マリアはジュニア・スクールを卒業すると、王都の寄宿制のパブリック・スクールに學し、村を旅立った。

その後、ロイとは２週間に１回のペースで手紙のやり取りをしている。

だが姉と離れて暮らすことになった寂しさは、手紙で誤魔化せるようなモノでもない。

ロイが前世で暮らしていた國、日本では、２０歳で人して、その２歳前後を目安に教育を終えるようになっている。

しかし言わずもがな、この世界の文化は違う。

ロイほどではないが、マリアも充分に優秀な子供だった。優秀な子供がまだ１０代前半のうちに親元を離れて、仕送りか、あるいは學生でもパン屋などで働きながら、１人で暮らし、寄宿制の學院に通うことも珍しくはない。家庭によってはジュニア・スクールを卒業した時點で自立、それ以上學院に行かず働く子供もいるぐらいだ。

人は１８歳で。

男の子は通した時點で、の子は初を経験した時點で、結婚可能。

児ポルノ止法は特にない。

この王國は一夫多妻制。

ブドウ酒などの嗜好品は１５歳から。

このように文化が異なる世界で、その世界の住人たるマリアは、ロイが傷的になるとわかっていても、王都に向かった。

いわゆる、ロイがじているモノはカルチャーショックだ。

この世界に５年近く住んでいても、前世の記憶がなくなるわけではない。今でもロイは、々思い出すのに時間がかかるようになったが、前世の言語を喋れるぐらいだ。

さて――、

実は去年、ロイが４歳の時、彼に妹ができた。

名前は、イヴ・グロー・リィ・テイル・フェイト・ヴィ・レイク。

姉のマリアと同じく、夜空の髪と、ルビーのような紅い瞳を宿した、くるしい赤子である。

加えて、ロイはもう５歳ということで、マリアと同じくジュニア・スクールに學した。

そしてそれを契機に剣も習い始めた。

子供とは思えない理解力に、子供特有の習ったことへの吸収能力。

その結果なんて言うまでもない。ロイはパワーでは年上に劣ってしまうものの、技としての剣では村一番になってしまう。

「ロイく～んっ♡　こっち向いて～っ！」

「きゃ～～っ！　ロイくんカッコいい♡」

「綺麗な剣の軌跡～っ、すご～い♪」

剣の特訓中、村にある訓練場でロイが年上の訓練生と模擬戦をしていると、ロイを好いているの子たちが観戦にくる。基本的に毎日だ。しかも以前は運ができて頭がいい子供で済んでいたが、剣という一種の文化・嗜たしなみを極める男の子として、ついにメンバー全員がの子のファンクラブまでできてしまった。

ロイが模擬戦で勝利すると、の子が集まって飲みを渡してくれたり、頬を伝う汗を拭ってくれたり、まさに至れり盡くせり。真剣な顔で剣を振るえば、の子は、ほぅ、と頬を赤らめ、手を振ってあげると黃い歓聲が湧く。

が、だとしても剣の稽古は本來子供には厳しいはずだ。

しかしロイには〈零から始める無限の修練〉があったので、厳しければ厳しいほど稽古にやりがいを見出して、ますます努力するようになる。他のナイト候補生が稽古をしんどくじる時でも、ロイはひたすらに剣を振り続けて、最強を目指した。

サボり、まではいかなくても、楽しかった稽古が疲れるようになりつつある他の子。

一方で楽しい稽古で疲れても、その疲労さえゴスペルで楽しくじるロイ。

そのひた向きな姿勢に、の子たちは淡い心を隠し切れない。

…………。

……、…………。

翻って、ロイは剣を重視するあまり、勉強の方を疎かにしたりはしない。

魔の適はいまいちでも、魔を使うことと、魔の理論を學ぶことは、必ずしも同じではないのだ。言うなれば、実技と座學。男の子もの子も、子供のうちは椅子に座ってお勉強するよりも、いろいろとをかす方が好きな子が多い。しかしロイは、前世でまともに學校に通えなかったのと、再三以上になるが〈零から始める無限の修練〉のチカラで、座學でも授業をけることに楽しさを見出した。

テストでは當たり前のように１００點を取り、クラスではみんなの人気者。

「ロイくん♪　お勉強、教えてほしいな？」

「わたし、ここわからないの～。ロイくん、教えて～♪」

「え、えっと……、一人ずつ順番にでいいかな？」

「「「「「は～い♡」」」」」

もともと、ロイは天才のなんて持て囃されていても、（誰にも迷をかけていないなら、あとしこういうのを続けてもいいよね？）という覚で異世界転生生活を送っているので、自分が満足するために、天才であることを利用して他者を蹴落とすということはしない。そこまでロイは悪い格をしていない。なので勉強を教えてほしいとお願いされれば、そのぐらいお安い用とまで思っている。ロイとしては、折角、しチートだが天才なのだから、悪いことをするよりも誰かの役に立ちたいという考え方をしているのだ。

そして――、

「集え、魔の源よ。形をし、前へ前へと奔はしり給え。【魔弾ヘクセレイ・クーゲル】」

――座學だけではなく、ロイは魔の適が低くても、ゼロではないと諦めずに実技の方も努力していた。今ではロイの中で比較的適が高い無屬魔と屬魔の初等魔なら、容易に発できるようになっている。

朝起きて、晝間はジュニア・スクールに通い、夕方は剣の稽古に勵み、晩飯を食べてから庭の木に向かって魔の練習。

そんな生活がロイは楽しくて楽しくて仕方がなかった。努力することもそうだが、生活そのものが楽しい。だから必ずしもゴスペルのおかげだけではない。無な前世の生活と比べて、圧倒的に毎日が充実している。

で、ロイが３學年次になる頃には、彼は、今までもあり得ないスピードだったが、それよりも目まぐるしい勢いで長した。

剣において、村でロイに敵う子供はいない。それどころかロイの噂を聞きつけて隣や、さらにその隣の村からも、手合わせを願いたいという子供が訪れて、無論、無敗。ロイに慕のを抱くの子は別の村にも現れ始めた。

魔の実技においては、適の面で他の子供たちよりも後れを取るも、努力に努力を重ねて、クラスでは中の上の績を修めている。今では使える魔も増えて、日常生活でも時たま使えるレベルだ。

座學の方では績學年首席。みんなと同じ容の勉強では々足りないので、夜、就寢前に上級生が習うような容の本を読み進めて、３學年次だというのに、ジュニア・スクールの魔座學の容を全て勉強し終えている。

そしてその上――、