《極寒の地で拠點作り》大収穫
「キィィィィィ!」
「……っ!」
最早靜かでも何でもなくなった眷屬さんは、その蟲の様に沢山ある足みたいなっこをかしながら私達を追いかけては枝の鞭攻撃を仕掛てくる。
私は鈍足なので、今はハープに背負われながら逃げている。
「大丈夫?重くない?」
「全然!ユズくらい普通におんぶ出來るよ」
そう言ってくれるのは良いんだけど、この図はなかなかにシュールで恥ずかしいかもしれない。
ハープが私を乗せたまま、高速で走ったり橫に跳んだり……今はこうさせてもらうしかないから仕方無い。
とりあえず纏めると、私が今、直接相手にダメージをれる方法は二つ。
一つは生気の強奪、闇魔法Lv.3でまさかこんな強大な魔法が使えるようになるとは思っていなかった……確かにとんでもない技だけど、これはMPの大部分が持っていかれる上、再度使おうとするとMPポーションを大量に使わなければならない。
そしてもう一つは直接叩きに行くこと。考えてみても結局これに辿り著いてしまうけど割と有効打だったりする。欠點は、當然の如く近づかなければ叩けないし、それも眷屬さんの猛攻で簡単にはこなせないこと。
心の闇は、ハープの無作為な混沌が効いてなさそうなので止めておいた。まあ、偶然引いたどれかに耐があったのかもしれないけど、嫌な思い出が神様とのソレだとしたら余計狀況が悪くなりそうだからやはり止めておくに越したことはない。
「それにしてもどうしよっか」
「そうだね、このまま私が背負ったまま突っ込んでったら危ないよね」
「まあ、それはね……でもハープ、もうHP殘りないでしょ?」
「そう、だけど」
ハープのHPは今、34/60で半分程になってしまっている上に回復手段が一切無い。何かあってはいけないので出來れば攻撃に転じてしくはない。
「だったら……」
「でも、もう學習したから大丈夫だよ!さっきの大ダメージは不意打ちでやられたみたいなものだし」
うーん、でも決定打じゃないからなぁ……私の攻撃とハープの素早さが上手く使えればいいんだけど、おんぶされたまま攻撃するのも難しいし。
他の方法にするにしても私の生気の強奪ではもう一押し足りないし……
「うーん」
「キィィィィ!」
「あ、ユズ。またし激しくなるから振り落とされないようにねー?」
「あ、うん、わかったよ」
眷屬さんは周期的に連続攻撃を仕掛てくる。
それによるハープの疲労もある訳だから、もう考える暇は無いのかもしれない。でも決定打、決定打ねぇ……?
「キィィィィ!」
「ふう……何とか避けきった……あれ、ユズ?」
「あ、そうだ!」
私は一つ方法を思いついた。
でもこれは結構賭けに出ている所がある、というよりそれが決定打に當たるので結構どころじゃないかもしれない。どちらにせよ、狀況を変えるにはこの方法しかない。
「え、何?」
「ねぇ、ハープ。ちょっとやりたいことがあるんだけど……」
「キィィィィ!」
「はぁ……はぁ、ユズ、この辺で良い?」
「うん、いいよ、ありがとう」
眷屬さんの連続攻撃の直後、距離を取ってもらってからハープに下ろしてもらう。
「私はまだここで待ってればいいんだよね?」
「うん、とりあえず走る準備だけしといて」
「わかった。そっちも気をつけてねー」
「うん!じゃあ、そろそろ行くよ?」
私は先程と同じ様に、眷屬さんの通常攻撃に敢えて當たりに行く。
「キシィッ!」
「さあ、來てよ!」
【靜かなる老木の攻撃!】
「……っ!」
【ユズに9のダメージ! HP55/64】
やっぱり痛い……現実でやられたら痕が酷そう。
そんなことを考えながら私はすかさず、
【ユズの生気の強奪! MP5/47】
【靜かなる老木に31のダメージ! HP11/200】
【ユズは31回復した! HP64/64】
MPはさっき、ポーション上一つと下三つを飲んで、全回復したばかりだ。
それを二度目の生気の強奪に使う。
しかしこれでは技の質上、決定打にはならない。せいぜい決定打に繋がるアシストという所か……そう、アシストにしかならない。
「今だよ!」
私は後ろで待機していたハープに合図する。
「りょーかい!」
「キシィィィ!」
眷屬さんの意識がこちらに向いた瞬間、
「『投――――――
ハープが全速力で私のすぐ隣を走り抜ける……と同時に、私の『杖』をバシッ、と取っていく。
因みにダガーは裝備していない。
ハープ、任せたよ。
――――――擲』ッ!」
私の思いを託した私の杖は、ハープによって勢い良く直線的に飛び……
「キシッ!?」
【靜かなる老木に15のダメージ! HP0/200】
グシャッ、と何か押し潰す様な音を出して、眷屬さんのに突き刺さりかけた。そして、
【靜かなる老木を倒した!】
「はぁ……はぁ……やっ、た?」
「やったよ!ハープ、凄いよ!」
「いやいや、思いついたのは私じゃないし……賭けだったとしても『投擲』の質を上手く使うって言うのを考えられたのは凄いよ!流石、ユズだからこそ考えられる技だね」
