《転生貴族の異世界冒険録~自重を知らない神々の使徒~》閑話4 テレスティア王と近衛騎士団
「シルク、今回楽しかったわ」
揺られる馬車で目の前に座っているシルクに微笑んだ。
私は産まれてからずっと王城の中で暮らしていた。第三王という産まれをもったおかげで市街への買いもほとんど行けない狀態だった。
何をするにも王城の中で済んでしまい市街は、王城の窓から広がる街並みを見るだけの生活だった。
エリック公爵様の次のシルク嬢が私と同じ歳ということもあり紹介され、三歳の時から王城で良く一緒に遊んでいることが多かった。
シルクも家が王都から數日離れたマルビーク領があるので、毎日は遊べなかったのがさびしかったと思った。
五歳の誕生日をお祝いしてもらったあとにお父様にお願いして、シルクの実家に遊びに行かせてもらった。もちろん侍や近衛騎士から護衛をつけてもらいながら。
馬車の窓から眺める市街の街並みに心が躍り、市街から出た黃金に広がっている農地にした。
一緒に領地に向かったシルクと話を盛り上げながら領地につき、マルビーク領で數日過ごさせてもらった。
王都に帰るのはさびしかったが、お披目會でシルクも一緒に王都に向かうことになり馬車で楽しく話しながら道を進んでいった。
王都まであと三日のところで馬車の外が騒がしくなった。
「オークの群れが三方からこっちに向かってる!王殿下を守れ!」
外から怒聲というような聲が聞こえてきた。
「テレスティア様、シルク様、どうか隠れてください」
そう、馬車に同乗している侍のマルタから言われた。
「え、え、な、なにがあったの?」
侍の焦った聲に驚く。
「魔の襲撃みたいです。騎士が討伐してくれますので、安心してここに隠れててください」
その言葉でしは安心できたが、怖くてシルクと手を握り合って二人で震えた。
外からは怒聲と群れが走るように騒音が聞こえてくる。
そして思わず見てしまった。窓の隙間からオークの群れがこちらに向かってくるのを。
怖いながらも隣にいたシルクも凝視している。
「絶対に馬車の近くに寄せるな! 馬車を囲むように配置するんだ!」
「三方からオークが各十以上きます。この人數では・・・・・・」
「死ぬ気で戦え! 俺達は近衛騎士団だぞ! 王を守らないでどうする!!!」
馬車の外からは怒聲が飛びっている。
「ぎゃぁぁぁぁあぁ!!」
「テロット! 平気か!」
「・・・・・・」
隊長が剣を振り、オークに切り込みながら倒れた騎士のフォローにる。
「ぐはっ」
また騎士が後ろで倒れた聲が聞こえた。
周りを見渡すと、すでに數人が事を切れており、倒れてもがいている騎士もいた。馬車を守っているのはすでに三人だった。
五十近くいたオークの群れは三十くらいまで減っていたがすでに限界だった。
「これまでか・・・・・・クソッ」
その時、どこから現れたか小さな子供が片手に剣を持ち立っていた。
「助太刀いたします!!!」
その子供が発した言葉だ。オークの群れがいる中、その子供は飛び込んできたのだ。
「子供がこんなところにきてはいけない! 逃げろ!」
そう言うのが限界だった。
その子供は笑顔をこちらに向け、一言だけ言葉を放った。
「見ててください。大丈夫です」
そのあとはその子供の行に見とれてしまった。
魔法を連発して放ち、きが見えないほどの剣技でオークを倒していく。
「なんなんだ、この子供は・・・・・・」
ただ、見てることしか出來なかった。
「これで終わりだっ!」
気づいた時にはすでにオークは殲滅されていた。
子供がこちらに歩いてくる。良く見れば貴族の服を著ていた。
ただ、魔法や剣技を見て、普通の子供ではないのは誰がみてもわかる。私達ではとても勝てない、けど、王や公爵令嬢を守らなければという使命でその子供に剣を向けて構えた。
「馬車に寄るな、そこで止まれ!」
その子供は、剣のを払ったあとに剣を納め姿勢を正してきた。
「申し遅れました。カイン・フォン・シルフォードと申します。ガルム・フォン・シルフォード・グラシアの三男になります」
そういったところで、さらに後ろから馬に騎乗した騎士がかけてくる。
「ガルム・フォン・シルフォード・グラシア辺境伯の騎士である。応援に參ったって、あれ?なんでカイン様がいるのですか?」
後ろから駆けてきた騎士たちは不思議そうな顔をし、周りを見渡す。
「しかも全部倒してしまってるし」
そしてシルフォード辺境伯様の子供と思われるカインと呼ばれた年は近くによってくる。
「それよりも、負傷している騎士の治療をさせてください。回復魔法が使えます」
はっと気づいて、回りを見渡す。既に事が切れている騎士もいたが數人に息があった。
倒れている騎士たちに近づいていく。
『エリアハイヒール』
そのカイン年が唱えた。
倒れている騎士が見る見るうちに怪我が治っている。私も痛んでいた箇所がいつのまにか消えていた。エリアハイヒールなんて回復魔法の上級にあたる魔法だ。こんな子供がいったい……。
そう思っていたら、數人の騎士に守られた馬車がついた。馬車の紋章は間違えなくシルフォード辺境伯様のものだ。
応援に來てくれた騎士が皆整列してる。
そして、馬車から見覚えのある辺境伯様が降りてきた。
「ガルム・フォン・シルフォード・グラシアだ。その馬車の紋章はサンタナ公爵家のものと見けられる。ご無事か」
その言葉で、生き殘ったんだと実した。
近衛騎士の隊長が馬車に聲を掛ける。
「王様、シルク嬢無事でしょうか、助けがり魔は駆逐しました。安心してください」
わたしとシルクの二人は見ってしまっていた。
騎士たちが倒れていく中、いきなり現れた年が魔法と剣でオークを倒していくとこを。
シルクと繋ぎ合っている手に力がる。
なんて綺麗な剣技なんだろう。まだわたしと同じ歳くらいの子供なのに流れる様にいてオークを倒していく。その年から目を離せなかった。
侍が扉を開いてくれ、支えられてシルクと馬車から降りることができた。
馬車を降りると、王城で見知った人がいた。ガルム辺境伯様だ。
ガルム様も公爵家の馬車にわたしが乗っているとは思っておらず驚いていており、いきなり膝をつき、臣下の禮をした。
わたしたちを助けてくれた年も同じく禮をしてくれた。
「これは、テレスティア王殿下、シルク嬢ご無事で何よりです」
「ガルム辺境伯様、危ないところをお助けいただきありがとうございます」
ガルム様が來てくれたことで安心はできたが、先ほどの怖さからかまだ震えが止まらない。
それでも助けてくれた年が気になってつい見てしまう。
「カイン、こちらにいらっしゃるのは、第三王のテレスティア・テラ・エスフォート様とサンタナ公爵の令嬢であるシルク・フォン・サンタナ様だ」
ガルム様が年に向かって紹介してくれた、カイン様というのですね。絶対に忘れません。
その年はすこし驚いた顔をしたあと、立ち上がり自己紹介をしてくれた。
「隣におります、ガルム・フォン・シルフォード・グラシアの三男のカイン・フォン・シルフォードでございます。テレスティア王殿下及びシルク様においてはご無事で何よりです。急ですいませんが魔法をかけさせてもらってよろしいですか?」
え?魔法?さっき見たけど、すこし揺してしまった。
『気分鎮靜化リラックス』
カイン様が魔法を唱えた途端にわたしとシルク、侍までがに包まれた。
がなくなっていくと先ほどまでの怖さや震えがなくなり落ち著いた気分になれた。
「これで気分が落ち著いたと思います」
そう言ったカイン様の笑顔は目が離せなくなりました。自分の頬が赤くなっているのがわかるくらいに。
「カイン様、テレスティア・テラ・エスフォートでございます。あぶないところを助けていただきありがとうございます。とても怖かったです。もうこれで最後なのかと思ってました」
思わず、カイン様の手を握ってしまいました。両親や兄弟以外の手を初めて握ってしまったかもしれません。
「あ、ずるい! カイン様、私からもお禮を言わせてください。馬車の窓から見ておりました。疾風のごとき勢いで魔法を撃ち、剣技も格好よかったです」
シルクも出てきてしまった。あ、わたしが握っている手がシルクに取られてしまった。
 「守ってくれる騎士が倒れていく中、シルクと二人でこれで最後だと思ってました。カイン様はお強いのですね、三十のオークをお一人で討伐なさるなんて。魔法も剣技もつい見とれてしまいました」
そのあと、カイン様とご一緒に王都へ向かうこととなったことに顔では表さないように努力しましたが、頬が緩んで仕方ありません。
魔とわたしを守ってくれた騎士たちの亡骸の処理をするとのことで、わたしたちは馬車へるように言われて、中にり待っていた。
「カイン様……」
先ほどのカイン様の顔が脳裏に浮かび、思わず呟いてしまった言葉にシルクが反応する。
「テレスったら、カイン様に夢中なのね~」
シルクに言われ顔が真っ赤になったのが自分でもわかった。
し時間をおいて騎士から出発することが伝えられた。
もうしカイン様とお話がしたいと思い、思わず馬車から聲をかけてしまった。
「ちょっといいですか、私達二人では不安なので、カイン様を私達の馬車で一緒にいてもらいたいのですが」
 
