《NPC勇者〇〇はどうしても世界をDeBugしたい。みたい!?》第155話 sideA パーマーの悪寒
「ふぅ…さてと」
ゲーム、サウザンドオルタナティブ2からログアウトした蕗華。一息つくとメモ帳を取り出し、今日の予定を確認する。
「ウェンディは…今日の午後から出勤だし、確か今日でパーマーチーフの有給も終わりだったわね」
それまでにしでも自分のやるべき事を済ませようと、殘ったデバッグ作業を進めようとする。
しかし、あまりその手は進まなかった。ゲームでハックに言われた事が頭から離れない。
『ソラスタでの一件は、意図的に作為されたのではないか?』
まさにその通りだった。蕗華自もけれたくない事実を突き付けられ、たまらずあの場からリディ(蕗華)は逃げ出した。
でも、考えれば考える程に良くない方向へ辻褄が合って行く。
今朝はアンジェラに呼ばれてログインしたものの、極力ハックには顔を合わせたく無かったので足早にログアウトしていた蕗華。
自分はこのゲームを作っている側の人間だと言うのに、ゲームNPCにまともな回答すら出來ない。そんな自分と、自分達の置かれている狀況を歯く思ったからだ。
(人魚のストーリーがあった事自、開発の人しか知らないはず。だってアレは…計畫の段階でボツにしているからそもそも企畫として話は上がってない。)
それはつまり、不知火天馬が意図的に作為したと言う証明になってしまう。ただ、天馬は退職を見越してこのデータを作っていたのか、それとも元から隠しデータとしてイースターエッグ化させたかったのか。
(わからない……先輩は一何をする為にこのデータを?勇者○○というキャラデータでログインする事を前提で進めたとしか…)
「………ん〜〜あぁもう!!ぜんっぜん前に進まないっ!!…あっ」
考え事に夢中で、自分が大きな聲を出している事に気付いて小さくなる。
結論を急いでも何も出ない。なら、信頼出來る人達と話し合うしかない。
(パーマーチーフとウェンディ。あとは海外出張に行ってるアイザック部長が揃ったら本格的に話し合わなきゃね。)
問題を先延ばしにするのは好きでは無いが、今は仕方なかった。
コーヒーを1口飲み、気分を変えて作業を進める。
……が。
カタカタカタ…
「……ん?」
データ見直しをしようとした途端、パソコン畫面がフリーズする。急に作をけ付けなくなってしまった。
\ヴァン/
「ひゃっ!?」
エンジニアとしては聞きたく無いエラー音の後に、ポップアップが表示される。
「何よ何よ……って!またトラッカーボールかぁ!!」
それはシステム的なエラーでは無く、トラッカーボール(マウスの1種)のサポート切れの警告だった。
「何なのよビックリさせてもう!ほんっとコレさえ無ければ使いやすいのに!!」
配線を接続し直すと畫面上のポインターもくようになる。
「まったく……天馬先輩良くこんなの使ってたわね!」
そのトラッカーボールは、不知火天馬が自分のデスクに殘していっただ。天馬の退職を聞いた後に蕗華は殘された私の整理を任されたのだが、そのトラッカーボールだけはそのまま貰いけて自分で使っている。
さっさとそのポップアップを消して作業に移ろうとする蕗華だったが、ふと気になってよくよくその容を読んでみる。
「えーっと…サポート終了に付き最新のアップグレードが利用出來ない……まぁここはいいわね。で?契約更新すると……あー。」
容を確認すると、どうやら更新料を払ってアップグレードをけないと不合に対応出來ない云々と書かれていた。
(そう言えば…更新料ってどのくらいなのかしら?)
興味本意で更新ボタンを押してみると、驚きの値段が表示された。
「はぁ!?1年で256$!?たっか!!………あっ、ごめんなさい。失禮しました。」
先程よりももっと大きな聲を出してしまい、蕗華は周りの人に立ち上がって一言謝る。
(なんなのよ!確かに1000$近くするトラッカーボールだけど、何で年會費だけで256$もするのよコレ!!)
この面倒なポップアップが消せるなら更新料を払っても良いと思った蕗華だったが、あまりの値段にその気持ちも失せてしまった。
(こんな金額払うなら毎回ポップアップ消してた方が斷然良いわよ!まったく!!)
