《NPC勇者〇〇はどうしても世界をDeBugしたい。みたい!?》第3話A 勇者はどうしても名乗りたくない。みたい?
ついさっきまで俺はこの大事なデータを危うく手放してしまう所だった。何という愚かな行為だろう。これはまさしく、『無限』という名の『可能』だというのに。溢れる笑顔を必死に我慢し、目的地まで足早にき出す。こんなの最早クエストなんて行ってる場合じゃないだろ!?だって俺にはコイツが付いている・・・
ポケットの中を取り出し、もう一度確認する。文字化けされた畫面を見て、もう一度笑みを噛み殺す。
『資金無限 有効』
「くぅぅ~~たまらんぜコイツはぁ~~!!まさに世界の全てを手にれたも同然!!バラの人生の幕開け!!レッツエンジョイサウタナライフッ!!だが、まずは・・・」
そう言って目的地の前に到著する。このデバッグ能力を使って先ずは最初にやらなければならない事がある。それは・・・
「回復だよ・・・人としての尊厳の、回復をね。」
そう言って冒険者管理ギルドとの共同経営酒場、『大魔道飯店』にっていった。
大魔道飯店の店レイアウトは、前作とほぼ一緒だった。勝手知ったる他人の家とはまさにこの事、スッと店にると常連さん用達のカウンター席に一人腰をかけた。他のカウンター席に座っている冒険者達がこちらを橫目でちらりちらりと見てくる。普段だったら一人でそんな事は絶対しない。が今、俺の背中には資金無限の何よりも心強い味方が後押ししてくれた。
「あ~らどうも新人冒険者さんんん???ついさっきのあとで、まさかこんな所で合うとは驚きね。まさかこんな短時間でクエストクリアしてきちゃったのかしらん??」
見るとそこには先程のエルフのが白いエプロンを巻いて立っていた。最初に見た時の可憐な可らしい表では無く、額に大きな管模様を浮かばせてのご挨拶だ。だが、今の俺には効かない。
「やぁ、また會ったね酒場の看板娘ちゃん?ごきげんよう。」
「初対面で人の事をそんな風に呼んでしくはないわね!私にはマリーナってちゃんとした名前があるのよ」
\テテーン/ NPC マリーナとのコミュが発生しました。ランクは、-1です
うお、まさかのこんな険悪ムードでコミュが解除されるとは。しかも-1。確か-3ぐらいで親の敵と同等とかそんなレベルだったような・・まぁ、ようは相當嫌われてるって事だな。
「これは失禮したマリーナ嬢、今度からは名前で呼ばせてもらうよ」
「そう?好きにしていいわ。で?新人冒険者さんの名前はなんなのかしら?」
名前と聞かれてあのふざけたプレイヤー名が頭を過ぎる。だが、なんの問題もない、その名を名乗らなければいいのだから。
「そうか、それでは名乗らせてもらおう、よく覚えておくと良い。なんせこれから先毎日この店で一番高い酒と料理を注文する男の名前だからなァ!!」
店にどよめきが走る。カウンターに座っているその他の常連達は、最早チラ見どころかガン見、ひどい奴なんて腰を浮かせて剣の塚に手をかけている者すら居る始末。あぁ、早くコイツらの驚く顔が見たい!!
「刮目し良ーく聞け皆の衆!俺こそがこのファステ、いや大陸一の大々富豪!その名も\\ビィィィィ//である!!」
・・ん?・・なんか今けたたましいブザー音が俺の名乗りを邪魔しなかったか?。まあいい、気のせいだ。コイツらの為にもう一度名乗ってやろう。
「いいか!俺は大々富豪\\ビィィィィ//で、あ・・\\ビィィィィ//・・んん?\\ビィィィィ//おい\\ビィィィィ//\\ビィィィィ//なんだこれ名前\\ビィィィィ//言えないぞ\\ビィィィィ//\\ビィィィィ//」
今名乗ろうとしたのは前作で使用していたアカウントによる登録されたプレイヤー名。その名前を言おうとする度、けたたましいブザー音がどこからともなく鳴り響き、名乗りを邪魔してくる。
\テテーン/  型MMORPGにおいて、他のアカウント名を偽裝する行為は、法律で止されています。ご注意ください。
親切に俺のメニューボードが、ブザーの原因を教えてくれた。GJ(グッジョブ)!でも、酒場の空気はそれどころじゃないぐらいにヒエッヒエッになっていた。こちらをみていた群衆からは小さい聲ながらもヤジが飛び始めている。
「・・・あなた、えーっと大富豪の新人冒険者さん?自分で名前覚えとけとか言いながら、まさか偽名を名乗ろうとしたの?」
「ちちがう!私は確かにホンモノの\\ビィィィィ//だ!いや、違う!信じてくれ!\\ビィィィィ//なんだ!ホントだ!」
マリーナからの視線は更に鋭く冷たいになっていく。弁明しようとすればするほどブザー音が俺の尊厳を削っていく。
「!!そうだ!本名だ!例え前のアカウント名が使えなくとも、本名なら今の俺にも名乗る権利がある!だから、ここはNPC如きに不本意ではあるが、俺の本名を名乗らせてもらおう。心して聞くが良い、俺の本名は\\ビィィィィ//だ!!
シーンと靜まり返る店。そこにまたしてもメニューボードからガイダンスが流れる。
\テテーン/  本ゲームのベータ版テストプレイでは、個人報保護法に則りプレイヤーの個人報を収集していません、本名、生年月日、IDに関わる発言ないし行、DMは送信されません。製品版をお楽しみ下さい。
へーそうなんだメニューボード君しらなかったーボクまたしても賢くなっちゃったよーナイスGJ!
「・・・\\ビィィィィ//・・ 」
「・・・\\ビィィィィ//・・ 」
「・・・\\ビィィィィ//・・ 」
\テテーン/ 現在その名前のプレイヤーデータは、このアカウントに存在しません。プレイヤー名の確認は、メニューボード上部よりご確認下さい。
へぇーそっかー適當な名前言ってもだめかー俺の名前ってメニューボードの上に書いてたのかーでもそれしってたよーメニューボード君ーしってたから名乗らなかったんだーGJGJ!!
かんッぜんに哀れみの目でマリーナがこちらを見ている。やめて!勇者の尊厳はもうゼロよ!!
「・・で、あなたの名前は??」
「~~~~~です」
「何?」
「~しゃ~~る~です・・・」
「だから何?ハッキリ言って聞こえない」
「・・ボクの名前は、勇者〇〇(まるまる)です」
一瞬の、靜寂。 ーまるでまたブルースクリーンに戻ったかのようなー
1秒、2秒と続き・・・
「「「ギャ~ッハッハッハ!!!」」」
まるで店の窓ガラスが割れて飛び散るのではないかというぐらいの、まさに大笑。今まで散々警戒していた常連客も、あちこちのテーブルに腰掛けていたパーティメンバーも腹をかかえ、機を叩き、涙を浮かべて笑っていた。
Aパート終了→
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