《転生貴族の異世界冒険録~自重を知らない神々の使徒~》第十四話 実力の違い
演説をするカインに対し様々な視線が集まった。それは好意的なものはなく敵意、殺意などが多く含まれていた。
しかし、カインはその気持ちをじながらも話し続ける。
「――人族代表としてリザベート殿下には申し訳ない。しかしこれからは人族と手をとっていきたいと思っている」
演説を終えたが魔族の観衆は何も聲をあげない。
セトも未だに魔王二人に押さえつけられたままだった。
カインの隣に立っていたログシアとカインが演説を終え握手をわした時に、後ろから近づいてきたデニスがログシアの腹を――貫いた。
呆然とするログシアと観衆たち。
「皇族はすでに人族に洗脳されているっ! これがその証拠だっ! 魔族は力で支配するのが筋! 強い魔王が皇族を迎えれ魔族を治めるのが筋だっ!」
ログシアを貫いていた手を抜いたデニスが観衆に問いかけた。
魔族は実力主義。それをまとめられるのが皇族であったが、人族に対して友好を示すのは魔族としてけれられないものがあった。
だからこそデニスの言葉に賞賛の聲があがる。
「……おまえら……」
倒れゆくログシアのをそっとカインが捕まえる。
魔族は攻撃魔法に特化している種族であり、回復魔法には疎かった。ここまでの重傷ならば助からないのが常識である。
しかし一緒にいるのがカインであったのが魔族にとって失敗でもあった。
『最上級回復エクスヒール』
カインがログシアに魔法を放つと、の空いた傷口は徐々に塞がり、一分も立たずに元通りになっていく。
「……なんだと……。致命傷だったはず……」
デニスが驚愕の表をするが、カインは駆け寄ってきたリザとログシアを庇うように立ち上がる。
「――それがお前の答えなら、リザたちと敵対することでいいんだよな……」
同時に起こったカインからの殺気。
リザベートとログシアには向けないように魔王達、そして観衆に向けて殺気が広がっていく。
それは絶的な今までにないほどのカインの殺気。
近くにいた観衆はそのまま白目をむき気絶していく。遠くから眺めている者でさえ腰を抜かしながら後ずさった。
観衆は我先にと逃げ出していく。
しかし魔王としてそれだけの実力がある。歯を食いしばりカインの殺気に耐えていた。
だが、カインの殺気は魔王の力を凌駕しているのは一目瞭然であり、魔王でさえもを恐怖で震わせるほどであった。
「ありえん。絶対にありえん。魔王であるわしが恐怖とじるなど……」
デニスも実力で一つの國を治めたのだ。魔王同士の戦いはないとはいえ、生まれてから恐怖などじたことはなかった。
しかし目の前には自分よりも若く、そして矮小だと思っていた人族の子供に恐怖をじていた。
恐怖で震えるデニスはポケットから小さなを取り出し、そのまま口へと運ぶ。
を鳴らし取りれたを飲み込むと、ニヤリと口角を上げた。
「……人族よ。もうこの場から逃げることはできんぞ……」
同時に起きたデニスからの魔力が一気に膨れ上がった。は一回り大きくなり、筋も盛り上がる。魔力も數倍になったであろうか。
しかしカインはその魔力に覚えがあった。
「――もしかして……邪神の欠片……」
邪神に取り込まれた者との戦い。
邪神に心を奪われたコルジーノの魔力に似ていた。
「お前達人族はそう言うのか。わしたちは〝神の恩恵〟と言っておるがの。まぁ良いすぐに殺してやる」
デニスとカインの魔力がぶつかり合うと同時に、二人はき始める。
しかしいくら邪神の欠片を取り込んだとはいえ、カインとの実力の差は明白であった。
カインは瞬時にアイテムボックスから取り出した剣を構え、そのまま橫に一閃する。
「邪神の欠片を取りれて強くなったかもしれないけど……。私には無意味です」
「……信じられん……人族がここまで……とは……」
デニスの首はゆっくりとずれていき、そのまま頭が転がった。
想定外だったのはアグスとイグニスの二人であった。
人族代表の貴族としてきた年が神の恩恵をけた魔王を一瞬で葬り去るなど想像もしていなかった。
イグニスも同じように神の恩恵を取りれる。
「わしをデニスと一緒にするなっ!」
吹き上がる魔力を認識すると、同じようにカインに飛びかかった。
しかしカインはわかっていたかのようにき、同じように首を刈り取った。
演臺には魔王の死が二。
遠くに逃げながらも演臺を見ていた観衆は信じられないことであった。
最強である魔王という存在。
それが一瞬にして命を駆られる。しかも命を刈る者は人族であり、ただの年。
簡単にけれられるものではなかった。
逃げる足を止め、呆然とする観衆。
そんな中、セトは一人だけとなったイグニスのを押しのけ、逆に押さえつける。
「一人だったら負けはしない。どうだ、カイン様の実力は? お前らが束になっても敵わんぞ」
セトは笑みを浮かべ、リザベートはカインに見惚れていた。
自分が助けてもらったのでカインの実力があるのは知っていたが、魔王として相手にならないなど思ってもいなかった。
魔族は実力主義で全てが決まる。
それは異に対し、守ってくれる相手を種族としてするからであった。
リザベートもとして魔王ですら一蹴するカインに惚れないはずはなかった。
いや、もともと惚れ気はあったが、あくまで選択肢の一つであっただけだった。
しかし、この場で確信に変わった。
〝この人なら私は一緒にいたい〟
リザベートは心にそう刻んだ。
「う、うん……? あれ、痛みが、ない……?」
意識を取り戻したログシアはを起こし辺りを見回す。――そして絶句した。
目の前には転がっているデニスとイグニスの――首。
も転がっており、一目で死んだことが理解できた。
「これは……一……?」
隣にいたリザベートに問いかけると、リザベートは笑みを浮かべた。
「これが……カインの実力よ。わかったでしょう。戦爭をしたらどちらが負けるかなど。兄上の傷もカインが癒やしてくれたのよ」
リザベートの言葉に自分のされたことを思い出し、視線を落とすが、敗れてが空いた服があるだけで、傷一つない。
回復魔法に慣れ親しんでないログシアにとっては信じれないものだった。
「そうだな。私の選択は間違ってなかったということだ」
ログシアは戦爭を行わず、人族と友誼を結ぶことを選んだことに誇りをもって笑ったのだった。
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