《転生貴族の異世界冒険録~自重を知らない神々の使徒~》第三話 ギルドランク

「「旦那様!!??」」

セドリックとレティアが目を見開いて驚いた。近衛騎士団長はこの國の騎士で一番強く、そして公爵令嬢でもあるのは有名だ。その公爵令嬢が十歳の子供を旦那様と呼び抱きついているのだ。

「ティファーナ! 旦那様って婚約したの緒なんだから言っちゃだめだよ」

カインはティファーナを止める。

「「婚約!!!!????」」

その言葉でセドリックとレティアはさらに驚く。

「あ、しまった」

思わず言ってしまったカインは後悔した。

「やっぱり噂のカインくんだったね、いや、カイン男爵と言ったほうがよろしいかな」

エディンのその言葉にセドリックとレティアが固まった。

「カイン……男爵??」

セドリックが呟く。

「なんだ? 知らなかったのか? カイン男爵は五歳の時にテレスティア王殿下とエリック公爵の娘のシルク嬢がオークの群れに襲われた時に、一人で三十匹を殲滅し、五歳で男爵に敘爵されているのだよ。しかもガルム・フォン・シルフォード辺境伯の息子さんだ」

「え、あ、ただの平民だったのでは……しかも辺境伯さまの……」

セドリックの顔が真っ青になってきた。

「貴族として扱われるのが嫌だったので、ただのカインで登録しただけですよ。改めて名乗ります、カイン・フォン・シルフォード男爵です」

その言葉にセドリックの顔は真っ青を通りこして白くなっていた。

「そして、ティファーナと結婚したら、私の義理の弟にもなるね」

満面の笑みでギルマスのエディンが言ってくる。

「ええええぇぇぇぇぇぇえぇ!!!!!」

その言葉に今度はカインが驚いた。

今日一番の驚きだった。そういえばさっき部屋ってくる時に「兄さん」って言ってたの思い出した。

「そういうことだ、わかったかね? セドリック、レティア」

エディンがそう伝えると、セドリックはガタガタと震えてカインに向かって土下座した。

「先ほどは申し訳ありませんでした。これからは気をつけますので不敬罪だけはどうにかお許しください」

頭を床にりつけて謝ってくる。

「ティファーナ、不敬罪ってなに?」

カインは知らなかったのでティファーナに聞いた。

「貴族や王族に向かって暴言を吐いた平民を処分していいって法律、貴族の嫡子や子供はその権限はないけど、カインは獨立した貴族だから適応されるのよ」

ティファーナは素直に教えてくれた。

「ふーん。そんな法律があったんだね。そんなことはしないから平気ですよ、セドリックさん。もう頭をあげてください」

それでもセドリックは土下座狀態のまま頭をあげない。

「カインくんがそう言ってくれてるし、そこに座りなさい」

二人から言われたことでやっとセドリックは土下座狀態から起き上がり、エディンに言われるがまま席に座った。

「カイン男爵様、この度は申し訳ありません」

 セドリックは再度テーブルに手を付きながら再度謝ってくる。

「もういいですよ。ただ、これから先、同じ様な事を二度としないようにしてくださいね。他の人を含めてです」

カインはセドリックに念を押して言う。

「もちろんです。同じ事は繰り返しません。今後気を付けます」

「それでリザードマンは引き取って貰えるのですか?」

カインにとってはそちらのほうが大事だった。

「リザードマンは尾の先が納品になります。ただ、全鱗で覆われてますので鎧等に使えるため、丸々引き取ることが可能です」

未だ顔を青ざめさせて固まっているセドリックを橫にレティアが答えてくれる。

「なら、ゴブリンの耳とリザードマン十をお渡しします」

「わかりました、それで処理いたします」

「それでだ、Gランクの新人がゴブリンを五十、リザードマンを十も持ってくるなんて、そのままにしておくわけにはいかない、ランクアップだけお詫びも兼ねてしておくよ。今回の事でCランクでいいかな」

ギルドマスターのエディンがそう言ってきた。

Cランクまで上げてくれるならカインとしては有り難かった。Gランクではまともな依頼がなかったのだ。

「あら、旦那様だったら五歳の時に騎士団に地竜を納してもらったわよ。あと家にもレッドドラゴンの剝製が飾られてあるけど、あれも五歳の時に倒したのよね。ちなみに私と模擬戦を良くやるけど私よりも強いわよ」

ティファーナが余計な事を言ってきた。

「地竜!? レッドドラゴン!? AクラスにSSクラスの魔じゃないですか! しかも騎士団長のティファーナ様より強いって……」

レティアがさらに驚く。

「それならランクは考え直さないといけないね。本當ならAランクでもいいけど、Bランク以上になるためには盜賊討伐の実績が必要なんだ。人殺しが出來ないと護衛もできないからね。ちなみにSクラス以上は國に屆け出を出して許可が必要になるんだ。Aランクは報告だけ回せばいいんだけど」

