《極寒の地で拠點作り》防衛線作り その一
「えっ、またイベント?」
スキルショップのイベントからし経ったある日のギルドホームにて、神様の発言が和みの館の二人を驚かせる。
「そうだ」
「あれ? でも三ヶ月おきだった様な気がするんですが……」
神様の発言というのは、第二回イベントが行われるっていうことらしいんだけど、第一回からまだ一ヶ月半が過ぎたばかりなんだよね。
「ああ。その筈だったのだが、第一回の參加者から熱烈な要があってだな。急遽、それに応える形で同規模のイベントが開催されることになったのだ」
「えっ、それってお二方が參加した様な個人戦ってことですか?」
リンちゃんが心配そうに問う。
そっか。リンちゃんは回復役だから、第一回みたいなのだったら一人で待つことになるのか。
「いや、今回は違う」
そう思ったけど、どうやら違うみたい。
「というと?」
「簡潔に言うと、『ギルド対抗戦』だな」
「対抗戦?」
「ああ。フィールドはこの世界全だ」
神様曰く、第二回イベントはギルドホームの防衛に重點が置かれるらしい。
本を対象にするのは流石に命懸け過ぎるのでイベント開始の三日前に強度が本と同じ擬似石像が設置されるみたいなんだけど、それを壊すことで相手のギルドはポイントを得ることが出來るんだって。それで壊された擬似石像はその度に復活するんだけど、一度相手の擬似石像を壊したギルドはその相手のギルドの石像はもう壊せないようになる様だ。
「それからな。お主らは運が良いぞ」
「え? 何でです?」
「周りにギルドホームが無いからな。土地がある」
「……つまり?」
「防衛線が大きく張れる、ということだ」
なるほど、そこに見張り臺とか柵を建てればより早く相手の侵攻を察知出來るって訳だ。
あれ? でもそれを作るのは……
「因みに材料とかって…………」
「ああ。お主らの力で加工出來そうな材料と言えば木だな。だとすると、とっておきの場所があるぞ」
ほうほう、とっておきですか。
「ここから北西に進んでいった所にな、品質の良い木が生えている。そこから切り出して持って來ればいい」
「では、お二人がやっていた様に集めさえすれば、神様がズズズズ、ニョキニョキと建てて下さるって訳ですね!」
と、リンちゃんがそう問うたけど神様からは私達にとっても、驚きの答えが帰ってきた。
「何を言っている? ギルドホームからしでも離れれば私の支配出來る領域からは外れる。だから、柵作りも見張り臺建築も全てお主らの力だけでやるのだぞ?」
「えっ?」
「え?」
「ええっ!?」
「はっ?」
見事に全員同じ様な反応だ。一があるのはいいけど、神様のその返答はそれすら忘れさせる、労働を覚悟させるだった。
「私達四人で?」
「このまま行けばそうだろうな」
「神様は?」
「見守っててやる」
「えー?」
「知恵を絞ればお主らだけでも問題無い。それに、継続して何かをやっていればそれに合ったスキルが手にるかもしれんぞ?」
「それは確かに魅力的だけど……」
「まあ、あれだ。イベントは半月程早まるだけであと一ヶ月あるから頑張ればギリギリ完出來ると思うぞ」
ハープは振り返って私達三人を見る。
「どうする?」
「…………それで優位に立てると言うのならやってみる価値はあると思います。俺達の手で作るということは、恒久的なだと思っていいんですよね、神様?」
「ああ、そうだ。破壊されない限りはな」
そう聞くってことは、イベントの先も見據えているのか。流石、ケイ君だね。私とは正反対だよ。
「私も賛だよ、ハープ。皆で協力して何かを作るって楽しいと思うし」
「リンちゃんは?」
「えっ、あ、わ、私も賛ですっ!」
「……本當に?」
「ほ、本當ですよ!」
ハープがリンちゃんに意地悪そうに聞く。
とりあえず、これでギルドメンバー全員が賛した訳だ。
「わかった。じゃあ神様、私達やります!」
「おお、そうか。工夫次第では何でも出來るからな。せいぜい我が城を難攻不落の要塞仕立て上げてくれよ?」
「言われなくとも!」
という訳で、第二回イベントに向けた、たった四人の防衛線の構築が始まったのである。
なんにせよ、皆でどうしていくかの會議が最初だ。
「じゃあまず、全的にどんなじにするか、だよね」
司會進行はハープ。これはいつも通りだね。
例の如く神様と、
「ホワイトボード!」
「だから無いと言っているだろう!」
