《とある素人の完全駄作》6話 お宅訪問
とある土曜日の午前10時頃。坂琴みさかみこと、白井黒子しらいくろこ、初春飾利ういはるかざり、佐天涙子さてんるいこの4人は、ある場所へ遊びに行くために歩いていた。だが、遊びに行くと言ってもショッピングとかではない。ではどこへ行くのかと言うとーーー
「佐天さんは近所だから、ほんの數十秒で著きますよねー、ここ」
「えー? 初春そんなに歩くの、ていうか運嫌いだっけ?」
「違いますよ!! 近いですねってだけです!!」
「あはは、ごめんごめん」
「でも初春の寮からも大して離れてないでしょう。わたくしたちは學び舎の園から來たんですから、もっと遠いですわよ?」
「......黒子、アンタ思いっ切り空間移テレポート使ってここまで來たの棚に上げてるわよね?それに便乗びんじょうした私に言えた事じゃないけど」
「お、お姉様、それを今言ってしまっては......」
「ま、まぁいいじゃないですか! せっかく智也ともやの部屋に遊びに行くんですから!」
そう、彼たちは友人である前田まえだ智也の部屋へ遊びに行くところなのだ。ただ、佐天の部屋がある寮棟と前田の部屋がある寮棟はお隣なので、めっちゃすぐに著く。
「んじゃ、押しますねー」
と言って、インターホンを勢い良く押す佐天。すると、
『んぁーい』
前田の聲が聞こえる。し遅れて鍵が開く音がする。ドアが開く。そしてーーー
「おー、いらっしゃーい」
「「「「......、」」」」
子たちは唖然とした。
やる気のない聲で出迎えた前田の服裝は、これまたやる気のないものだった。白い無地のTシャツにグレーの薄手のパーカーを肘まで腕まくりして羽織はおり、その下は濃紺のステテコ。頭の上にはワイヤレスヘッドホン。いかにもインドア系といった格好である。
最初に口開いたのは琴だった。
「......智也君。それ、パジャマ? もしかして寢起き?」
「いや、いつもこんなもん。とりあえずりなよ。外暑いし」
促されるまま中にる。
「「「「お邪魔しまーす」」」」
そして、子たちが見たのはーーー
比較的片付いた部屋だった。
「あ......れ?」
「......佐天さんよ、その「あれ?」は何?」
「いやぁ、智也の格好からして、ちょっと部屋散らかってたりするのかなーって......」
「ここ來るって聞かされた時に言ったろ? 何もないって。散らかるほどがないの」
ってすぐに臺所と大きめのテーブル、食棚などがあるスペースに出る。橫に曲がれば室と浴室、トイレがある。曲がらずに奧へ行くとベッドなどがある部屋。基本的に間取りは佐天の部屋と同じだった。ただ、奧の部屋がシンプルすぎた。って右にベッド、最奧の窓の前に機、左側に棚、部屋の真ん中にミニテーブル。それだけ。ベッドの下に裝ケースがあるのが見えるが、サイズが小さい。棚の上にあるはと言えば、スマホとヘッドホンのACアダプタとテレビ、Blu-rayレコーダー。機の上もデスクトップPCだけ。ミニテーブルの上には何も無い。臺所のテーブルの上にも何も無い。一言で言えば、殺風景の一歩手前である。
「確かに、これだけがなければ散らかす方が難しいですわね」
納得したように言う黒子。その言葉に琴たち3人は大きく頷うなずく。
そこに臺所の方から前田の聲がかかる。
「で、みんな何飲む? コーヒーと麥茶とコーラしかないけど。あ、ヤシの実サイダー5つあるわ」
「どれどれ~。って、ビールあるじゃん!! ダメでしょこれ!!」
「あー、それ擔任に買ってきてもらったやつ。これをに使って揚げ作るとベタつかない軽い食に仕上がるんだよ。アルコールは水より早く揮発きはつするから」
「あ、そうなんだ。あたしも今度やってみよっかな」
そんな謎の知識を前田が披したところで、琴がヤシの実サイダーの缶を、黒子と初春が麥茶のコップを、佐天がコーラのコップを、前田がアイスコーヒー(ブラック)のコップを持って座った。佐天が心したように言う。
「智也ってブラックコーヒー飲めるんだ。中1で大人の味に目覚めたの?」
「いやぁ、3週間くらい前の夜中に麥茶飲もうとして、寢ぼけて間違えてブラックでコーヒー飲んじゃってさ。それ以來ミルクれるの面倒臭くなって。あの後寢れなくて大変だったなー」
「......ごめん、どうリアクションすればいいか分かんないや......」
佐天の言葉に琴たちは再び大きく頷く。そして佐天が、前田の機の斗ひきだしを開ける。前田が一言。
「......佐天さん何してんの?」
「いやー、友達の家に來たら定番のガサれかなーって!」
「......黒子、初春さん。私今スッゴいデジャブったんだけど」
「わたくしもですわ......」
「私もです......」
そう、常盤臺中學子寮の琴と黒子の部屋を訪れた時も同じじだったのだ。琴たちの気持ちが1つになる。
(佐天さん、揺るがない......!)
そして引き出しの中を覗のぞいた佐天は、そこで固まった。
何もってなかったのだ。
謎に冷たい風が吹いた気がして無理矢理に口を開く琴。
「と、ところでさ! 前に戦った時思ったけど、智也君って凄いよね! 演算能力も高いし、戦闘時の頭の回転も速い。戦闘力だけ見ても超能力者レベル5クラスだし、それにあの風の翼!」
頑張って話題を強引に作った琴に乗っかる初春。
「確かに! あの風の翼が出た時の前田さん、ギリシャ神話のイカロスみたいでしたよ!」
「んー、まぁ確かに俺泳ぐの苦手だけどさー」
「い、いや。そこじゃなくてですね......」
困する初春を見て、笑いが生まれる。その後も、前田と佐天が晝食を作ったり、前田と初春がMMOのPvPモードで対戦をしたりと、楽しい時間が過ぎた。夕方、琴たちを見送った前田は思った。
(うーむ、友達とはいいものだな......)
その日の夜。午後8時をし過ぎた頃。前田は冷蔵庫の中を見て、
(あ、何もねえや。佐天さんらに飲み出しすぎちまったかなー。いや、元々切らしてたか)
ということで、コンビニに買いに行った。夏の夜道を1人歩く。とある曲がり角にさしかかる直前。何故かバナナの皮が落ちていた。當然、それを避けようとする前田ーーーに、突風が襲いかかる。バランスを崩し、結局バナナを踏む。
「おあああああああっ!?」
前のめりに転ぶーーー前田の前に、人が現れる。その人に前田が頭突きをした瞬間。
前田のが、踵かかとを軸に、後ろ向きに倒れた。後頭部を地面にゴンッッ!!!!
「痛いっ......」
痛すぎて息が詰まる前田。ジタバタする余裕もない。そんな彼の頭上から、聲がかかる。
「ンだァ、オマエ?」
「ぇ......?」
顔を上げた前田が見たのは
白い髪と赤い瞳の怪。あらゆる向きベクトルをる、學園都市最強の超能力者レベル5。『一方通行アクセラレータ』だったーーー
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