エディンは腕を組み考えている。

「んー。これからもお願いしたいこともあるし、Aランクにしちゃおうか。カイン男爵なら報告書を回しても國も文句言わないだろうし。あ、もちろん盜賊討伐はしてもらうけど」

エディンが提案をしてくる。

「そこまで上げなくてもいいんですが……。盜賊の討伐は、捕まえて突き出してもいいんですか」

カインがエディンに聞いてくる。

「それでも構わないよ。盜賊なら犯罪奴隷として鉱山送りとかになるはずだから、捕縛なら報奨金も増えるよ」

「わかりました。それなら問題ありません」

「これから先、私からの指名依頼もやってもらいたいし、やっぱりAランクだね。王都ギルドマスターの権限でAランクの登録にしておくよ。レティア、手続きしてきて」

「わかりました」

そう言って、カインから今日貰ったばかりのギルドカードをけ取り、レティアとセドリックは部屋を出て行った。セドリックは承認するのに行く必要があるらしい。

部屋に殘ったのはエディンとティファーナとカインの三人だけどなった。

「カインくん。こんなお転婆な妹だけどよろしく頼むね。長男は後継で領にいるけど王都には僕と妹のティファーナだけなんだ」

エディンが頭を下げてくる。

「お転婆って何よ。強い相手求めただけじゃない」

ティファーナは頬を膨らませて怒っている。

「頭を上げてください。こちらこそよろしくお願いします」

カインも頭を下げた。

「それにしても、いきなりティファーナが結婚相手を見つけたと報告にきたときはびっくりしたよ。ホントに。しかも五歳の子だって言うじゃない。最初驚いたけどカインくんを今日初めて見たら君なら安心して預けられるよ」

「そう言って貰えるとありがたいです。いきなり三人と婚約になった時は僕も驚きましたが」

「そうだよね。妹から聞いてたけど、テレスティア王殿下とエリック公爵のとこのシルク嬢だっけか、それを聞いた時ははさすがに僕も驚いた。そこにこんな妹でいいのかと本當に思ったよ」

「まったく! 兄さんもそんなこと言って!」

ティファーナは相変わらず頬を膨らませていた。

暫く雑談をしていると、扉がノックされた。

「失禮します。カイン様のギルドカードが出來上がりました」

レティアがカードと依頼分の報奨金を持ってきてくれた。

「これが新しいカードになります」

そう言って出されたのは金ゴールドに輝くAランクのギルドカードだった。け取って魔力を流すと名前とランクが浮き上がった。

「これで大丈夫だね。これからは指名依頼も出すかもしれないからよろしくね」

エディンは立ち上がり、握手を求めてくる。

カインも立ち上がり握手をした。

「それでは帰ります」

カインはそう言って部屋を出て行く。なぜかティファーナも付いてきた。

「私も騎士団のほうに戻るわ」

カインとティファーナは冒険者ギルドを出て貴族街へ一緒に戻っていった。

「ただいまー。今帰ったよ」

途中でティファーナと別れ、自宅の屋敷に戻ってきた。

「お帰りなさい。ギルド登録できましたか?」

帰りを待っててくれたのは、シルビアだった。

「うん。登録できたよ。々とあっていきなりAランクになったけど」

そういって、金に輝くカードを取り出した。

「カイン様ならおかしくはないですね」

シルビアはそう言って微笑んでくれる。普通はありえない事なのだが、シルビアは基本的にカインには盲目的で推定をしてくれる。

「普通はありえないことなんですが……」

後ろでコランが呟いている。

「もうししたら、學園の學試験もありますから勉強しましょうね。もうしで夕飯ですから用意してきます。カイン様もお著替えになってください。出來上がったらお呼びします」

 

そう付け加えて、仕事へ戻っていった。

數日後、王城ではマグナ宰相が書類を確認して承認印を押していた。その中の一枚を見つけ大きく目を見開きその一枚を持って、部屋を急いで駆けていった。向かった先は王の執務室だ。

「陛下! 見てください。これを!」

「なんだ? そんなに急いで」

そう言って、渡された一枚をけ取って目を通す。

段々と目を大きく見開いて、ため息をつく。

渡されたのはギルドから提出されたAランク登録の報告書だった。中には説明文が書いてあり、登録初日にGランクからAランクにランクアップしたことが書いてあった。ギルドマスターが実力は保証するとお墨付きも書いてあった。

「カインめ、あいついきなりやりおったわい」

王と宰相は二人でため息をつくことしか出來なかった。

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