  ガルム様もさすがにそれはと困してましたが、なんとか認めていただきました。
「わかりました。カイン、そちらの馬車へ乗れ」
「……わかりました」
まずカイン様を後ろの席の真ん中に案して、わたしが隣に座りました。
そしたらシルクまでカイン様の反対側に座っているじゃないですか!
大人が二人橫並びに座れる椅子なので、子供三人が並んでも狹くない。
カイン様はなんだかもどかしい顔をしています。
そんな顔も素敵だと思ってしまいました。
「三人並んだら、キツイでしょうから私が前の席に座りましょうか」
カイン様がそんな提案をしてきましたが、せっかく橫に座れるのに認められるわけありません。
そのまま思わず、腕を組んでしまいました。
わたしったら積極的すぎるかも……。
「テレスずるい。私も!」
シルクもカイン様の反対側の腕に絡ませている。
途中の街で宿泊した際も、シルクと二人部屋だったのに無理を言ってカイン様と同室にしてもらった。さすがに著替えのときは外に出ていただいたけど、隣のベッドで眠っているカイン様を見て思わずにやけてしまったわ。
もう今日王都につくときには、カイン様との會話がとても楽しくて思わず「テレス」って呼んでとお願いしてみた。シルクだってそう呼んでいるしいいよね?
楽しい時間はあっという間に過ぎて王都に到著した。カイン様はそのまま近衛騎士団の所に行かなくてはならないのでそこでお別れとなってしまった。
シルクと一緒に王城へると、父上が會議をしている応接室に二人で通された。
心配をかけたことで父上に謝らないと。
「お父様この度は心配をおかけして申し訳ありません」
 
