西暦ＡＤ二〇〇〇年代に人口増加、環境破壊に悩まされた人類は、ＡＤ二一〇〇年代にり、念願であった宇宙への進出を遂に果たした。

月、火星を始め、木星衛星群など、様々な天から資を供給し始め、地球とその周辺に設置されたスペースコロニー群はその有り余る資を使い、繁栄をしていった。

ＡＤ二二〇〇年代初頭、資を供給し続ける木星や土星などの外星の衛星群にも次々と植民都市が建設され、その発言力を徐々に増していく。

ＡＤ二二三五年、木星衛星群を中心とした外星連合と地球－火星連合の間で紛爭が発した。

當初、武力に劣る外星連合側は経済封鎖による経済戦爭を仕掛けたが、地球－火星連合は直接的な解決手段、つまり武力による解決を選択した。その結果、紛爭開始から僅か三年、外星連合側の敗北という結果をもって史上初の宇宙規模での戦は終了した。

しかし、この戦には別の側面があった。それは急速な科學技の発展を促したことだ。

人類は超速航行原理と実用的な対消滅システムを、僅か五十年という短期間で実用化した。そして、戦後の復興特需により、太系外を見據えるようになる。

超速航行はＦＴＬドライブシステム（ＦＴＬＤ）と呼ばれ、単にジャンプ航行と呼ばれることもある。ＦＴＬＤは星系にあるジャンプポイントＪＰを用いて隣接する星系に移する超速の航行手段であり、最大移距離十パーセク（約三十二．六年）を僅か十日間で移できる畫期的な移手段であった。

ＪＰは各星系の外縁部にあるため、數日間に及ぶ星系亜速航行が必要となるが、太系に縛り付けられていた人類にとっては、何の障害にもならなかった。

ＡＤ二三〇〇年代初頭、アルファケンタウリ星系に進出を開始する。

人類は太系外という“フロンティア”を手にれ、ゴールドラッシュとも言える狂騒をもって、シリウス星系などオリオン腕の各星系に次々と進出していった。

ＡＤ二五〇〇年、五十の星系に進出した人類は統合政として、太系連合を主星系とした銀河連邦（ＵＳＧ）を設立した。ＡＤ二五〇一年をもって西暦（ＡＤ）から宇宙暦（ＳＥ：Space Era）に切替え、人類の新たな歴史が刻まれることになった。

その後も植民星系が一定の基準を満足するごとに參加星系が増加し、ＳＥ三〇〇年頃には加盟星系が百を超え、総人口は一千億人を超えていた。

ＳＥ七〇〇年頃、ＵＳＧの主である太系連合に対立する形でアスタルト星系において、獨立運が発。次々と追従する星系が現れ、第一次銀河と呼ばれる大が発した。

百年もの歳月をかけ、アスタルト星系を主とした反太系連合諸國の勝利を持って終結する。

アスタルト星系の首席執政アクラム・ハーディにより、後に第一帝國と呼ばれる銀河帝國（ＧＥ：Galactic Empire）が建國された。

年號もＳＥ八〇一年に改められ、帝國暦ＧＣ（GE Common Era）元年とされた（以下は混を防ぐため、ＳＥも併記する）。

しかし、この百年に及ぶは人類に深い傷跡を殘すことになる。

一千億を超えていた総人口は僅か三百億人程度にまで減し、多くの星系が破壊された。しかし、第一帝國建國當初は戦からの復興を目指した政策が多く、科學技の発展とオリオン腕の開拓に力が注がれた。

ＧＣ五〇〇年（ＳＥ一三〇〇年）頃までは復興と拡大の世紀が続き、ＧＣ五〇八年（ＳＥ一三〇八年）に超速航行の革命的な発明、ハイパーゲートシステム（ＨＧＳ）が実用化された。

従來の超速航行機関ＦＴＬＤは理論上、最大移距離十パーセク（三十二・六年）が限界であったが、ＨＧＳは距離にしてＦＴＬＤの十數倍、移時間では最大數百倍の効率で移できる畫期的なシステムであった。

