

メインフロアにると、香ばしいポップコーンが空腹をあおる。

「うわぁ~ いい匂い☆」

「ふむ、映畫にポップコーンは必需品だからな。買っていこう」

俺はアイスコーヒーを選び、ポップコーンはキャラメル味と塩味のハーフ&ハーフを頼んだ。

「アンナはどうする?」

「私は……んと、カフェモカで☆」

らしいご趣味で。

トレーをけ取ると、『ヤクザレイジ』のスクリーンを探す。

「ここだ。ろう」

「うん☆ どんな映畫か知らないけど、タクトくんの好みなら楽しみ!」

今、サラッとタケちゃんの映畫、ディスってませんか?

ねぇ、アンナさん!

スクリーンにると、休日もあってか、満席に近かった。

客層といえば、ご老人や本業らしき仁も確認できた……。

さすがはタケちゃんだ! 渋いぜ!

俺とアンナは、真ん中あたりの席に腰を下ろした。

「ところで、タクトくん。この映畫ってどんな容なの?」

そこから!?

「ま、まあ……見ていればわかるさ。タケちゃんの映畫はイイぞ~」

「そっかぁ、ポップコーン食べてもいい?」

「おう」

ブーッ! という、開幕の音と共に、俺とアンナは仲良く一つのポップコーンを食べはじめた。

そういえば、こういうカップルらしいこと初めてだな……。

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