《転生貴族の異世界冒険録~自重を知らない神々の使徒~》第十一話 魔王會談
第11話 魔王會談
城の中にある會議室で、皇太子であるログシアを中心に、リザベートと四人の魔王がテーブルを囲んでいた。
東の國を治めるイグニス
西の國を治めるアグス
北の國を治めるデニス
そして南の國を治めるセト
皇族と四人の魔王が中心になり重大事項については方針を決定していた。
「魔皇帝陛下は相変わらず……?」
魔王の一人であるアグスがログシアに向かって質問をすると、ログシアは首を橫に振る。
「あぁ、陛下は回復魔法を掛けても一向に改善が見けられない。今は眠っている」
最高権力者は魔皇帝である、ログシアとリザベートの父であったが、し前から調を崩し、そのまま昏睡狀態となっていた。そのため、皇太子であるログシアが代わりに國の舵取りをしている狀態であった。
回復魔法を掛けても一向に改善せず、どうにもならない狀態で小康狀態を保っている。
ログシアも報を集めているが、未だに解決策は見えていない狀態だった。
「それよりも今回集まってもらったのはーー人族に対しての戦爭布告についてだ。こうして、リザは戻ってきているから、今回は――――」
「まさか、今更取りやめるなど言いませんよねっ!?」
デニスがテーブルを叩き立ち上がった。
もともとデニスは好戦的な格であり、爭いがなく魔王により平和に統治されているこの環境を気にっていなかった。もともと魔王に実力でなったが、実際、魔王になると戦う事はなくなる。
魔狩りなどを促進して行っていたが、やはり戦いが好きであった。
「わしは戦爭には反対する。何があろうが兵を出す事はない」
セトは不機嫌そうに腕を組み、反対の意思を示した。
「わたしはどちらでも。他の大陸を攻めても得することはありませんし」
「俺も同意見だな。こうしてリザベート殿下も戻られておる。皇太子殿下が攻めると言えば従うが……」
イグニスとアグスはあくまで中立を表明した。
そして黙って聞いていたリザベートが口を開く。
「まずは、皆に迷かけたことを詫びる。すまなかった。確かに人族の街では々あったが、妾としてもすでに恨みはない。今回のことが原因で戦爭を仕掛けるつもりならやめてほしい。まぁ、もし仕掛けてもーー負けるであろうしな」
しかしデニスは戦ってもいないのに『負ける』と言われたことに腹を立てた。
実力で魔王となったプライドが許せないのであろう。
「皇太子殿下はどうお思いか? リザベート殿下が人族で捕られ、命すら危ない狀態であったと聞く。それでも人族に対して報復をしないと言われるのか!?」
「……それについては、最初は私も報復は必要かと思っていた。しかし、今回、リザと一緒に人族の使者も來ている。リザの事を保護したその者と話をして報復は行わないことにしようと考えている」
落ち著いているログシアは腕を組んだまま淡々と答えた。しかしデニスはたとえ皇太子の言葉だとしても納得していないようだった。
「それは、その人族が、俺たちと戦爭をしたら勝てると言っているのかっ!? だから、リザベート殿下も。その人族に會わせてくれ。それで答えを決める」
ログシアは一度リザベートと視線を送ると、リザベートは無言のまま首を縦に振る。
「……わかった。會わせよう。リザ、カイン殿を呼んできてもらえるか」
「わかったわ。すぐに呼んでくる」
リザベートは席を立ち、會議室を退出していく。
リザベートがいなくなった部屋は誰も言葉をわすことなく靜かな部屋となっていた。
しかしその沈黙はすぐに破られた。
「殿下、その人族次第では、わたしも戦爭賛派に回らせていただきます」
今まで中立を貫いていたイグニスがそう呟く。
「イグニス殿、今更なぜ?」
「皇太子殿下もリザベート殿下ももしかしたらその人族に騙されている可能もある。もちろん、反対をしているセト殿だがな」
「おぉ、イグニス殿もそう思うかっ!? それならばその人族さえ始末してしまえば……っ!?」
デニスの言葉と同時に會議室の中が殺気に包まれていく。
それはセトから発せられており、座ったままであったが、その視線は鋭くデニスを突き刺す。
