そんな訳で、學園都市のとある河川敷で『超電磁砲レールガン』坂琴と、『絶対支配ドミネーター』前田智也がバトることになった。

お互いがお互いに鋭い視線を向ける。そしてーーー

「それじゃ遠慮なく、行かせてもらうわよ!!」

昨日は上手く思い出せなかったが、琴は絶対支配ドミネーターに関しては噂程度ではあるが聞いた事があった。前田の話で完全に思い出した彼は、

（エネルギーは、あらゆる現象の幹をすもの。そんなのを自在にれる相手に出し惜しみなんて出來ない!!）

思い切り『雷撃らいげきの槍やり』を放つ。恐ろしい速度で飛來する高圧電流を目の當たりにした前田がとった行はーーー

ビンタをするように軽く右手を振って、雷撃の槍を叩いた。それだけ。そして、それだけで、

雷撃の槍は消えた。

「な......」

初撃から防がれた。バカバカしい程にあっさりと。もう一度、雷撃の槍を放つ。消される。もう一度。消される。もう一度ーーー。しかし結果は同じ。右手を振るうだけで、雷撃の槍は消される。まるでどこぞのツンツン頭の年のようである。

「なんで......どうやって......」

黒子が呟いた。するお姉様の実力をよく知っている彼は、目の前の景を信じられずにいた。その疑問に対する答えはすぐに返ってきた。

「別に、坂さんが撃ってくるのと同じ電圧の電流を使って中和してるだけだけど。中和した電気エネルギーは、全部俺のの中に蓄積してあるよ」

種を明かせば簡単な事だった。だが同じ電圧という事は、琴の攻撃をけ、電圧を測定してから自も放電してる事になる。つまり、一度攻撃を喰らっているのだ。琴の放つ電撃の最高電圧は10億ボルト。それを喰らってなお平然としているのだ。相手の底知れなさに琴は震えそうになる。それを押し退けて、

「なら、これならどう!?」

再び電撃を放つ。ただし前田に向けてではない。地面に向けてだ。途端、ゾゾゾゾゾゾゾゾッ!! という音が響き、彼の周辺に黒い霧のようなものが出現する。磁力で砂鉄をり、剣を生み出しているのだ。漆黒の刃が蛇のようにきながら、前田に襲いかかる。しかし前田がとった行は、またしてもシンプルだった。自分を叩き斬ろうと迫りくる砂鉄の剣にれる。瞬間、琴の、黒子の、初春の、そして佐天の視界に赤が飛び散った。しかしそれは、前田の鮮などではなく、

前田が熱エネルギーをって生み出した、炎の赤。深紅の炎が、琴の振るう漆黒の剣の包み込む。前田以外の、その場にいる全員が思った。

（（（（なんのために......？））））

その答えもまた、すぐに返ってきた。

砂鉄の剣が一瞬にして崩れ去るという形で。

「「えぇっ!?」」

佐天と初春が驚愕の聲を上げる。しかし、普通の中學校と違い、名門である常盤臺中學の生徒である琴と黒子は、今の現象の原理を即座に看破した。即ち、

「酸化による砂鉄の磁の喪失......ですわね」

「砂鉄を炎で酸化させて酸化鉄に変化させ、砂鉄が磁力に反応しないようにしたのね」

2人のお嬢様の解答に前田は、

「ご名答ー。流石さすがは名門中學の生徒、理解が速すぎてちょっと怖いわー」

のんびりと返した。さてと、と呟いた前田はこう言った。

「相手は超能力者レベル5の第3位。本気マジでかからないと、殺やられるからなー」

すーはー、すーはー、と深呼吸をする。そして次の瞬間、琴たちは再び驚愕に襲われた。

目の前で黒髪の年の全が、薄く青いを放ち出したのだ。

（何......？ なんなの......？）

もう聲も出ない程に驚き、戸う琴たち。対して前田は、一言。

「じゃあ、行くぜ」

即座に構え直す琴。相手がどう來ても反応出來るように、全神経を限界まで尖らせる。そんな彼を嘲笑あざわらうかのようにーーー

ピシュンッ、と。

まるでス〇ーウォーズか何かでビームライフル的なものを発砲したかのような音が響いた。と、琴たちが認識した時には既に、常盤臺中學のエースの目の前には、10メートル強は離れていたはずの前田がいた。慌ててを反らす琴の眼前を、風を切り裂く音さえも置き去りにして、前田のサマーソルトキックが通過する。それから數瞬遅れて、突風が琴を襲う。全力で踏ん張って、なんとか倒れずに済んだものの、肩で息をしながら琴は混していた。

（は、疾はやすぎる......なんて、化けじみた機力......）

離れた場所から見ている黒子たちも同じ気持ちだった。そんな彼たちの疑問に、前田は答える。

「『全フル加速アクセル』。で常に運エネルギーを製し続け、同時にそれを全に巡らせる。この循環によって、運能力を半ば強引に底上げする、俺獨自オリジナルの技だよ。まぁ、今回は一から運エネルギー製つくった訳じゃなくて、一部はさっき中和した、アンタの電気エネルギーを利用させてもらったけど」

そして、前田はまたきだす。再び構える琴だが、前田のき一つ一つの速度が凄まじい。彼の姿を認識した瞬間にはもう、背後に回られている。磁力で砂鉄を集めて防しても、炎で無力化されるだろう。かと言って、電撃での防は中和・吸収で逆に利用されるだろう。打つ手なしだ。詰んだーーー

「ッ訳ないでしょうが、ナメるなァァァァああああああああああああああああああああああああああ!!!!!!」

守りが効かないなら、攻めの一択。

琴の短い制服スカートの下で、ゲームセンターのコインが大量に舞う。直後、

ゴッッッッッ!!!!!! という音が連続して響き、超能力者レベル5第3位のの代名詞、『超電磁砲レールガン』が高速で連される。全フル加速アクセルの圧倒的な機力を発揮しつつもギリギリでの回避を強いられた前田は、顔の真橫を音速の3倍以上の速度でゲーセンのコイン圧倒的破壊力が通過した瞬間に戦慄した。

（これが超能力者レベル5の本気か......コワイコワイ）

前田のの青いが消えた。全フル加速アクセルは強力だが負擔も大きい。膨大な量のエネルギーを消費して、無理矢理そのをかしているため、1分の制限時間タイムリミットと、3分の休憩時間インターバルがあるのだ。

しかし、彼は薄く笑っていた。自分の能力をフルに使って、本気で戦える相手に會えたことを喜ぶように。

「ねー、坂さんさー」

彼は、眼前のに向けて話す。

「機力を強化する方法だけどさ......全フル加速アクセルだけじゃないんだよね」

そして直後。

ゴゥッッッッッッッ!!!!! と。

突如至近距離で吹き荒れた烈風。その尋常ではない風圧によって、坂琴という1人のの華奢なは、吹き飛ばされた。