《転生貴族の異世界冒険録~自重を知らない神々の使徒~》第七話 魔族の常識
想像もつかなかった一言にカインは無言になった。
それでもリザベートの二つの瞳は一直線にカインに向けられていた。
「……いきなり過ぎて……答えはすぐに出せない」
人族と魔族という垣はあるが、リザベートはその差をじさせない程のであり、カインは自分の屋敷にいても不満などじていなかった。
特に今まで奴隷として扱われていたことで、人族の悪いイメージを取り払うために優しく接していた。
ダルメシアも、皇族としてのリザベートを知っているため、特に気を使っていた。
かといってカインにはすでに複數人の婚約者がいる。
があるかと言えば、全くない。
しかも婚約者には嫉妬深いテレスティアがいる。シルクは何事もなく許可をしてもらえるであろうが、また説教されることが目に見えていた。
リザベートも答えはわかっていたのか、素直に頷いた。
「お主の答えはすぐにでないのはわかっておる。だが、長く國を離れておって明日から皇國に向かう。しだけ――不安なのじゃ」
力なく答え下を向くリザベートの頭をでようと自然にカインの手はびていた。
自分でも無意識なのかもしれないが、自然とリザベートの頭をでていた。
ゆっくりと髪を梳くようにでるカインの手に、最初は戸いの表を見せたが、すぐに気持ち良さそうに目を細めた。
「僕には婚約者が三人いる。それに一國の貴族として、代表としてこの魔族の國に來てるんだ。簡単に答えを出せるものでもないし、國王の承認も必要なんだ。だから……今はごめん……」
でていたリザベートの頭から手を戻し、膝の上に置くとゆっくりと頭を下げた。
その姿を見たリザベートはしだけ悲しい表をしながらため息を吐く。
「わかっておるのじゃ。これは妾のわがままじゃ。だけど……お願いがあるのじゃ」
「うん、多のお願いだったら聞くよ。出來ないこともあるけど……」
カインの返事に、リザベートは頬を赤く染め、言いにくそうにモジモジとしていたが、「よしっ」という言葉と同時にカインを見つめる。
「明日から妾は次期皇帝になるために、がんばる。だから、今日は……い、い、一緒に……ね、ね、寢るのじゃ」
言い切ったリザベートの顔はりんごのように赤くなっていたが、その上目遣いにカインは困する。
たしかにカインが充てがわれた部屋は最上級の客室であり、ベッドも大人が數人橫並びで寢ても問題ない程の大きさだ。まだ人していない二人が一緒に寢ても問題はない。
しかし、同衾していいものなのかカインは判斷はつかない。
実際にそれを口実に國王からテレスティア達と婚約者として決められた過去があるからだ。
しかもそれはまだい時。今のカインはすでに十四歳である。
リザベートも同年代でらしい凹凸もあり、すでにとしての気も漂っていた。
「そ、それは……。もうぼくたちもいい年頃だからまずいと思う……」
たどたどしく斷るカインであったが、リザベートは認めないとばかりに首を橫に振った。
「カイン、ここは――人族の國ではない。魔族の國には魔族の國の仕來りはある。魔族の國では人していない者がいくら同衾しても、も、問題……ないのじゃ。だから安心するがよい。誰も気にする者はおらんからの」
はっきりと言い切るリザベートにしだけ心の中の天秤が許可を出す方向に傾いていく。
「心配しなくてもよい。同衾といってもを著させて寢るとは言っておらん。端と端でも問題ない。妾は同じ部屋で寢たいだけなのじゃからな」
「――それだったら……構わない、よ」
カインはリザベートの説得についに墮ちた。
本人も『郷にれば郷に従え』という気持ちはある。リザベートから『問題がない』と言われたら素直に頷くしかない。
許可を貰えたことにリザベートは満面の笑みを浮かべ、その笑顔にカインは思わずどきっとしたが、表に表さないように冷靜に保つ。
リザベートは一度寢著に著替えると言って部屋を出て行ったが、その足取りはとても軽い。
後ろ姿を見送ったカインはため息を吐き、諦めたように自分も用意された寢著に著替えた。
程なくして再度ノックされ、寢著の上にローブを羽織ったリザベートがってきた。
「待たせたのじゃ。そろそろ眠るかのぉ……」
頬を赤く染めながら上目遣いのリザベートに思わずカインはを鳴らす。
「う、うん……。そうだね。明日は早いしそろそろ休もうか……」
互いに反対側からベッドり、ベッドにある作パネルを使用して部屋の照度を落とす。
真っ暗ではないが、薄暗い部屋でお互いベッドの端で眠りにつくことにする。
しかし、年頃の男が同じベッドに眠りについて、意識をしないのは不可能である。
カインも張からなかなか眠りにつけなかった。
「……ねぇ、カイン。もう寢た……?」
「ううん、まだ寢てないよ。リザベートは眠れないの?」
「うん、だからこのまましだけお話しをしよ……」
「うん、いいよ」
いつもは尊大な言葉使いをしていたリザベートであったが、ベッドの中の言葉使いはとても可かった。
互いに々と話しているうちに、端同士で寢ていたはずがしずつ中央に向かってをかしていた。
それでも張からか、肩のれない距離で會話は続けられた。
しかし長くは続かなかった。
遅くまで続いた會話の合間も自然と無言が続き、そのまま二人とも眠りにはいっていた。
翌朝。扉が勢い良く開かれた。
「カイン様! 聞いてくださ……い……」
「あらあら……これは……」
「勝手に部屋にはいってはーーあ、これはこれは。さすがカイン様」
部屋にってきたのは、セト、セトの妻であるレファーネ、そして後を追うように遅れてきたダルメシアであった。
三人の聲が聞こえカインはゆっくりと目を開ける。
目の前にいた三人に驚いたが、それ以上に自分に抱きついたまま眠っているリザベートにさらに驚愕する。
「……カイン様、さすがにこれは私ではどうにも……」
何とも言い難い表をしたダルメシアにカインは首を橫に振る。
「違うんだ、ダルメシア。同じベッドで寢たがリザベートがいつのまにかくっついてきて……」
言い訳をするカインの言葉に空気が一瞬にして凍りついていく。
「ーーカイン様、それって……遊び、だとでも言うでしょうか。ねぇセト様。セト様は遊びはいけないって知ってますよね?」
冷めきった表のままセトに同意を求めるレファーネ。
カインも以前、ダルメシアが半殺し、セトも袋叩きにあったことを思い出し背中に冷たい汗を流す。
セトは無言で何度も首を縦に振り、ダルメシアは音を立てないように一歩ずつ後ろに下がっていく。
抱きついているリザベートに説明をしてもらうために、カインは優しく肩を揺すった。
ゆっくりと目を開けるリザベートは、目の前にいる三人を見てーー頬を染めた。
「いや、そこは頬を染めるところじゃないでしょ。リザベートからも説明してよっ」
すぐに著替えたカインは氷のように冷めた表をするレファーネに説明する為に応接室へと移することになった。
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