「――デニス殿、今、何と……? カイン殿を始末すると言ったのか……?」
しかしデニスもセトと同格の魔王の一人である。殺気をけたからといって引くわけではない。
睨み合う二人であったが、扉がノックされたことでセトの殺気は拡散した。
ログシアが室の許可を出すと、ゆっくりと扉が開かれ、リザベートに連れられたカインが部屋へとってくる。
カインも先程のセトの殺気をじており、只ならぬ狀態であることはじていた。
しかし、顔に出すこともなく、リザベートに勧められた席へと座る。
「まずは紹介しておこう。今回、人族から使者として參ったカイン殿」
ログシアの紹介に、カインは一度席を立ち軽く頭を下げ挨拶を始めた。
「人族の國、エスフォート王國より參りましたカイン・フォン・シルフォード・ドリントルです。王國では辺境伯を賜っています。まずは、この場へとご招待いただき謝いたします」
カインは挨拶を終え席へと著席するが、セト以外の魔王たちは呆気に取られた。
人族の代表と言いながら、まだ人にも達していない子供が現れたのだから當然であった。
人族に対しては多の知識があり、辺境伯という役職を持っているのだから貴族だとは認識しているが、こんな子供が代表でいいのかと疑問が殘る。
親が早死にし、年若くして親の爵位をけ継いだのであろうという認識で三人はけ取った。
実際にはカインの実力と、國王を含めた國の上層部の思によって若くしてカインは辺境伯となったが、その実力を三人は知る由もなかった。
「――それでは再度、人族との戦爭について話を再開したいと思う。未だ開戦派と反対派で分かれてわたしも決めかねておる。カイン殿から意見は何かあるか?」
ログシアの言葉に、カインは席を立つ。
「まずは人族を代表して、リザベート殿下に対しての対応が間違っていたことをここに謝罪いたします」
リザベートを奴隷にしたのはエスフォート王國ではないが、カインはエスフォート王國代表でありながら、人族國家代表でもあった。人族代表で話している以上、謝罪は必要であるとカインは考えていた。
そのままカインは話を続ける。
「しかしながら、魔族と人族は爭うべきではないと考えております。戦爭が起きればお互いに死者もでますし、國民に負擔をかけることになりますし。それは殿下もまないのでは。実際にリザベート殿下もんでおられません」
「うむ、妾も戦爭はんでおらん。カインの城でゆっくりとさせてほしいくらいじゃしな。戦爭になったら味いにありつけなくなるであろう」
カインの言葉にリザベートが自分の言葉を足していく。セトも先程までの鋭い顔がどこにいったのかというほど穏やかに首を縦に振って同意の意を示す。
しかしそれだけの言葉で納得できるほど魔王たちは甘くはない。
実力だとはいえ、一つの國を預かっているのだ。
「だからといって我らにとってもプライドはある。簡単に、はいそうですか。といって引ける訳がなかろう」
「それは、自分の國が滅んでもいい、と思っての発言か……?」
デニスの言葉にセトが被せるように反論する。
セトの治める國の貴族たちはカインの実力を目の當たりにし、全會一致で反対派になることが決定している。
しかし、この場でカインの実力を知っているのはセトとリザベートだけである。開戦派のデニスにとっても簡単に引くわけにもいかなかった。
「なぜに我が國が滅びるというのだっ!? セト殿、言葉次第ではそなたの國と構えることも辭さないぞ」
「それは……カイン殿と敵対した時點で、すでに負けと決まっているからだ」
ニヤリを笑みを浮かべながらセトは答える。しかし、その態度が気にらなかったのか、デニスは勢いよく立ち上がった。
「こ、こんな屈辱ありえん。我が國が負けるだと? それならばお主が人族代表であるなら、その実力を見せてみよ! わたしも実力で魔王の座を勝ち取ったのだ。お主の実力次第ではわたしも考えよう」
デニスの言葉に、カイン、セト、リザベートの三人はやったとばかりに口元を緩めたのだった。
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