《気になるあの子はヤンキー(♂)だが、裝するとめっちゃタイプでグイグイくる!!!》44 既読スルーはよくない

勝手にインストールされ、勝手に設定された俺のスマホアプリ。

その名もL●NE。

巷では既読スルーが橫行していると聞く。

ので、俺は10代だというのに、このアプリを使うことはなかった。

というか、斷っていたのだ。

擔當編集の白金も「ええ! L●NE使わないんですか?」と驚いてた。

毎々新聞店長も「シフトとかあるからさ、L●NE使おうよ」と新手の詐欺のように、勧する始末。

俺は人や時間に縛られるのが嫌いだ。

だから、今まで使わずにすんでいたのに、この裝男子、アンナにしてやられたのだ。

當の本人といえば、ニコニコ笑いながら、俺のスマホをタップしまくっている。

「はい☆ これでタッくんと繋がれたね☆」

その繋がりってのがエロくもじるが、ストーキングにもじる。

「そ、そうか。で、なにを送るんだ、これ?」

「スタンプとか送るんだよ。あとで、アンナからタッくんに送るね☆」

強制ですか?

「ならば、そろそろ帰ろう」

「うん☆」

アンナを博多駅まで、紳士的に送り屆けることにした。

はどうやら、俺が住んでいる真島まじまより遠くに住んでいるらしく、博多駅でお別れだそうだ。

ま、そりゃ、そうだわな。ミハイルとアンナは、二人で一人。

「じゃあ、あとでね☆ タッくん!」

笑顔で手をふるアンナ。

「おう、またな」

博多口に一人彼を殘して、俺は改札口に向かった。

駅のホームで次の列車を待つ。

「まったく、なにがしたいんだ? ミハイルのやつは」

ひと段落ついたことで、何気なくスマホに目をやる。

通知が偉い數になっている。

その數、100件以上。

なにこれ? 新種のウイルスにでも侵されたんけ?

8割はアンナ。

『今日は楽しかったね☆』

『アンナだよ?』

『(*´ω`*)』

『タッくん、いまなにしているの?』

『アンナはネッキーと一緒だから、帰りは心配しないでね☆』

あったま、おかしーんじゃねぇの!?

殘りの2割は妹のかなでと母の琴音さん。

かなでから、

『ミーシャちゃんと會えましたの? おみやげは、男の娘でおなーしゃすですわ』

琴音から、

『かーさん、“かけ算”するのに材料が足りないの。帰りに本屋で新鮮なネタを買ってきてちょうだい』

クソがっ!

ともかく、俺のスマホが急事態宣言を発令しているので、後者の2人は捨て置いて。

アンナに返信することにした。

『今日は楽しかったぞ。気をつけて帰るがよろし』

すぐに既読のマークがつく。

早すぎてこわっ!

「L●NE!」と通知音が鳴る。

『タッくん、プリクラ大切にしてね☆ また今度取材しよ☆』

「……」

こ、こぇぇぇぇぇ!

プリクラを機やテーブルにったら殺されそうだ。

大切にしまっておこう。

知らんけど。

そうこうしているうちに、ホームに列車がつく。

は夕方ということもあり、遊び帰りの若者、會社帰りのサラリーマンやOLで、座席は埋まってしまった。

俺は電車のドアにもたれながら、今日のことを振り返っていた。

『タッくんなら……タクトくんさえ良ければ、アンナを使って!』

あの夕暮れでの誓い。

にすごく響いた。

こんな俺を裝してまで、無理して、頑張って……。

さぞ辛かったろう。

もう彼は、立派な取材対象だ。

アンナというヒロインは、他にいないだろう。

これでいこう。

主人公はどうする?

その時だった。

スマホがブブブ……と音を立てる。

畫面に視線を落とせば、『ロリババア』

「チッ、白金かよ」

人が余韻にひたっていたのに……。

「俺だ。なんか用か? 今電車のなかだ」

ヒソヒソ聲で喋るが、周囲の視線をじる。

『あ、白金ちゃんです!』

「バイバーイ」

『ま、待ってください! ラブコメのプロットは、考えられましたか?』

クッ! 今考えてたところだよ!

「ああ、取材の効果が出た。ヒロインは決まりそうだ」

『本當ですか!? 貞のセンセイにモテ期が來たんですか!?」

「うるさい! とりあえず、切るぞ」

『わかりました。では、明日打ち合わせしましょう!』

「おまっ、まだプロットはできて……」

ブツッと、耳障りな切られ方をしたので、スマホを床に叩き割ってやろうと思った。

「あ、俺……明日學校じゃん」

そうアンナとのデートで、浮かれていた。

明日が第二回目のスクーリングであることを、忘れていたのだ。

嫌な予が不可避。

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