「いいのじゃ。テレスよ、二人共無事で何よりだ」
そのあとは、今まであったことを話した。カイン様のことを話すときはうれしくなってしまい、すこし大げさになってしまったかもしれない。それでもわたしから見たらどこの誰よりもあの姿は王子様にしか見えなかった。
お父様とエリック公爵様は二人でため息をついていた。
「それでじゃ、報告ではテレスにシルク嬢も、その助けてもらったカインにべったりだったと聞いておるがの」
 
お父様のその一言で、顔が真っ赤になってしまったのが自分でもわかる。チラッと隣をみるとシルクの顔も真っ赤だ。
「二人ともその表を見るとまんざらでもないようじゃの」
 
マグナ宰相様がわたし達の顔を見ながらそう言ってくる。
「カイン君を取り込むとして、どちらかが婚約者になってしいと言ったらどうだ?」
 
お父様のその一言はわたしにとっては衝撃的でした。
あのわたしの王子様でもあるカイン様と婚約だなんて……。
思わず手を挙げて即答してしまった。
「「私がなりたいです」」
隣のシルクと聲が合ってしまった。
シルクと顔を合わせると二人してさらに顔を赤くしてしまったわ。
「それ程までの男の子か、カインというのは」
 
「エリック、それでいいかの?」
 
お父様とエリック公爵様が二人して頷いている。
そのあと、マグナ宰相様も含めて三人でなんだか怪しい顔になっていたけど、わたしはカイン様と將來結婚できることが決まったことで心がいっぱいになってしまった。
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