《転生貴族の異世界冒険録~自重を知らない神々の使徒~》第六話 學式
學式を無事に迎えた。さすがに制服を合わせたり必要なものを買い出しにいく必要があり、冒険者活はしていない。
この王都の學園は週六日のうち二日が休みになっている。五週の三十日で一ヶ月となる。四日勉強して二日休みの繰り返しだ。
部屋で制服に袖を通しながら、これからの學園生活に心が躍った。前世では、高校生途中までいけたけど……。ふと沙織の顔が浮かんだ。を含めて元気にしているのかなっと思ったが、すぐに前世だと諦めをつけ頭を振って浮かんだ顔を消した。
「カイン様、とっても制服がお似合いです!」
「気をつけていってらっしゃいませ」
コランとシルビアが笑顔でお見送りしてくれた。最近、コランとシルビアが一緒にいる時が多い、二人とも年頃だからそのままうまくいってくれればなーっと思いつつも學園に向かって歩いていく。
學園までは家から徒歩でも十數分でつく距離にある。陛下が気を利かして近いところを選んでくれたからだ。
今日は間違えないように、北門から門をくぐり學園にっていった。
新生は相當數がる育館みたいな場所に案され、各自席についていった。二階席があり、そこには両親たちが座っている。さすがに両親席は貴族と平民が同じところに座るわけにもいかず分けられていた。
貴族側の両親席を見ていたら、父のガルムとサラが二人で座っていた。
「父上來てくれたんだな」
カインは嬉しそうに呟いた。
「おはようございます!」
「おはよ~」
急に後ろから聲が掛かり、振り向くと見知った二人がいた。
「テレス、シルクおはよう! 今日からよろしくね」
カインは満面の笑みで二人に返事を返した。その笑顔をみて、思わず二人とも頬を染めてしまった。
テレスとシルクはカインの両隣に座ってきた。そのまま三人で話していると、周りが小聲で話すのが聞こえてきた。
「あれ、テレスティア王殿下だろ、あの男の反対側にいるのはサンタナ公爵令嬢だぞ。あいついったい誰なんだ? あの二人と仲良く話して……」
「あの真ん中の席が羨ましい……」
「でも真ん中の男の子も格好いいよ……」
そんな聲が聞こえてきた。もちろんカインは聞こえないふりをしていた。
「もう學ですし、お父様の許可が出たらすぐに公表したいですわ」
「うん~。そうだね~。イチイチ隠すの面倒だし」
二人とも婚約の話を五年間黙っていてくれた。まだな事なので、今まで外でデートでせず王城でのお茶會がメインとなっていた。
「そのうち陛下と、エリック公爵と話して時期を決めてみるよ」
そのまま雑談をしていると、學式が始まった。
學園長が演壇にのぼり話し始めた。
「皆さん學おめでとう、この學園はーー」
し長い説明を聞き終わってから一斉に拍手をする。
そして、次に生徒會役員一同が演壇に一列に並んだ。
「えっ」
カインは思わず驚いた。
生徒會役員の中に姉のレイネがいたからだ。
生徒會長が説明をし、姉は生徒會副會長をやっていることを初めて知った。
「続きまして、新生代表、一年生主席、カイン・フォン・シルフォード」
司會に呼ばれ、カインは席を立ち演壇へ向かって歩いていく。
演壇にたち、一息つく。周りを見渡したあとに話し始めた。
「はじめまして、本年一年生主席となりましたカイン・フォン・シルフォードです。ここにいる生徒たちは多くの験者から試験を勝ち殘って學した方々になります。私は貴族ですが、教育には貴族も平民もありません。學ぶ権利については初代國王より全ての國民は平等に教育をけることができると定められています。これからの學園生活では家柄に囚われずに友人をつくっていきたいと思っております。但し、新生はわからないことばかりだと思います。先生、先輩方々、これから々とお世話になると思いますのでよろしくお願いします。新生代表、カイン・フォン・シルフォード」
一禮すると、盛大な拍手となった。
ひと仕事を終えて席に戻る。席にはテレスとシルクが待っていた。
「カイン様、とても凜々しかったですわ」
「カインくん格好よかったよ!」
「二人ともありがとう」
司會がそのまま會を続けていく。
「それでは、最後に陛下がいらっしゃっておりますので一言いただきたく思います」
その言葉に、テレスとカインはピクっとした。
