《極寒の地で拠點作り》ユニークスキル その一
「私、ハープです。よろしくお願いします」
「あっ、私はユズです」
「ええ、よろしく」
私達も自己紹介をする。
「ここで話すのも何だろうから場所を移しましょうか……ねぇ、ブラスト?私、この子達としお話してくるから先にギルドホームに戻ってて!」
シェーカさんがし大きな聲で言う。
一応、私達帰る所だったんだけどなぁ……
まあどちらにしろ暇だし、
「暇だし、別にいいよね?」
と、ハープも私に確認してくる辺り、別に問題は無い様だ。まだプレイ開始二日目の私達が先輩プレイヤーに話を聞くのは滅多に無いかもしれないし、役に立つことがあるかもしれない。
「あっ!待て、俺も連れてけ!」
ブラストさんはと言うと、今度は焼き鳥の様なを両手に持ち、次々にそれらが口の中に吸い込まれていく。その度に観衆から「おおっ!」という歓聲が湧き上がる。
「さっ、行きましょ?あの人は別に置いてっていいから」
そう言ってシェーカさんは私達を急かす様に背中を押してくる。正直、私はブラストさんが苦手なので私もそれに乗って進む。ハープも私の橫を歩いている。つまりそういうことだ。
最後にブラストさんが何かぶ様な聲が聞こえたけど、歓聲に呑み込まれて何を言っているかは聞こえなかった。
「うん、この辺でいいかしらね」
噴水のある広場にやってきた私達は、その辺にある適當なベンチに、シェーカさん、ハープ、私の順で腰掛ける。
「あ、そうそう。さっき、付き添いって言ったけどあの人とは、《騒ノ會》って言うギルドのメンバーなの……と言ってもあの人がそのリーダーなんだけど」
ほら、ここら辺よ……と地図を開いて指を差す。
東の方の山の麓辺りの様で、その辺りには確かギルドが集していたのを覚えている。
「えっ?こんな會ったばかりの人間に……」
「いいのよ。貴方達は信用出來そうだし……それに襲撃は割と慣れている方だしね?」
と、何かシェーカさんが疲れ気味に言う
やっぱり聞いた通り激戦區なんだ。私達は彼処に置いて正解だったかも。気候的にも街からの遠さでもかなり失敗してるけど。
「良かったら今度、私達のギルドホームに來ない?……あ、別に勧してる訳じゃないのよ?」
「えっ!?」
更にハープが驚く。
まあ、それもそうだ。出會って時間の淺い、會ったばかり人間に場所を教えるだけで無く、招待までしてしまうのだから。そもそも赤の他人を中にれると言う行為が普通ではありえないことらしい。
「それで、貴方達は……まあ、あの人があの辺であったということはその近くなんでしょうけど、まさかあの寒くて仕方無い荒野には置いてないわよね?」
うっ、當てられた。寒くて仕方無い荒野って言うのは多分、私達のギルドホームの場所だ。
私とハープが微妙な顔をしていると、何やらシェーカさんも察したらしく、
「あっ」
「つまりそういうことです……」
「あはは……まさかあの荒野に好んでわざわざ置く人がいたとは、驚きだわ」
まあ私達の設置機は襲撃がないだろう、から來てるからそう言われても仕方無い。
「私達、まだ調べてないんですけどあの荒野の更に奧って何があるんですか?」
「何も無いわよ?何処まで行っても低木が立って巖が転がってるだけ……そういう意味でわざわざ、ね?」
めぼしいが無い所か、敵ともエンカウントしなかったらしい。なるほど、ギルドホームがないだけなら溫暖な南の丘とかでも良かった訳だ。
私はし失敗した気分になるけど、彼処に置かなかったらこんな良い裝備は得られなかったって考えれば正解だったかな、と思える。
と、ここで私はとある疑問を思い出した。
「あの、最初にブラストさんと會った時に自己紹介で、『走のブラスト』って言ってたんですけど『走』って何のことですか?」
と、ここで私は、あちゃーと顔に手を當てているシェーカさんに気づく。何かあったんだろうか。
「……うん、まあ話してもいいわよね。貴方達はユニークスキル、裝備固有スキルとも言うわね、そういう存在のことは知ってるかしら?」
