《極寒の地で拠點作り》人助け
「ていっ!」
「いいよ、リンちゃん!」
私達は今、リンちゃんのレベル上げをしている。
さっきギルドホームで確認させてもらったけど、その時點でレベルは21、私達にとっては高い方だけど、リンちゃんを捨てたギルドの人達っていうのはそんなにも高レベルなのか。
「あ、ありがとうございます!」
「大丈夫? 疲れてない?」
「あ、はい……ちょっと慣れないですけど。大丈夫です」
リンちゃんは戦闘役であったらしいけど、前衛役ではなかった。どちらかと言えばサポート役で、主に回復魔法を得意としてる様だ。
HPを回復させる……これは育てるしかない。そう思った私達は、回復魔法を続行してもらうことにした。
「それにしても、杖仲間が増えて嬉しいよ」
「そ、そうですか」
「でもユズは、本來あまり使えない筈の毆打を積極的に使うから、同じ杖でも別々だよね」
「それは、私はメイスでリンちゃんはロッドだし……まあ私のは特殊なだけど」
「特殊、ですか?」
「ああ、そういえば言ってなかったね」
私はリンちゃんに、ユニークシリーズやユニークスキルについて説明した上で、私達の裝備について説明した。
「へぇ……お二人のそれは、そのユニークシリーズってなんですね。で、でも、ったばかりの私にそんな詳しいこと話しちゃっていいんですか?」
「え?」
リンちゃんはし申し訳なさそうに聞いてきた。
「で、ですから、まだりたての私にそんなステータスの話とかしちゃったら……」
「私はリンちゃんのこと信頼してるから、ハープもそうだよね?」 
「うん、リンちゃんはそういうことしないって私達信じてるから」
「もう、お二人とも。私が裏切ったらどうするんですか」
「その時はその時だよ、大丈夫大丈夫!」
「そうですか……まあ、ありがとうございます」
多分、リンちゃんはそんなことしないだろう。
今はそんなの気にしても仕方無いので一旦置いておく。
「じゃ、レベル上げ再開ね」
「はい!」
そういう訳で私達はレベル上げを続ける。
因みに今回はし遠出をしている。理由はただ単純に、たまにはいいかな、とそんなじだった。
それからは特に何も無く、森の中を進み、順調にやることが出來た。しかし、そういう時こそ何かあるもので、
「この辺はだいたい倒しきっちゃったかな?」
「そうみたいですね……お二人のおで私もすっかり慣れましたし」
「あはは、リンちゃんはユズみたいになっちゃ…………っ!?」
突然、ハープが立ち止まって辺りを見回す。
私達にも止まるように手を出してきた。
「どうしたの、ハープ」
「しっ! 靜かに」
「えっ? な、何が……」
ハープは聲を抑えるように言ってきた。
でも、その意味がすぐわかった。
「……ろ!」
「お…………ない!」
「……だと!」
姿は見えないが、私達の右方向から微かに聲が聞こえた。聞き取りにくいけど、怒鳴り聲が聞こえるあたり襲われているのだろう。
「どうする? 行く?」
「うーん、まあ気になるし、助けることは悪いことじゃないと思うから行くかな」
「じゃあ、決まりだね。リンちゃんはここで待っててね?」
「わ、私も行きますよ、ハープさん!」
「危ないし、リンちゃんまで來る必要は無いよ!」
「いえ、私もギルドの一員です。お二人もさっき、信じてるって言って下さったじゃないですか! それってつまり私をギルドメンバーとして認めたってことですよね?」
そう言ったリンちゃんの目は真剣で、いつものおろおろとした雰囲気では無くなっている。
「……うん、わかった。一緒に行こう。でも危なくなったらちゃんと逃げるんだよ?」
「はい、大丈夫です! 私、ユズさんより速いですから!」
「あはは、それもそうだね」
「えっ? ハープまで……」
なんか凄い貶された様な気がする。
仕方無いじゃん、STR値しか上がらないのは環境がそうさせているんだから。
「まあまあ、そういじけてないで……」
「いじけてないから早く行こうよ!」
やけになって私は、茂みを先行する。
息を潛めてゆっくりと……それで聲が近くなってくるにつれてを屈めていく。
すっかり聞こえる様な位置に著いてから狀況が明らかになった。
