《極寒の地で拠點作り》ギルドホーム新設
 
「うーん……ねぇ、ユズは何処がいい?」
今、丁度ギルドホーム新設の手続きをしている最中なんだけど、もうこのゲームのサービス開始から既に二ヶ月経っているせいか第二の拠點となる中心にある街周辺はとっくに埋まっている。街から離れるごとに段々ギルドホームの數は減っていく。
「ねぇハープ。この、森とか山とかにギルドホームが集しているのってどうして?」
  確かに減ってはいくんだけど、たまに森や山の周辺に異常な程ギルドホームが集まっているのが気になる所だった。
「ああ、そこはね。多分、狩場とか素材集めに良い場所だと思う」
  でも流石にここまで集まったら初心者は恐らく行しにくいから止めた方がいいという。単に狩場が占拠されてるだけならまだマシで、そこにギルドホームを置くだけで稅を徴収される所もあるらしいし。
「でもほんとに置く場所無いね。置ける所となっても平地で敵からもプレイヤーからも目立ちやすいから」
  平地に設置するのはデメリットの方が大きい、前に知ったけど略奪行為が可能だからそういうプレイヤーが乗り込んでくることがある様で、メリットといえば歩きやすいくらいで、人気が無い。ただ、それは街周辺の平地の話であって、街から離れて更に離れた所の辺境なんかにはギルドホームは疎らになってわざわざ襲いに來るなんてことは無いに等しいらしい。
「どうする?ユズが、ちょっと離れた所でもいいよって言うならこの小さな山の麓とかどうかと思うんだけど」
  そう言って、ハープが地図に指を差した先には、街から見て南側にある小高い丘の近くで、特に何も特徴が無いのかギルドホームは他の所に比べて非常にない。対プレイヤーへは比較的安心出來た。
  折角ハープが勧めてくれたんだけど、私にはし気になっている場所があった。そこからハープは付け足して、
「あ、でも離れていてもギルドホームまでは『転移の石』って呼ばれてるアイテムで片道だけど跳べるみたいだから街とかからの帰り道は問題無いと思う」
  何その便利な石。ギルドホーム新設時に人數分貰えるって言うけど消費アイテムでも無いみたいだし、片道だけって言うのを除けばとても楽だ。
「でもなぁ、どうせなら周りに誰も置いてない所にしたいんだよね……さっきから気になってるんだけどここなんかどうかなって」
  私は、街の北側にある川を挾んだその先、見た所緑がなく山の様な障害も無い荒野っぽい所が気になっていた。何より不思議なのは、サービス開始から二ヶ月になりかける所だというのにその北側一面に広がる荒野には一つもギルドホームが設置されていないことだった。まあ大の理由は障害が無い、だとは思うけどまさかそれだけの理由だとは思えない。
「障害が無いから目立ちやすいとか、それだけの理由じゃないと思うんだよね」
「強い敵が出現するとか?」
「そうかもしれない。一応付の人に聞いてみようよ」
  私は付の人に聞いてみることにした。
付と言ってもやっぱりNPCで、それでもさっきから新規プレイヤーの質問を基本的に何でも答えているのには驚かされた。今までNPCって言うのは決まりきったけ答えしか出來ないものだと思ってたから。
「あの、すみません」
「はい、何でしょうか?」
  その付のNPCの人は微笑みながら答えた。
「この北側一面の荒野って何かあるんですか?ギルドホームもほとんど置かれていない様ですし……」
「ああ、そちらでしたら確か……『とても寒い』からだったと思います」
「と、いいますと?」
「ご存知の通りこちらのコンテンツ、『Guild Strategy Online』通稱:GSOは覚に関しては最先端の技を取りれ、高い評価を得ています」
  へぇ、知らなかった。ハープも知らなかった様でうんうん、と頷いている。
「それ故に暑さ寒さへの覚が現実のそれと限りなく近いとなっております。ですので皆様、ちゃんとした対策が取れないはそう言った所へはわざわざギルドホームを設置することは無い傾向にある様です」
  更に聞けば、その土地は現実世界で言う所の冬の季節になると大雪が降って視界が悪くなるらしくって、勿論積もるからそんな所にギルドホームなんか置いたらけなくなるだろうって言うのがプレイヤー達の考えみたい。
「ああ、それから……未だ踏みれられていない土地、要するに未開の地ですね。これ以上はあまり多くは言えませんが、そんな土地がそちらには數多く存在します。噂によればかなり強い敵が出現する様ですので出向く際はしっかり準備をした上での出発を推奨します」
「ありがとうございました」
  付の人が付け足す様に言った言葉を聞いてから謝の言葉を述べて、元の場所に戻った。
  どうしようかな、というか私の気持ちは既に決まっていた。
「あーもう、どうする?やっぱりさっきの山の麓に…………って、どうしたのユズ?そんなにニコニコしちゃって」
「あ、顔に出てた?あはは」
  おっといけないいけない、ワクワクしているのが顔に出てた。そんな様子のおかしい私を見て怪訝な表になったと思ったら、一瞬何かを察した様な顔になってまた元に戻った。