「ちょっとそれどういう意味?」
「あはは、私にも分かんないやー」
と、誤魔化すハープ。
実際、自らの裝備を手放してまで賭けに出るのは危険かな?と自分でも思ってた。
因みに投擲の質と言ったけど、投擲はオブジェクトを投げて攻撃する技だ。それで、『オブジェクト』と言うのは、その辺に落ちてる小石、木の枝、究極プレイヤーでも問題無い……となれば勿論、裝備でも可能な筈。
そう思った私は私が裝備したまま、ハープに杖を渡して『ユズの裝備』というオブジェクトとして投げさせた。
當然、他人の裝備というのは自分が勝手に裝備出來るでは無い。だから普通に自分の裝備を持たせて他人に攻撃させても1ダメージもらない。
それなら、と私は、投擲の質を利用して間接的に攻撃することは可能なのでは……と考えた。
憶測の域を出ないことから心配はしていたけど、結果的に大功に終わった。
自分でもまさか、他人に自らの裝備を裝著させずに自らの裝備で攻撃させる、が出來るとは思わなかったけど。
どちらにせよ、私の『何とかなるでしょ神』が功をした瞬間だった。
そしてハープに話しかけようとすると、
【ハープは『電石火』を手にれた!】
【解放條件:自らのAGI最大値を出しながら相手に攻撃する】
「ん?スキル?」
「え、ハープ、新しいスキル?」
「そうみたい……」
効果はAGI+10らしく、これでハープのAGI値は【AGI:408】となり、400越えを果たした。
「えー、私も何かしかったなぁ……『他力本願』とか『無責任』とかそういう不名譽なスキルでもいいからしかった」
勿論、そんなスキルが本當にあるかは知らないけど。
「まあまあ、チャンスはこれからもあるよ……あと、ほら、返しておくよ」
そうハープに勵まされた後、手渡してきたのは私の杖だった。君にもとんだ迷をかけたね、これからはもっと強くなって大事に扱うから。
「ん、ありがとう」
「どういたしまして……あとさ、私気づいたんだけど」
「ん?何?」
「あれ、見てよ」
ハープの視線の先には何処かで見たようなThe寶箱……そう、闇の迷宮で神様から裝備を貰った時のあの箱だ。
「そういえば一応、この戦いってボス戦だったよね」
ハープが何やらぼかしながら言う。
「ってことは、報酬ってこと?」
「だろうね、それも神様の元眷屬のだから凄いと思うよ」
確かに、神様であれくらいだったのだから眷屬さんのも相當凄いに違いない。
私達は期待を膨らませて早速、開けてみることにした。すると、
「ブレスレットと……ダガー?」
「ダガー!?」
あっ、ハープの目がキラキラし始めた。
手に取ってみると、私のインベントリにる。
早く早く、とハープに催促されているのもあって、すぐに効果を調べてみようとする。
「えっと、ブレスレットは『アメジストのブレスレット』……効果は、『敵を一倒す度に、MPを2回復』、これは私かな」
良かった、これがハープ用とか來たら今回私に何も無かったことになるから安心した。
その効果を聞いたハープは、より一層目を輝かせながら詰め寄ってくる。
「で、で?」
「うわっ、ハープ、ちょっと待って……えー、ダガーの名前は『ミセリコルデ』、効果は『HP20%以下の相手に即死攻撃』……ってこれ滅茶苦茶強いじゃん!」
「早速貰っていい?」
「うん、はい!」
「おぉー!」
なんかこんなじでハープがんな持ち始めてんな面でアドバンテージ取り始めたら、最早私はただの脳筋になりそう……それだけは何とか避けなくてはいけない。何か闇魔法で良いの來ないかなぁ……
そんなことを考えているのも知らずに、ハープは『ミセリコルデ』を回しながらじっくりと見ている。そして時折、ニヤニヤしてる。
「私も裝備しよっと」
私の『アメジストのブレスレット』はMP回復系、さっきハープのに対して、使える、と言ったけどこれもなかなか使えるかもしれない。
生気の強奪使っては叩きまくって、それでまた使っては……の繰り返し。まあレベルが上がれば九割貯めるのもキツくなっていくだろうからあまり現実的ではないけど、これはかなり良い裝備と言える。
私はそれを右手首に裝著する。
うん、結構良いかも……アメジストも綺麗だし、何だか更に強くなった気がする。そんな気持ちになると、ハープまではいかないけどやっぱりにやっとしてしまう。
「あっ、ユズも結構いいじゃん」
「でも怪しさがねぇ……」
「あー」
アメジストは確かに綺麗なんだけど、紫水晶なので今の私の全的なに溶け込んでいるじがする。要するに怪しさが増した。
「ハープは使い時によって変えられるね?」
「そうそう!使い分けが出來るなんて、使ってみるのが楽しみ過ぎる!」
「まあ、とりあえず落ち著こう……ハープ、私達、何か忘れてることない?」
「忘れてること?……あっ!」
私達が忘れていたこと、それは、
「うん、ギルドホームのレベルが3になることだよ!」
「おぉー!」
つまり私達はこの強くなったじを噛みしめながら、更なる強さに期待出來るということだ。