そう、シェーカさんが言った所で私とハープは顔を見合わせる。裝備固有スキル……それは神様がくれたこの裝備にもついていた特殊なスキルのことだ。
シェーカさんは話を続ける。
「ユニークシリーズって呼ばれてる、初回ダンジョン攻略の時のみとかに貰える世界に一つだけの裝備一式が存在するんだけど、そのユニークシリーズについてくる固有のスキルがユニークスキルよ」
裝備固有スキルがユニークスキルって言うことなら、私のユニークスキルは【混沌の克服】、そしてハープは【無作為な混沌】だ。
「そのユニークシリーズは皆が皆持ってるんですか?」
ハープが問う。
私もそれは気になっていた所だ。実際、私達の持っているこの裝備はどのくらいの価値があるのかな、と。
「いやいや、そんなことはないわ。そもそもダンジョンの絶対數がないもの……まあ、話は戻すわね?それで、あの人のユニークスキルは【走】、AGIが四倍になるのよ」
「よ、四倍……?」
それで最初にあった時、あんなとんでもない速さだったって訳か。それにしても一つのスキルだけで四倍って言うのはそれこそとんでもないだと思う。
「そう、四倍。元々格があんなじだったんだけど、あのスキル手にれてから走り回るのが好きになっちゃったみたいでね……世話を焼かされるわ」
そしてシェーカさんはまたもや疲れ気味に言う。
「それでその走り回っている姿から、偶然にもユニークスキルと同じ名前で『走のブラスト』って呼ばれる様になったってわけなのよ」
「ありがとうございます。わざわざ々教えて頂いて」
「いいのいいの、そんな大したこと教えて無いし」
ギルドの場所やらユニークスキルの詳細やら教えてもらいまでしたのに大したことじゃないという限り、ブラストさんがリーダーをしている《騒ノ會》のメンバーは相當に強い人達だ。このシェーカさんとて普通じゃない可能だってある。もしかしたらこの人も……
その時だった。
「オラァ!金を寄越せ!……お前ら、バシバシ取ってけ!すぐにずらかるぞ!」
「ハイッ!」
 
「キャッ!と、盜賊よ!」
後ろの方で何か壊される音と同時に悲鳴が聞こえた。
「シェーカさん、これってどういう……」
「一応ね、この街も一つの大規模なギルドホームなのよ。初めからあるNPCのね?」
「えっ!?」
驚いた。一、今日は何回驚いてるんだろう。
シェーカさんが言うには、この街がギルドホームって設定上、盜むのはシステム上おかしい所は無い訳でたまに無謀にもこうやって集団で乗り込んでくるプレイヤーがいるらしくって、そういう集団は『盜賊』って呼ばれてるらしい。
勿論、この街も黙っていない。その盜賊団を追い返すか、倒した人に賞金を與えている様で、一部のプレイヤーはこれをちょっとしたイベントと考えているぐらいだ。
そして、私達が呆然と見ていると、
「ちょっと行ってくるわね」
「えっ、シェーカさん?」
と、シェーカさんが金目のを漁っている盜賊団に向かっていった。
「チッ!良いモン置いてねぇなぁ、この店は……おいお前ら!そろそろ行くぞ!」
「あらあら、盜賊さん達……こんなにお店を壊しては駄目だと思うのだけれど?」
「なんだテメェ!邪魔すんなら殺すぞ?お前だってデスペナルティは貰いたくないだろ?だったらそこを――――」
何が起こったのか分からなかった。
気づけば盜賊団の首領は青いエフェクトを散らして消えていった。つまり倒したということなんだけど、私にはシェーカさんがいている所は見えなかった。AGIがとんでもなく高いのかな、と思ったけど見えないほどって言うのは、ほぼありえないから違うと思う。
首領がやられて呆気にとられている盜賊団らは、
「はっ?おい、お前何しやがった!」
そう言ってまた一人、シェーカさんに襲いかかるがやはりまたいつの間にか消えていった。
そんなシェーカさんに恐れをなしたのか、盜賊団は一目散に逃げ出した。
「ば、化け!」
「化けで結構だけど……逃さないわよ!」