「え、まさかユズさん。件の荒野にギルドホームを建てよう!…………なんて言わないよね?」
「ふっふっふ、流石私の親友であり馴染!やっぱり分かってるね!」
  すると今度はし驚いた表になり、次に呆れた表になる。
「ユズ。あの付の人の話聞いてた?とっても寒い気候だって言ってたじゃん!人もあまり寄り付かないって言うし!」
「だからこそだよ!未開の土地を切り開くことで他の人がまだ見つけられてない新しい発見があるかもだし」
「いやいやいや!ユズはそんな冒険心溢れる年みたいなこと普段言わないでしょ!」
「大丈夫大丈夫。まあ、何とかなるって」
「出た、ユズの口癖。そう言って何とかなったのってどれくらいあったっけ?」
  うっ、それを言われると言い返せない。私は微妙な表をしながら、
「……えっと、だいたい五分五分?」
「私のフォローを抜いたら?」
「……ほとんど無いです、はい」
「なら尚更」
「いやでも、今回はきっとなんとかなるから!」
  こんな調子で話し合うこと五分。それで何だかんだでハープが折れてくれて、
「はぁ……まあ確かにこのゲーム押し付けた自覚はあるし、今回の所は譲るよ」
「あ、ありがとう!」
「こっちも普段々ユズのこと振り回しているからね。さっ、設置場所も決まったことだし申請しよ!」
「うん!」
「さあ、やるからにはとことんやるよ!」
  そして、今度は私がハープに引っ張られてカウンターに向かったのだった。
◇北の荒野◇
「あー……さ、寒い……」
  私達は北の荒野の川の近くにギルドホーム新設を申請。そして早速、転移の石でその新設したギルドホームの下へ移……したは良いものの予想以上に寒い。その上たまに強い風が吹いて遊牧民のテントの様な、Lv.1のギルドホームが吹き飛ばされそうになる。ここを選んだ私が言うのもなんだけど、大丈夫かなぁ。
「帰ってきたら、ギルドホームが無くなってましたなんて灑落にならないよ……」
「そういえば、ギルドホームのレベルってある特定の素材を集めれば上がるんだっけ?」
「そうそう。私達はまだLv.1だから簡単な素材でいいんだけどね」
  申請をする時、付の人が言っていた。
  ギルドホームは『ツリー』と呼ばれる、系統ごとに解放していくシステムで多種多様なギルドホームを作ることが出來ると。次のLv.2から分岐していく様で、例えば、裝飾中心の系統があったり防衛中心の系統があったりする。また、防衛中心の中でも武の種類と同じくらい種類が分かれていて、トラップ中心やら理的な攻撃中心やら……言っていったらキリがない。とりあえず、それくらいいろんなことが出來ますよってことだ。
「それでハープ、その素材って?」
「えーっとね……まず」
  ハープが言った素材はこんなじ。さっきも言ったけど、Lv.2から分岐するから系統の選択の必要はまだ無い。
Lv.2ギルドホームに必要な素材
  〔窟うさぎの角×10〕
  〔スピードイーグルの羽×40〕
  〔モグモグラのツメ×25〕
以上が必要な素材らしい。
「本當にこんなので作れるの?」
「まあ作れるって言うんだから作れるんだと思うけど」
  何故その素材なのかは分からないけどそれで出來るって言うならやるしかない。
「それでその素材は何処で採れるの?」
「ああ、丁度そこの山で採れるんだってさ」
  ハープが指差した先の山はここからし進んだ所にある。うーん、どうしようか。
「どうする?ハープ」
  私達が悩む理由は目の前の川にある。
  迂回するとなると、ここからでは蛇行して分かりにくいけど川幅が狹くなっているあの先の先にあるカーブからしかなくなる。対して、このまま思い切って川を渡っていけばし歩くだけで目的の山に著く。
  そんなに深くないから普通なら川を渡って行くんだけど問題はそこじゃなくて、
「どうするって言われてもねぇ…………行くっきゃ無いでしょ!」
「え!?……あ!ハープ!」
予想外な答えに驚いてしまった。ハープ、大丈夫かなぁ。
「大丈夫大丈夫!」
そう言って思い切り川を橫切って渡ろうとして川にったその時、
「ほら、ユズもおいでよ!そんなに深くないし、問題無…………」
  ハープの顔が徐々に直していく。あぁ、やっぱりそうか。
「冷たぁ!」
  やっぱり冷たかったみたい、そりゃそうだ。こんなに寒いんだから水だって冷たくなる。問題って言うのはこういうことだ。
  聲を裏返しながらばしゃばしゃとこちらに戻ってきて腕を付き座り込むハープ、なんて哀れな。面倒臭がりな格だからなぁ。そんなことを考えていると、
「やめて!そんな、『何やってるの、馬鹿なの?』みたいな目で見ないで!」
「そんな目で見てないよ!」
「冗談だよ、冗談……いやぁ、ここで面倒臭がりが祟るとは」
  からかってきた。
  超冷水に膝下まで浸かった狀況でも私をからかう元気があるのはやっぱり流石だと思う。
「ふう……さてと」
ゆらりと立ち上がったハープがこちらを見て、
「迂回しますか」
と、し疲れた目でそう私に言った。大丈夫かなぁ?
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