「これだけやっても吐かねぇとはな」
「誰がお前らなんかに……」
「どうする? 埒あかねぇしギルホに連れてくか?」
「そうするか」
男二人がそこの青年を囲み、いたぶって何かを聞き出そうとしているじで、既に青年のHPバーは赤で殘りない。かなりキツい狀態だろう。痛みは現実のソレに比べて抑えられているとはいえ、攻撃されると痛い時はかなり痛い。痣とか殘らないのは良いだけど。
「どうする? 行っちゃう?」
「ユズが行きたいのならユズが行ってもいいけど」
「うーん、ここは……ハープにお願いしようかな?」
「りょーかい、じゃ、行ってくるね」
この狀況では素早い解決が求められる。だから、消音持ちでちゃんとした実力を持ったハープが適任だと思った。私の奈落のだとあの青年まで巻き込みそうだし。
「まずは一人目っ!」
「ぐあっ!」
「なっ、なんだてめぇ!」
ハープは慣れた手つきで弱點を突き、一人を一撃で仕留めた。
避けられても掠れば狀態異常なので、奇襲ならハープの右に出る人はいないんじゃないかって思う。そしてもう一人は剣を振りかざす間もなく、
「なっ!?」
そのままハープに倒された。
流石ハープ、四位なだけあって近接の戦闘は凄い。私達は茂みから出て、
「す、凄いです! ハープさん! 私、あんなに素早いの見たことありませんよ!」
リンちゃんが凄い驚いて、尊敬の眼差しを向けている。私と言えば、凄いは凄いでも、リンちゃんまでAGI教に信しないか凄い心配だった。因みにそのAGI教の教祖様はブラストさんだ。
「あはは、そうかな?」
「そうですよ!」
「あ、ちょっと君達……」
助けてあげた青年が聲をかけてきた。
「はい、なんでしょうか?」
「助けてくれてありがとう」
「はい、禮には及びませんが……盜賊に襲われでもしたのですか?」
「はは……まあ、そんな所だ」
青年はそう答えたけど、何か隠している様な気がする。まあ、「吐け!」とか言ってたあたり何かかなり重要なことなのだろう。
「とりあえず、回復を……リンちゃん!」
「は、はい!」
【リンはハイヒールを唱えた!】
「あ、ありがとう……これくらいで充分だよ」
まだ全回復はしてなかったけど、その青年はしっかりと立ち上がりそう言った。
「お兄さんはこれからどうするんですか?」
「ああ、ギルドホームに戻るよ。君達は?」
「私達はレベル上げに來ていたので、もうしここにいます」
「そうか、気をつけてな? あ、そうだ。ここであったのも何かの縁だ。いつかお禮がしたいし、フレンド登録したいんだが……いいか?」
「はい、大丈夫ですよ」
私達はその青年とフレンド登録をする。
「ユズ、ハープ、か……何処かで見た様なと思ったが、この前のイベントの第二位様と第四位様じゃないか。通りで強い訳だ」
ははは、と笑い出す青年。
「いえ、そんな……」
「はは、謙遜しなくてもいいよ。じゃ、俺はこれで」
と言って転移の石で帰っていってしまった。
これで一件落著、と思っていると、
「はわわ……」
「ん、どうしたの、リンちゃん?」
リンちゃんがなんかすっごい青ざめてる。
「い、いえ、あの……お二人ってあのイベントの……」
「うん、私が四位で、ユズが二位だよ」
「それがどうかしたの?」
「わ、私、それも知らずにあの時……」
リンちゃんが何を想像しているかは複數あってわからないけど、青ざめてる理由はなんとなくわかる気がする。
そんな様子のリンちゃんを差し置いて、何やらじっ、とウィンドウを見ているハープが私に、
「ねぇ、ちょっと、ユズ」
「どうしたの?」
「これ見て」
これ、とはウィンドウのフレンド一覧でハープの指差す先には、先程の青年、「カイト」の欄だった。
「カイトさんがどうかしたの?」
「ほら、所屬ギルドを見て」
「所屬ギルド?」
「カイト」と表示された名前の下には、特殊な紋様と共にこう書いてあった。
『所屬ギルド:騒ノ會』
私ははっとした様にハープを見る。
「何か、ありそうじゃない?」
ハープはほんのし笑った様な顔でそう言った。
【コミカライズ&書籍化(2巻7月発売)】【WEB版】婚約破棄され家を追われた少女の手を取り、天才魔術師は優雅に跪く(コミカライズ版:義妹に婚約者を奪われた落ちこぼれ令嬢は、天才魔術師に溺愛される)
