《気になるあの子はヤンキー(♂)だが、裝するとめっちゃタイプでグイグイくる!!!》56 しめはチャンポンで

「さあ食え! 坊主」

「あ、いただきます……」

目の前にあるのはグツグツと音をあげる鍋。

博多名、もつ鍋。

なんで、暖かくなってきたというか、暑くなりつつある春に?

こういうのは冬に食うのがうまいと思うんだが……。

リビングには年季のった大きなローテーブルがある。

傷やはがれかけのシールがチラホラと……。

たぶん、ミハイルがいころから使っているんだと思う。

ヴィクトリアはあぐらをかき、ストロング缶片手にニカッと歯を見せて笑う。

ほぼオヤジじゃん。

ショーパンをはいているんだが、サイズが小さすぎてパンツが『はみパン』しているよ……。

タンクトップもゆるゆるで、ブラジャー丸見え。著ている意味あんの? ってなる。

「坊主、お前も酒を飲め!」

「いや……俺、まだ未年っすよ?」

「ち、つまんねーやつだな」

そこは守ろうぜ?

「タクト、乾杯しよう☆」

俺とミハイルは仲良く、並んで座っている。

気のせいか、いつも以上にミハイルとの距離が近い。

太ももがピッタリとくっつけてくるから、それ以上のサービスを期待してしまう。

「ああ」

俺の右手にはアイスコーヒー。ミハイルはいちごミルク。

グラスとグラスが音を立てて、宴會のベルが鳴る。

「「「かんぱーい!」」」

ヴィクトリアは宙にストロング缶を挙げている。

「ところで、ミハイル。お前、どうやって酒を買えたんだ?」

「え? ふつーに買ってきたけど?」

くわえ箸は良くないぞ、ミハイル。

「どうやって? お前はまだ未年だろ。年齢確認はどうした?」

「は? そんなもん、毎回やってねーよ?」

なん……だと!?

「バカヤロー! 私たちの『ダンリブ』だぞ! 顔パスだ、んなもん」

ヴィクトリアは一気にストロング缶を飲み干すと、新しい缶を開ける。

「いやいや、ミハイルは15歳ですよ?」

「なに言ってんだ、坊主。ヒック……生まれてからこの方、席で育ってんだ。あたいが人してるのを『ダンリブ』も知っているから問題ねーの」

問題大ありだ、バカヤロー! ダンリブに謝れ!

「でもですね……」

「しつけーやつだな。ヒック、いいか? あたいの店は生まれる前からオープンしている。席じゃ、ちょっとした老舗なんだよ……ダンリブより歴史が古いっつーの!」

つまりコミュティとして、連攜が取れていると言いたいのか?

「なるほど……しかし、ヴィクトリアさんが買いにいけば問題ないのでは?」

「ヴィッキーちゃんって言えったろ、坊主!」

「す、すんません! ヴィッキーちゃん!」

怖いやつにちゃん付けできるかよ……。

「うし。ヴィッキーちゃんは毎日パティシエやって疲れているから、ミーシャはお使いするのは當然にゃの☆」

そして、また新しいストロング缶を開けるヴィクトリア。

ちなみに500ミリ、リットルのサイズ。

それをジュースのように飲むおねーちゃん。

「オレのねーちゃん、優しいだろ☆」

わざわざもつ鍋をよそうミハイル。

あーた、気を使える子だったのね。

「ありがと、ミハイル」

小皿をけ取ると、彼は嬉しそうに笑う。

「なあ……坊主」

俺とミハイルのやり取りを不機嫌そうに睨むヴィクトリア。

「は、はい! なんでしょう?」

「お前、ミーシャとどういう関係だ?」

なにそれ? 結婚前の親父発言じゃん。

「えっと……俺とミハイルは……」

「ダチだよな☆」

なぜか俺の腕にくっつくミハイル。

ちょっと、やめてくれる?

今の流れだと変な関係に見られるじゃん。

「ダチ……ねぇ……」

ストロング缶を一気飲みすると、今度はウイスキーをグラスに注いだ。

「ねーちゃん、タクトっていいやつだろ☆」

「ふーむ……あたいはまだ坊主とはダチじゃねーからな」

いや、オタクとダチになる必要あります?

「よし、こうしよう! 坊主と野球拳して、あたいに勝ったらダチとして認めてやる!」

いやいや、本的に間違っているし、セクハラだし。

「絶対に負けるなよ! タクト!」

なんか拳つくって「センパイ、ファイト!」みたいな熱意がすごい。

「まかせろ、ミハイル」

「言ったな、坊主。てめぇの『ぞうさん』を丸見えにしてやんよ!」

卑猥なお姉さんだな、もう!

~10分後~

「ねーちゃん、もう許して!」

泣きぶミハイル。

「うるさい! ミーシャは黙ってろ!」

既にウイスキーはグラスではなく、瓶を直で飲んでいるヴィクトリア。

「もうやめにしましょうよ……ヴィッキーちゃん」

「ああ!?」

凄んでも無駄だよ。今のあんたの姿。

「ねーちゃん、もうパンツだけじゃん!」

そうそう今のあんた、セクハラってレベルじゃねーぞ!

パンティ一枚で重たそうなおっぱいがぶらんぶらん……。

「やかましい! まだ最後がある!」

見たくないし、誰も得しないよ。この勝負。

「「ジャンケン、ポン!」」

「だぁ~、なんでそんなに強いんだ、坊主!」

知らねぇよ、あんたが酔っぱらってからじゃね?

「しゃーねー、あたいの全部を見せてやんよ!」

と言って、パンティに手をかけるヴィクトリア。

「ダメだよ、ねーちゃん!」

それを必死に止めにかかる弟。

健気だ……そして、グッジョブ!

「離せ、ミーシャ! 勝負に負けたらルールは守らんと気がすまん!」

「そんなこと守らなくていいよ、ねーちゃん」

こんな家庭じゃまともに育つわけないよな……。

「あたいの名が廃るんだよ!」

なにをこだわっているんだ。

「すんません、なにが言いたいんです?」

「あたいは『それいけ! ダイコン號』の総長なんだよ!」

「……」

お前が犯人か!

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