ＨＧＳは移元と移先にゲートの設置が必要であったが、一度設置されれば、百パーセク（三百二十六年）以上の長距離移も可能であった。

更に超空間の移速度も十倍程度になることから、ＨＧＳネットワークが一気に形されていった。

ＧＣ一一〇〇年（ＳＥ一九〇〇年）頃、人類はオリオン腕から四千年離れたペルセウス腕に進出を果たした。

その頃、人類の総人口は二千億人に達し、銀河連邦の最盛期を凌駕していた。

しかし、ペルセウス腕進出や無理なＨＧＳネットワーク建設などで、一千年以上にわたって繁栄した第一帝國にもりが見え、揺ぎ無いと思われていた支配も徐々に緩んでいく。

ＧＣ一二〇〇年代（ＳＥ二〇〇〇年代）にると、オリオン腕側でが発する。

皇帝アミールⅦ世が暗殺され、各星系が群雄割拠する戦國時代に突した。二百年にわたる戦國時代により、ＨＧＳは寸斷され、ＨＧＳ技の維持が困難になった。

ＧＣ一四〇〇年（ＳＥ二二〇〇年）頃、ようやくタラニス星系の軍人リシャール・デュムランがオリオン腕を統一し、のちに第二帝國と呼ばれる新銀河帝國ＮＧＥが設立された。

第二帝國は帝政を敷くものの各星系が藩王國となっていたため、皇帝の権威は數十年で衰退した。

第二帝國は常に藩王國の反に悩まされ、オリオン腕での勢力を保つことに腐心する狀態が數世紀にわたり続いた。

一方、ペルセウス腕では進出から二世紀程度と星の地球化（テラフォーミング化）が終わったばかりの狀態で、オリオン腕から切り離されることになった。

更に悪いことにＨＧＳネットワークが寸斷されたことから、ペルセウス腕でもシステムが維持できなくなり、藩王國とは直接関わりのなかったペルセウス腕でも數百パーセク離れた星系同士の連絡が困難になっていった。

このため、多くの星がテラフォーミング化の途中で放棄され、また、移民がった星も多くが滅んでいた。

ＳＥ二五〇〇年頃、何とか命脈を保っていた第二帝國が遂に崩壊した。そして、オリオン腕では再び戦の世となった。

長期に亙る戦の末、ＳＥ三〇〇〇年頃、再び復権を果たした太系連合により、第二銀河連邦ＵＳＧⅡ（注）が設立された。しかし、長引く戦のため、総人口は最盛期の十分の一にも満たない二百億人になっていた。

ＵＳＧⅡはＨＧＳ技の復活を始め、様々な科學分野の復活を目指した。だが、兵以外の技レベルは西暦ＡＤを用いていた頃にまで低下しており、特に基礎理論に関する分野は壊滅的な打撃をけていたため、寸斷されたＨＧＳネットワークが元に戻ることはなかった。

注：當時は銀河連邦の正統な後継ということで“第二”とは付けていなかったが、混を防ぐため、第二銀河連邦＝ＵＳＧⅡと表記した

ＵＳＧⅡ、特に太系連合は人類の種としての保存を目指すため、地球に殘っていた各民族を移民団として、ペルセウス腕に送り出した。

ＨＧＳネットワークが不完全な狀態であり、オリオン腕からペルセウス碗への移は困難を極めたが、ＳＥ三三〇〇年頃、數十箇所の星系に移民たちは付いていった。

ＳＥ三五〇〇年頃、ＨＧＳが機能しないＵＳＧⅡは統合政としての機能を失い、遂にはオリオン腕で分裂し崩壊していった。

ＵＳＧⅡ崩壊から一千年、未だ人類を統合する政は現れていない。そして、僅かに殘っていたオリオン腕とペルセウス腕の連絡は長きに渡り途絶えたままとなった。

ＳＥ四五〇〇年代のペルセウス腕外縁部がこの語の舞臺である。