「じゃあ、早速神様の所へ戻ろっか!」
「うん!」
そうして私達は転移の石で眷屬さんの部屋を後にして、ギルドホーム前に著いた。
相変わらず、風が吹き荒れて溫度はかなり低いとなっているけれど、それを気にさせない程には興が収まらない。
私は早速、ギルドホームにった。
「ただいまー!」
「神様、ただいまです!」
「お主ら……その様子から見るに無事倒してきた様だな」
「はい!裝備もこの通り!」
私はブレスレットを、ハープはダガーを見せた。
すると神様は怪訝そうな聲を出した。
「む?それは何処かで……あっ、やはり奴が……!」
「どういうことです?」
「ああ、奴が私の下から離れた時に我が寶庫からその二つと同じだけが無くなっていた……まあ大予想はついていたがこれで確信したぞ」
「えっ、じゃあ……」
「心配しなくとも、それらはお主らにやる。盜られてしまったとはいえ、それらは奴のだ。その奴が倒れ、今お主らに渡っているとなればそれはお主らのだ、大事に扱えよ?」
「はい!ありがとうございます!」
こうして神様直々に許してもらえた所で本題にる。
「ところで神様、ギルドホームのレベルアップをお願いしたいのですが……」
「おお!そうだった、私も奴の話題で完全に忘れていたわ……よし、では素材を渡せ」
「はい!」
私はインベントリにある四種類の素材を選択して神様の方に渡す。
「ああ、しっかりけ取ったぞ。これで完了だ」
「え?」
「は?」
意外とあっさり……というかあっさりすら起きなかった様な気がする。
「お主らの考えていることを當ててやろう……大方、『え?何も起きなかったじゃん』とでも思っているだろう」
「ああ、はい。まあそうですけど、ちがうんですか?」
ハープが問う。
「まあ見た所分からないだろうな。城の面積がし増えただけだからな、あと鍜治場とかその辺りの施設の質が向上したり……」
「えっ、広くなったんですか?」
「ああ。だが外見では変わっていないぞ?あんまり広くなって更に目立つ様になっても仕方無いからな」
「へぇー、神様ってそんなことも出來るんですね」
あれっ、ハープが珍しく神様を褒めた。
明日ここら一帯が暖かくなってたらどうしよう。
「それだけでは無いぞ、ほら後ろを見てみろ」
「後ろ?」
後ろと言ったら出口とそれに繋がる長い一直線の通路があるだけの筈……だったんだけど、
「あれ?」
壁がある。
いや、壁ではない、曲がり角だ。
私はその曲がり角を覗いてみるけど、その先には真っ暗……いや、これはいつも見てるから分かる。闇だ。神様の深淵なる闇、ということは?
「お主の考えている通り、その闇には混効果が付與され、その曲がり角の先は規模は小さいが迷路にはなっている……丁度、闇の迷宮のミニバージョンと言ったところか」
すると、ハープの顔がし暗くなる。
私もあの闇には変わらず嫌な印象を持ち続けてるから気持ちはよくわかる。
「まあ、そんな顔をするな。あの闇はお主らにはかからんように設定している。そもそもあの迷路を通らなくとも、り口の扉で『混沌の鍵』を使えば、この広間に直接繋がるからなんら気にすることは無い」
「そう、ですか」
「そうだよ、ハープ!これ、侵者対策としてかなり優秀だよ!」
「ユズがそういうなら……そうだね?」
「そうだよ!」
「そっか、そうだよね!」
「そうそう!」
ハープは笑っている。
私達はおかしくも、肯定しまくっているけれどこれでいい。
「何だ、お主ら……」
「何でもないですよ?」
「そ、そうか。ならいいのだが……」
そんな様子に若干引き気味になってる神様がいるけど、それはあまり気にしないでおこう。
「ところでお主ら、何か『イベント』とやらが街で催される様なのだが、知っていたか?」
「イベント?」
「ああ。その様子から見るに知らなかったのだろうが、観測者……お主らの所で言う運営だな。彼らが主となって何かやるようだが、私も詳しくは知らん。一度街へ言ってみるといい」
「わかりました、ありがとうございます」
それにしても運営とツテのある神様か、一応神様もNPCとかその辺りに當たるのかな。
だとしたら何でわざわざ運営は、そのNPCである神様と直接繋がりを作ったんだろう?
まさか神様が広報役だった、なんてのも有り得ないだろうし……まあ、それは考えても仕方無いし、割りとどうでもいいことかもしれないから今は置いておこう。
「それにしても、今日は大収穫だったね!」
「そうね、スキルも武もギルドホームも」
「スキルねぇ……やっぱり私も新しいのしいなぁ……」
「まあ、時間はいくらでもあるし、ユズならこれから々手にれられるよ!……あ、私はそれよりもっと手にれて、ユズより強くなっちゃうからね?」
「わっ、私もハープに負けるつもりは無いよ!」
とりあえず今は、新しく手にれた強さに浮かれることしよう、そう思った。
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