「テレス、陛下が話すなんて聞いてる?」
「今まで話すことはなかったと思います」
演壇にのぼっていく陛下がこちらをチラっと見た。カインは危険なじがした。
「皆さん、學おめでとう。先ほど新生代表のカインくんが言っていた通り、教育は貴族、平民、王族でも平等にけれる権利がある。今年は々と規格外・・・の生徒もいるので先生方も大変じゃとは思うが、頑張ってしいと思う。これからも頑張ってくれたまえ」
そう言って陛下の言葉は終わった。「規格外」のとこでこちらを見たのは絶対にわざとだと思った。盛大な拍手の中、陛下が降壇し無事に學式が終わった。
カインは學式が終わったあとに來てくれた両親に挨拶しにいった。
「父上、わざわざ領から來ていただきありがとうございます」
「サラから、鳩便できたから何かと思ってな。手紙を見たらカインが主席だというじゃないか。仕事はジンとアレクに任せて強行できたぞ」
そう言ってガルムは笑っていた。
この學園の主席とは、この國の同級生の中での主席を意味することだったらしい。この學園が國で最難関だけに親としては嬉しかったらしい。
両親と別れ、クラスの部屋に向かっているところで見知った後ろ姿があった。
「おーい! パルマ!」
サラカーン商會のパルマだった。この學園をけると言っていたけど無事にかったみたいだ。
パルマは振り向いてカインに気づくと、満面の笑みで手を振ってくれた。スカートから出ている尾も揺れている。
獣人なだけあり、長が人族よりも早い、すでにの子らしい膨らみもわかるようになっていた。
「カイン様、主席おめでとうございます。代表挨拶素敵でした」
「パルマも學おめでとう。どのクラスになったの?」
「勉強頑張ったおかげで、Aクラスになれました。カイン様と同じクラスになれなかったのは殘念ですが、魔法も剣技もできませんし、せっかく學できたので頑張ります。卒業までにはSクラスに上がれるようにしたいです」
「Aクラスでも十分すごいよ! わからないことがあったら教えるから気軽に聲かけてね!」
「はいっ! よろしくお願いします」
パルマとは隣のクラスだったので、教室の前で別れ隣にあるSクラスへ向かった。
教室のドアを開けると、テレスとシルクがすでにいた。
「カイン様、遅いですよ」
「カインくんおそーい。こっちこっち」
二人が笑いながら頬を膨らませ手招きしている。
「ごめん、久々に両親に會ったから話してたよ。あと知っている子がいたから聲掛けてきた」
「知っている子? それはの子ですの?」
テレスが食いついてきた。
「僕が商売している提攜相手の商會の娘さんだよ。いつもお世話になっているからね」
その言葉を聞き、テレスとシルクは二人でコソコソと話し始めた。
「カイン様また候補が増えそうな気がしませんか?」
「んー、増えてもいいんじゃない?」
「そんなに増えたら、私たちが相手してもらえなくなりますよ」
「それは困るねー」
二人でそんな話しを始めた。カインには聞こえていたが苦笑いしかできなかった。
チャイムがなり、教師がってきた。
教師はだった。
「皆さん、席についてください。今日からこのクラスの擔任になりました、エルカ・フォン・ポートライです。最初に自己紹介をしましょう。まずは、主席のカインくんからだね」
カインは席をたち、教壇の橫に向かった。
「初めまして、カイン・フォン・シルフォードです。一応貴族になりますが、気にしていないので気軽に「カイン」って呼んでください。これからよろしくお願いします」
頭を下げて、自分の席に戻る。次はテレスだ。
「テレスティア・テラ・エスフォートです。第三王ですが、カイン様と同じく気軽に聲をかけてくださいね。よろしくお願いします」
王族らしく、華麗な禮をして席に戻っていった。そして次は三席のシルクだ。
「シルク・フォン・サンタナです。公爵家になりますが、テレスティナ、カインくんと一緒に気軽に聲をかけてください。よろしくねー」
そのあともクラスメイト順々に挨拶をしていった。
「これで挨拶は終わったな、今日はこれで終わりになる。明日からはオリエンテーションになる。選択學科も決める必要があるからしっかり見るんだぞ」
そして今日は解散になった。他の教室も終わったようで続々と生徒が教室からでてくる。