***マンガがうがうコミカライズ原作大賞で銀賞&特別賞を受賞し、コミカライズと書籍化が決定しました! オザイ先生によるコミカライズが、マンガがうがうアプリにて2022年1月20日より配信中、2022年5月10日よりコミック第1巻発売中です。また、雙葉社Mノベルスf様から、1巻目書籍が2022年1月14日より、2巻目書籍が2022年7月8日より発売中です。いずれもイラストはみつなり都先生です!詳細は活動報告にて*** イリスは、生まれた時から落ちこぼれだった。魔術士の家系に生まれれば通常備わるはずの魔法の屬性が、生まれ落ちた時に認められなかったのだ。 王國の5魔術師団のうち1つを束ねていた魔術師団長の長女にもかかわらず、魔法の使えないイリスは、後妻に入った義母から冷たい仕打ちを受けており、その仕打ちは次第にエスカレートして、まるで侍女同然に扱われていた。 そんなイリスに、騎士のケンドールとの婚約話が持ち上がる。騎士団でもぱっとしない一兵に過ぎなかったケンドールからの婚約の申し出に、これ幸いと押し付けるようにイリスを婚約させた義母だったけれど、ケンドールはその後目覚ましい活躍を見せ、異例の速さで副騎士団長まで昇進した。義母の溺愛する、美しい妹のヘレナは、そんなケンドールをイリスから奪おうと彼に近付く。ケンドールは、イリスに向かって冷たく婚約破棄を言い放ち、ヘレナとの婚約を告げるのだった。 家を追われたイリスは、家で身に付けた侍女としてのスキルを活かして、侍女として、とある高名な魔術士の家で働き始める。「魔術士の落ちこぼれの娘として生きるより、普通の侍女として穏やかに生きる方が幸せだわ」そう思って侍女としての生活を満喫し出したイリスだったけれど、その家の主人である超絶美形の天才魔術士に、どうやら気に入られてしまったようで……。 王道のハッピーエンドのラブストーリーです。本編完結済です。後日談を追加しております。 また、恐縮ですが、感想受付を一旦停止させていただいています。 ***2021年6月30日と7月1日の日間総合ランキング/日間異世界戀愛ジャンルランキングで1位に、7月6日の週間総合ランキングで1位に、7月22日–28日の月間異世界戀愛ランキングで3位、7月29日に2位になりました。読んでくださっている皆様、本當にありがとうございます!***
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---------- 書籍化決定!第1巻【10月8日(土)】発売! TOブックス公式HP他にて予約受付中です。 詳しくは作者マイページから『活動報告』をご確認下さい。 ---------- 【あらすじ】 剣術や弓術が重要視されるシルベ村に住む主人公エインズは、ただ一人魔法の可能性に心を惹かれていた。しかしシルベ村には魔法に関する豊富な知識や文化がなく、「こんな魔法があったらいいのに」と想像する毎日だった。 そんな中、シルベ村を襲撃される。その時に初めて見た敵の『魔法』は、自らの上に崩れ落ちる瓦礫の中でエインズを魅了し、心を奪った。焼野原にされたシルベ村から、隣のタス村の住民にただ一人の生き殘りとして救い出された。瓦礫から引き上げられたエインズは右腕に左腳を失い、加えて右目も失明してしまっていた。しかし身體欠陥を持ったエインズの興味関心は魔法だけだった。 タス村で2年過ごした時、村である事件が起き魔獣が跋扈する森に入ることとなった。そんな森の中でエインズの知らない魔術的要素を多く含んだ小屋を見つける。事件を無事解決し、小屋で魔術の探求を初めて2000年。魔術の探求に行き詰まり、外の世界に觸れるため森を出ると、魔神として崇められる存在になっていた。そんなことに気づかずエインズは自分の好きなままに外の世界で魔術の探求に勤しむのであった。 2021.12.22現在 月間総合ランキング2位 2021.12.24現在 月間総合ランキング1位
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