サッとそのポップアップを消して作業に戻る。とても殘念な事だが、結果としてはそのフラストレーションのおかげで作業に熱がったのも事実だった。
「やぁ〜〜久しぶりの有給なのに、こうモヤッとしたままじゃ休めないよなぁ〜」
パーマーチーフは強制的に有給消化を言われてしまい、休みたくないのにダラダラと休日を過ごしていた。
パーマーには古い家電製品を集めるという趣味があったのだが、こう毎日そればかりしていても飽きが來る。
気分を変えてし遠くの街のマーケットを見に來ていたのだが、どうしても集中出來ずに居た。
(テンマ……彼が居なくなってから本當に毎日がハードだよ。早く見つけて彼にこの愚癡をたっっくさん聞かせてやらないと気が済まないなぁ!ホントに!!)
そうは思いつつも、彼のポテンシャルに頼りっぱなしだった開発チームをそのままにしていたのはパーマーの落ち度であり、パーマーは自分の事を責めていたのだ。
(開発チームに戻って來いとは言わないから…せめて、君の元気な顔が見たいよ。)
何気なく手に取った70年代のビンテージ溢れる、オーブントースターに寫る自分の顔を見つめながら、ぼんやりと考え込んだ。
「お客さん、目が高いですねぇ〜それは社名が変わる2つ前のロゴがっていますので、かなりのレアですよ?」
「えっ!?……あ、あぁこれはどうも」
マーケットの店員に聲を掛けられて、パーマーは驚いた。危うくレアのトースターを落とす所だった。
「今日はどんなをお探しですか?」
「い、いや。特に」
いつもであれば、々とビンテージアイテムの知識について店員と話をするパーマーだったが、今日は考え事ばかりで何も思い付かなかった。
しどろもどろな態度のパーマーを見た店員も空気を読み、それ以上は話しかけて來なくなった。
すると今度は別のお客が來たので、その店員はそちらの方へセールスに行く。
「お客さん、見て下さいよコレ!中々のレアですよ。メーカーからのいわく付きって奴でしてね。もう市場には売ってないんですわ」
「………………。」
その姿を、何となくボーッと眺めていたパーマー。
ゾワァ……
「……っうぇ!!」ブルッ
突然、猛烈な寒気に襲われてパーマーはを震わせる。普段なら『特別なレア』を嗅ぎつけた時に、この様な事もある。
ただし、今回は違う。
猛烈に『嫌な気配』だった。
パーマーは恐る恐る、自分が何を嗅ぎつけたのか視界を探す。
(なんだ……なんの覚だった??)
得の知れない寒気、鳥。
その正を摑むべく、パーマーは違和をじるを探し……見つけた。
「こ、これ……これは?」タラッ
その見つけたを、冷や汗をかきながら店員に聞く。
「え?あぁお客さんもこちらが気になります?」
ここはビンテージ溢れる家電アイテムが勢揃いのショップだ。
なのに、この店に似つかわしくない、『ある』が一角に大量に置いてあった。
新品の、『電化製品』だった。
外箱…その製品の、化粧箱は初めて見た。だが、パーマーはそれが何か知っていた。何故なら、『発行された領収書』で、商品名を知っていたからだ。
そこには、天馬が退職する直前に壊した、『コーヒーバリスタ』と同じが大量に並んでいたのだ。
「これはですねぇ〜。初期不良と欠陥が見つかって企業が訴訟される前に製品を回収したっていわく付きの商品なんですよ。でも、もちろん使えますよ?ウチも1臺持ってるくらいです。でも……二度と世に出ない商品って、なんだかワクワクしますよね」
パーマーが聞かずとも、店員がその経緯についてペラペラと話してくれた。
「な!なぁ!!これが回収になったのって!!」
「えぇ?細かい日までは分かりませんが……ネットに載ってるんじゃ無いですか?」
「わ、わかった!!ありがとう!!助かったよ!!」ダッ
それを聞くと、パーマーは走り出す。とてつもない事の鱗片が見えて、冷や汗が止まらない。
(君は一何者なんだテンマ!!本當に軍の関係者なのか!?)
パーマーは考えた。
不知火天馬は何かに気付いて、あのコーヒーバリスタを壊したに違いない。そして、壊れたにも関わらずまた『同じ』機種のコーヒーバリスタが設置された。
『あのコーヒーバリスタには、何かある』
その考えに囚われたパーマーは、いても立っても居られずに職場へと直行した。
第155話 END
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