このフロアには一年のSクラスからBクラスまでの三クラスが並んでいる。CからEクラスは一つ下のフロアにある。
カインは、テレスとシルクの三人で帰ろうとしたら廊下から怒鳴り聲が聞こえてきた。
「お前みたいな獣人の平民がなぜAクラスなんだ?侯爵家の僕のほうがAクラスにふさわしいのに!」
「「そうだ! そうだ!」」
廊下を覗いてみると、絡まれているのはパルマだった。
その瞬間に、カインは青筋を立てて絡んでいる相手を睨みつけた。
絡んできた相手が上級貴族である侯爵家と聞いて、さらにどうしていいかわからずにパルマはオドオドしていた。
「お前がこの學園に學していなければ、僕がAクラスだったはずだ。すぐに退學してしまえ」
相手の顔を見たら、ハビットだった。コルジーノ侯爵の嫡男だ。
すぐに止めにかかる。
「學初日に何絡んでいるのかな?ここの學園は貴族も平民も平等だったはずだけど」
カインが後ろから聲をかけた。
「そんなの関係ない、それは下級貴族であって、上級貴族の僕には関係のない話だ!!」
と言いながらハビットは振り向いた。そして固まった。取り巻き二人もカインに気づききがとまった。
「そんなことは誰も言ってないけどな。しかもその子は僕の知り合いなんだけど」
そのままハビットとパルマの間にり、パルマを背中に隠す。
「こ、これはカイン男爵、あなたも貴族なのに、貴族の味方をしないで平民に肩を持つのか」
取り巻きの一人がカインに言ってきた。
「貴族も平民も関係なく、僕は友達の肩を持つけど?」
「フンッ。貴族ではなく、平民の肩を持つだと。侯爵家より平民を選ぶなら父上にも話して、その平民の家ごと潰してやる」
その瞬間にカインは殺気を出した。殺気は他の人には気づかれないように三人だけに向けた。
「誰が誰を潰すだって……」
カインは先ほどまでと違って、冷たい聲で三人に視線を向ける。
殺気をけて三人ともガクガクと震えている。
そんな時後ろから聲がかかった。
「國民あっての貴族ですのに、その発言は問題ですわね。これは父上にも報告が必要かしら?」
震えながら聲のほうを向いた三人はさらに固まった。
立っていたのはテレスティア王殿下と公爵令嬢なのだから。
「テ、テ、テレスティア殿下! い、い、いえ……、先ほどの言葉は間違っておりました……申し訳ありませんテレスティア殿下」
正面からはカインの殺気をけ、後ろからは王殿下からの口撃をけて、ハビットは顔を真っ青になっていた。
「謝る相手が違いますわよ。あなたが絡んだ相手に謝るのが必要なのでは?」
テレスからパルマに謝るように冷たく促す。
ハビットは平民に謝りたくはなかったが、王家に伝わったら問題になるのはわかっていた。
「こ、こ、このたびはすまなかった……」
ハビットと取り巻きはカインの後ろに隠れているパルマに向かって謝った。
「パルマ、これでいいかい?」
カインがパルマに尋ねるとパルマは小さく頷いた。
「……はい……」
「ハビット殿、次は同じことがないようにしてください」
「わかった、カイン殿」
その一言を言って三人は逃げるように帰っていった。
「パルマ、気づくのが遅くなってごめんね」
「カイン様、助けていただきありがとうございます」
パルマは上目使いでカインを見つめた。
その瞬間に二人から聲がかかる。
「「これはお話が必要だねですわね」」
このあと、カインとパルマはテレスティアとシルクに連れられ教室に戻った。
「カイン様はそこで正座して待っていてくださいね」
「え……正座?」
「いいからせ・い・ざ」
「……はい」
カインは仕方なく正座した。
子三人はそのまま丸くなって話し始めた。
三十分が過ぎやっと話しが終わったみたいだ。
「これで私たちはパルマの友達ねっ! これからよろしく!!」
シルクがパルマに聲を掛ける。
「はいっ! こちらこそよろしくお願いします」
「あ、カインくんのこと忘れてた」
三人は話に夢中になってカインのことを忘れていたことをシルクが気づいた。
三人がカインのほうに視線を向けた。
そこには足が痺れてけなくなったカインが、正座をしたままぐったりとしていたのだった。
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