《極寒の地で拠點作り》勧二人目
あの騒ノ會とタクトのいたギルドとの問題から暫く経った。あの後、ブラストさんは相手ギルドリーダーさんと和解、解放してやったそうな。
因みに和みの館と騒ノ會の臨時同盟は正規のとなり、同盟関係は継続中だ。
で、今はいつも通りギルドホームの石像の広間で何するかを決めながら、くつろいでる訳だ。
「あ、そういえば、和みの館のメンバーって私達四人だけですよね?」
四人? いつ増えた。
リンちゃんは普通に答えてる辺り、ふざけているつもりは無いんだろうけど。
隣に座ってるハープがを乗り出してリンちゃんに言う。
「四人?」
「あれ、違いましたか?」
リンちゃんはキョトンとしている。
あ、もしかしてアレかな?
「ハープ。リンちゃんは多分神様も含めてるんだよ」
「リンは私をちゃんと和みの館の者と認識してくれているのか……嬉しいな。それに比べてお主らと來たら……」
「い、いや! 私は流石に神様を同じ立場として見るのはどうかと思って……!」
だって、神様だよ? ラアトの話聞いてからはなんか意識しちゃって畏れ多いし……
そんな風に私が必死になって弁明していると、ハープが何か神様に言おうとしていた。
あぁ、なんかすっごい嫌な予がする。
「え、ユズ。神様ってマスコットじゃないの?」
「は?」
うん、やっぱりね。神様はこのギルドの象徴みたいなだから、あながち間違ってないけどさ。
よくわからないけど、こういう時のハープって何処からともなく天然が飛んできて弾発言するんだよね。まあ、意地悪そうな顔しながら言う時もあるから、結局ハープの神様に対する対応は天然アンド故意で常に神様にダメージを與えるのではあるが。
「えっ、何言ってるんですか、ハープさん! 神様に失禮ですよ?」
「あー、神様、今のは完全に天然の方ですので、許してやって下さい」
「まあ、ハープはそういう奴だからな……わかっているよ」
「え? えっ?」
メンバー全員にそんな反応をされたハープは珍しく狼狽える。あー、寫真撮りたいなぁ……こんな表あんまり見ないからね。
「……で、話は戻るんだけど。リンちゃんはギルドメンバーが三……四人がどうしたの?」
神様がメンバーとして認識されるのは悪くないことの様なので、私もそうじることにした。私も一応、ギルドリーダーだからそこの所はちゃんとしたい。
「あ、そうでした! お二人は私を街で勧して下さった時、掲示板でメンバーの募集を載せてきたんですよね」
「うん、そうだったね」
「……五人目候補、そろそろいてもおかしくないんじゃないですか?」
「あー、そういえば見てなかった。ハープは勿論見に行ってないよね?」
「うん。まあ、私とユズは基本二人同じ日にログインするからね。それで必然的に一緒にいるからそれは無いよ」
掲示板は不便なことに通知要素が無く、個人ともリンクしていないのでいちいち街に行って確認する必要がある。とても面倒くさい。
「うーん、でもどうかなぁ……私達のは他の募集要項にどうせ埋まっちゃってるだろうし」
「でも、まあ行ってみるだけ行ってみようよ」
「そうですよ! 行ってみましょう!」
「リン。お主、なかなか張り切っているな」
リンちゃんは神様にそう言われて途端に恥ずかしくなったのか、赤くなって元の調子に戻ってしまった。
「え、あ、はい……まあ、仲良い人と賑やかにやるのってなんか、こう、いいじゃないですか」
「うん、リンちゃん。私も同意見だよ。というか、なくとも私は最初からそのつもりでメンバー募集したんだけどね」
とりあえず、リンちゃんが同じ考えで良かった。
という訳で私達は街へ向かうことにした。
例によって経験値稼ぎをしながら街へ向かった私達は、これまたいつも通り賑やか商店街からる。
「あれ……あれって……」
「闇の魔……今日は何しに來たんだ?」
「馬鹿! 聲が大きい! 聞かれたらドボンだぞ!」
ヒソヒソ話が聞こえるのもお約束だ。
いつの間にか、闇の魔なる不名譽なあだ名が出來たらしいね。ほんと、どうにかならないかなぁ?