シェーカさんがそう言うと、私はまた信じられないを目にした。
「シェーカさんが、いち、にぃ、さん、し……六人!?」
ハープも驚いている。本當に驚かされっぱなしだ。
どうなったかと言うとシェーカさんが分裂して六人になった、そういう狀況。そしてその六人が集団で逃げる盜賊達を一人一人倒して數を減らしていく。
「ヒィッ!お、お前……まさか幻使いの……っ!」
「その名前はあまり好きになれないのよねぇ」
と、六人のシェーカさんの一人が言う。あれが本かな?と、考えているに盜賊の一人がこちらに向かってきた。
「はぁっ、はぁっ!人質を取っちまえばこっちのモンだ!」
と言って、そこを偶然通りかかったプレイヤーに襲いかかろうとしている。
「ユズ、行くよ!」
「えっ?」
ハープがいきなり飛び出した。既にダガーを引き抜き、手に持っている。突然のハープの行に揺したけど、私もすぐに向かった。
盜賊とハープの距離が三メートルくらいになった時、
「『影い』!」
と、ハープが何か技の名前を言い、ダガーを石で出來ている筈の地面に突き刺した。
「うおっ!?」
盜賊のきが止まった。
どうやらハープのこの技は相手のきを止められる技の様だ。その隙に私はハープと同じ様に、神様から貰った力を初めて使うことにした。
【ユズの心の闇! MP27/32】
「うわぁっ!?何だよ、これ……まさかあの時の……いや、そんな筈は……っ!あっ、やめろ!やめてくれぇ!許してくれよぉ!」
【盜賊Aは混した!】
と、盜賊はいきなり誰も居ない所に向かってそう騒ぎ出して懇願する。どうやらこの心の闇は過去のトラウマや文字通り心に潛む闇を対象者だけに見せる幻系の技で、混させることが出來る様だった。
おかしいくらいに強化されたSTRを利用してメイスで毆っても良かったけど初の闇魔法を使える良い機會だったから、使ってみた。それにしてもこの魔法、思い出とかに依存してる所もあってか、ただの神攻撃の様な気がする。
まあ何はともあれ無力化することは出來た。
「ユズ、やったね!」
「うん!」
何気にここまで連攜して相手を倒すのは初めてかもしれない。ハープと一緒に倒すっていうのがここまで楽しいだとは思わなかった。
するとシェーカさんが全員を倒したのか、一人になって戻ってきた。
「大丈夫!?そっちに一人行ったみたいだったけれど……って、それ?……まさか貴方達が?」
「はい、私達がやりました!ね、ユズ?」
「うん!私達だけ、でね?」
私はシェーカさんに強調して、そう伝えた。
最果ての世界で見る景色
西暦xxxx年。 人類は地球全體を巻き込んだ、「終焉戦爭」によって荒廃した………。 地上からは、ありとあらゆる生命が根絶したが、 それでも、人類はごく少數ながら生き殘ることが出來た。 生き殘った人達は、それぞれが得意とするコミュニティーを設立。 その後、三つの國家ができた。 自身の體を強化する、強化人間技術を持つ「ティファレト」 生物を培養・使役する「ケテル」 自立無人兵器を量産・行使する「マルクト」 三國家が獨自の技術、生産數、実用性に及ばせるまでの 數百年の間、世界は平和だった………。 そう、資源があるうちは………。 資源の枯渇を目の當たりにした三國家は、 それぞれが、僅かな資源を奪い合う形で小競り合いを始める。 このままでは、「終焉戦爭」の再來になると、 嘆いた各國家の科學者たちは 有志を募り、第四の國家「ダアト」を設立。 ダアトの科學者たちが、技術の粋を集め作られた 戦闘用外骨格………、「EXOスーツ」と、 戦闘に特化した人間の「脳」を取り出し、 移植させた人工生命體「アンドロイド」 これは、そんな彼ら彼女らが世界をどのように導くかの物語である………。
8 83【完結】「死んでみろ」と言われたので死にました。【書籍化・コミカライズ】
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