「シャノンさん、學院にはなれたッスか？」

（ウソぉ……、いや、男子でも小さい方なら、しだけ話すこともあるけど……）

「でもシャノンさん、座學も実技も優秀ですし、家督爭いとも無縁ですし、余裕に溢れすごく優雅で、すぐにクラスで一番の人気者になりそうですよねぇ」

「わかるわかる！　もう突如現れたクラスで唯一の清涼剤だもん！　って、あれ？　シャノンさん？」

（當然でしかないけど、音姫がない……）

不意に、わずかだけ聞こえてきたがれるような音。

次に強い勢いで弾けるような、連続して水の滴る音が響く。

いつの間にか會話に混ざって３つのそれが聞こえてきたため、奇跡を信じて音姫を探し続けてみたが、そのようにハイテクなモノはここになかった。

（もしかしてあれなのか！？　子供の頃、の子が集団でトイレに向かうのって、會話で音を誤魔化すためとか！？）

「いえ、わたしはだいぶガサツですし、もいずれは大なり小なり、傷付くと思いますし」

「今からでも魔師學部を変えたらいいのに……」

「そもそも、シャノンさんがガサツだと言うならば、世界のの９９％がガサツということになってしまいますよ？　特にエルとか」

「失敬ッスね！」

ノーラに名指しされてエルゼが憤ってしまう。

その間にも左右から、水が水に向かって零れ続けているだけなのに、その発生源をしでも想像すると、なぜか靡《いんび》に思えてしまう音が聞こえ続けていたが……、……、……、不意に、ロイのと神に異変が起きる。

響く水の音に混ざり始めた、甘い匂い。

その匂いをじた瞬間――、たったそれだけで頭がトロトロになり始め。匂いを嗅ぐだけで気持ちよくなり過ぎ始め。自分の溫で火傷しそうなほど下半にが集まり始め。そして、男の娘の大切なところが疼き始めて、は切なくて苦しくて、自分がどうにかなってしまいそうだった。

（けない……。いや、確かにね？　それはね？　隣でやたら可らしい同級生のの子が、他人《ひと》には見せられないことをしているわけだから、むしろ反応する方が健全だよ？　を抑圧するのは、自分や子供と長を向き合えない人だとボクは思うし。しかも１人じゃなくて３人同時で、みんな魔の種族だし）

が、そこまで自分自に弁明するも、ロイは切り替える。

（でも……、それにしたってけない。ボクにはシィや、アリスや、ヴィキーや、そしてイヴがいるのに……。しかも厳には混じっているフェロモン、いや、魔フェロモンの影響だろうけど、の子のその匂いで、なんて……。自分で自分が恥ずかしい……。なんで異世界に転生できたのに、サキュバスたちとの初イベントがこれなんだ……。ゴメン、シィ、アリス、ヴィキー、イヴ……）

わりかし本気でロイは嘆いていた。

と、その時、用事がすんだエルゼがなにかに気付いた。

「って……、あれ？　んんっ？　この濃厚で、獨特で、刺激的でクセどころか中毒になりそうな味しい臭いは――」

「あら♡」「ホントだ♡」

（は？　えっ？　ちょっ！）

「「男の人のアレの臭い！」ですわね♡」

「って、ちょっと！　気持ちはわかるけど、シャノンさんがいるんだから我慢したらどうなの！？」

（嗚呼、こんなくだらない理由で正がバレたら、敵よりも先にシィとアリスとイヴに追い詰められそうだなぁ……）

とはいえ、ここで正がバレてしまうようなロイではない。

魔族領に潛開始前、キチンとアリシアと対策は練り終えている。

的には――、

『ロイさん、これはすごく真面目な話です』

『はい』

『ふざけているわけでも、ロイさんを不快にさせたいわけでもありません』

『はい』

『ご、ご自分の……、その、えぅ、あっ、そのぉ……、せ、せ……き、を、持ち歩くように、してくだ、さい……』

『…………ふぁ？』

王都の自室にて、極めて間抜けな聲を上げるロイ。

が、それ以降、なくとも１０秒は誰もなにも喋ることができず、沈黙が続く。

その気まずさに我慢できなくなったアリシアは――、

『き、聞こえました？』

『す、すみません……。聞き間違えた気がしますので、もう一度……』

『～～～～っっ！　難聴なんですか！？　で、です、っ、からぁ……、っっ、ご自分のを持ち歩くようにしてください！　それが難しいようでしたら、最低限、ミルクを！』

『真面目な話、察するに……サキュバス対策ですか？』

『コホン！　そ、そのとおりです。しかも、意外かもしれませんが、向こうには爵位を持っているサキュバスもおりますので』

『意外といいますか、驚天地レベルの事実なんですが……』

『これも真面目な話、サキュバスに限らず、魔の類の種族スキルは、戦爭を大局的に考えると非常に強力です。下種な価値観ではありますが、その反面、合理的でもあり、例として――、

跡継ぎに恵まれない上層部の軍人、貴族に男子を産んであげたり。

産んであげるのがの子なら、當主は従來の何倍も政略結婚を仕組めたり。

娼館で働けば、そこで篭った子供に、平均以上の食住を提供しても、結局は戦力か労働力として育てたり。

本當に最悪の場合、赤子を人実験に利用したり。

そして彼たちの方だって、種族スキルを利用して魔王軍部でり上がることも、爵位のあるなしにかかわらずお金を儲けることも可能です。

そもそも彼たち本人が、まぁ、行為にかなり積極的ですので、私個人的には認めたくありませんが、それで経済が一部、潤っているのも事実でしょう』