そんなじで私達は掲示板の所に著いた。
「さて、掲示板に著いたけど」
「どうだろうねぇ」
「きっと募ってくれた方がいらっしゃいますよ!」
そうして私はくじ引きをする様な覚で掲示板に近づいてウィンドウを表示させる。
「どう、どう?」
ハープが橫からずいっ、と覗き込む形で割り込んで乗り出してくる。リンちゃんはというと、
「み、見えないですぅ……」
ぴょんぴょんしてウィンドウを見ようと頑張ってる。それが凄く可いんだけど、悪戯するのも悪いので素直にウィンドウの位置を下げて見せてあげる。
「あ、ありがとうございます」
「ギルドの新メンバーに関わることだからね。皆で見た方が良いでしょ?」
という訳で、ギルド名を力して、投稿した募集要項の欄を開く。すると、投稿した要項の左上に赤く『!』と表示されていた。これは來たんじゃないか? ってことで、いざオープン、っと。
「あっ!」
「えっ?」
「おおっ!」
本文と線で區切られた、下にある欄にはこう書かれていた。
『ケイ 男
   水魔法が得意です。
   まったりやってるのでよろしくお願いします。
   主な活場所:街からし南に行ったところの草原
   ※地図を添付しておきますので參考にしてどうぞ』
とりあえず、安心。
折角意気込んで期待して來たのに何も來てなかったらかなり殘念だっただろうから。
「やりましたね!」
「うん、良かった良かった!」
「そうだね。でも近接系の人だったら良かったなぁ……」
ハープはちょっとだけ殘念がっている。
そっか、私とリンちゃんに続いて新しい人も遠隔で魔法だもんね。
「まあまあ。まだ掲示板にはり付けたままにしとくから、ね?」
「うん。でもまあ、私も皆と楽しく出來ればいいし、魔法は遠隔の支援が心強いから大丈夫だよ」
ハープはやっぱり優しい。今度何か労ってあげないと。
「じゃあ、早速ケイさんの所、行っちゃう?」
「良いと思います!」
「私も賛。早いことに越したことは無いからね」
「よし、それではケイさんがいるであろう草原に、れっつごー!」
「おー!」
「おー!」
そんなじのテンションで街を商店街の反対側の大通りから抜け、すぐそこの草原に向かう。
いざ、著いてみるとその草原は割りと広いことに気づいた。でも、視界は開けているからすぐ見つかると思う。
「それにしても水魔法の使い手ね」
「攻撃魔法の中でも、基本的にちゃんとした実がある技なので迫力ある魔法に期待出來ますね!」
他に実がしっかりあるのって六種類の中では土と……毒、かな? 私の闇魔法は完全に理攻撃じゃないし、寧ろ神攻撃だから論外。
そういう意味では、新鮮だ。新鮮と言ってもそれが普通な筈なんだけどね。
「ん? あれじゃないかな?」
「あれって?」
「ほら、あれだよ」
「あっ!」
私達の位置から見て右前の方向、し遠くの所で敵モンスター五と戦中の人が見えた。次の瞬間、その五の図上に大きな水の塊が出來た……と思ったらそれがどんどん紫に濁っていく。そして、
「あ、割れた」
「割れましたね」
それが割れて五に雨の様に降り注ぐ。
それからしして、一、そしてまた一と倒れる。私達は最後の一が倒れたのを見計らって、彼に近づいて話かけてみる。
「凄かったです! 貴方の魔法!」
會話の第一聲は、興気味のリンちゃんのとなった。突然、聲をかけられて驚いたのか一瞬構えた彼だったけど、
「ありがとう……えっと、君たちは?」
あ、なんか優しそうな聲だ。
近くで見てみると、私とハープよりは年下でリンちゃんよりも年上ってじの年だった。
「和みの館……って言えばわかるかな?」
彼はハッとした様な顔になった。
良かった、人違いじゃないっぽい。
「あっ、あの募集要項は貴方がたのでしたか……では、自己紹介ですね。俺はケイ、水魔法が得意です。ああ、えっと、さっきのは毒魔法を水魔法と組み合わせたコンボ技で、しょっちゅうそういうのを試したりしてます」
「へぇー!」
リンちゃんがさっきから凄い興気味だ。
リンちゃんは回復魔法専攻だった筈なんだけど、凄い攻撃魔法に興味を持ってる様だ。
私のも一応攻撃魔法なんだけどなぁ、って思いつつ、私達も自己紹介しようとする。
「私はユズ。一応、和みの館のリーダーだよ」
「私はハープね。私達のギルドで唯一の近接系よ」
「わ、私、リンです! あ、あの、もっとそういう魔法見せて下さい!」
「リンちゃん、回復魔法専門って言わないの?」
「あっ、そ、そうでした……」
これで一通り、自己紹介が終わった。
「私達は貴方のことなんて呼べばいい?」
「ああ、普通にケイでいいですよ」
うーん、じゃあ私はケイ君で行こうかな。
「じゃあ、よろしくね。ケイ君」
「よろしく、ケイ」
「よろしくお願いします、ケイさん!」
見事に全員分かれた。
私は一人っ子なので、どうしても自分より年下の子は君やちゃん付けで呼んでしまう。ハープは呼び捨てで呼ぶ弟がいるので、呼び捨てはその影響だろう。リンちゃんは年上に対してのソレなので、普通だ。
「ケイ君はここで経験値稼ぎ?」
「いえ、コンボ技の検証を……」
「今から早速ギルドホームに向かいたいんだけど、いいかな?」
「ああ、はい。構いませんよ」
「わかった。じゃあ早速行こうか」
リンちゃんの時と同じく、一旦ギルドホームに著いてからじゃないと転移の石は貰えないので徒歩だ。道中、ケイ君には一応、こう注意しておいた。
「うちのギルドホームは環境的にも部のことでも々と特徴があり過ぎるけどあまり気にしないでね」
多分、かなり寒く、風は吹き荒れ、草木の全く生えていないごつごつとした不安定な巖石砂漠の上に建つ黒い城、そしてその中の喋る石像を見て、気にしない方が難しいだろう。あ、あと迂回が面倒な川も追加で。
ギルドホームに著いてから案の定、
「さ、寒いですね……ううっ」
風が吹く度に震えるケイ君が可哀想なので、さっさと混沌の鍵で開錠してることにした。
それにしてもハープは最初、かなり寒がってたのに今は特に何ともないじだった。勿論、服裝はお腹や元が出て前まで締まらないコートのままだ。やっぱり慣れって凄いね。
それで、ってからは例の如く、
「おお、帰ったか……これで五人だな」
「えっ?」
驚いてくれた。
まあ、そうだよね。驚かない方がおかしい。
その後は、特にリンちゃんの時の様な騒ぎもあること無く普通にんなことを教えあったりして、ケイ君は私達、和みの館の正式なメンバーとなったのである。
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