そんなやりとりをしていた。傍から見ても、何だかんだ言ってほんとに仲良いと思うんだよね。
「そうですね。それで、最初からいきなりなんですけど、案いいですか?」
「はい、ケイ君! どうぞ」
「水堀、とかどうですかね。ほら、平地の城とかにある……」
「あー、あれね」
堀。水のった。敵の侵を邪魔するアレね。
「こんな寒い所で水にるなんて……大変そうです」
「ええ、つまりそれが狙いです。冷えたは行力を鈍らせますからね」
「となれば、それなりに幅があって深いにするってことなんだよね。私達の力でやれるの?」
ハープの言うことも尤もだ。木を切るのはまだしも、ここら辺の地面は決してらかい訳では無い。あれ? そういえば…………
「ねぇ、皆。流れ遮って悪いんだけどさ」
「ん? ああ、いいよ、ユズ」
「ありがとう。んで、木、切るって言ったじゃん?」
「うん。神様が言ってたね」
「……どうやって切るの?」
「あっ」
すると、皆は一斉に神様の方を見る。
「む。道、ということか? それなら、ハープ。お主の闇ノ短剣で切れるぞ」
「そういう道じゃないと思うんですが……それに私だけじゃ効率悪そうだし」
「心配するな。私は私の武に自信を持っている。刃こぼれなど起こさないし、切れ味だって申し分無い筈だ」
「いやぁ、でも、流石に短剣を斧みたいに使うのは無理があるんじゃ……」
「気にしなくても良い。その続けていれば、さっきも言ったがそれに合ったスキルが手にるだろう」
「そう、ですかね」
「そうだとも!」
と、神様は自信満々な聲でそう言った。まあ、神様がそういうのなら問題無いのだろう。
「そうですか。それじゃあ、話を戻そう!」
「切り替え早いねぇ」
「ふふふ。そりゃあ、私は一応司會だからね」
ああ、言ったつもりは無いけど司會やってるって自覚はあったのね。
「ええと、水堀の話だっけ。それでどうするの?」
「ああ、はい。それは俺がやります」
「ケイ一人で?」
「はい、俺一人で行けると思います」
「因みにどうやって?」
「水魔法Lv.2の『間欠泉』を使うんです」
ケイ君が言うには、『間欠泉』は想像通り地面から水が吹き上がってくる技で、それは地面がどんなで出來ていたとしても突き破って出てくるものだから、地面を掘るのにも使えるんじゃないかって言うことらしい。それでもかなり地道な作業になるってケイ君は言うんだけど。
「まあ、新たなスキルを求めてやると思えば幾らか希は見えてきます。得てしまえば、あとは何とかなるでしょうからね」
へぇ、ケイ君が私みたいなことを考えるとはね。ケイ君は普段から、私とは違ってちゃんとした格で先を見據えているから、手にるとは限らないスキルをアテにしたのは正直、意外だと思った。
「そう。じゃあ、堀作りはケイに任せようかしらね」
「それじゃ、ハープと私とリンちゃんは木の係?」
「今すぐ出來て、作りの材料になるのは木だから、そういうことになるね」
「リンちゃんはそれでいい?」
「はい。他にすることも無いですから」
「よし、決まりだね」
という訳で、最初の分擔は決まった。
ハープは木を切り出す係。
私とリンちゃんはその木を運ぶ係。
そして、ケイ君は水堀を作る係。
「うん。どうする? 早速行っちゃう?」
と、私がそう言った所、
「あ! ちょっと待ってください!」
ケイ君に止められた。
「どうしたの、ケイ」
「まだ、防衛線の的な規模、決めてないですよね」
「あー、そういえば…………」
そうだった。確かに決めなきゃどれくらい木が必要なのかも、ケイ君がどれだけ掘らなきゃいけないのかもわからないもんね。
という訳で、私達は外に出る。
「あぁ、今日も寒いですね」
「でも今回はそれが私達の武になりそうなんだよね」
「はい。それで、どうします?」
「うーん。そうだ、ギルドホームからユズ100人分を円形で!」
ケイ君が聞くと、ハープがいきなり訳わかんないこと言い出した。
「えっ、ちょっと何で私?」
「わかりやすくていいでしょ?」
「150m程ですね。わかりました」
「ケイ君も何でわかるの!?」
ケイ君には私の長教えてない筈。だったら、何故わかるの? まさか、超能力……
「俺の長が150cmなので同じくらいのユズさんはそのくらいかと。それとユズさん、超能力なんかありません」
「え、見かされた……」
するといつも通り、私の橫で吹き出す音が聞こえたけどこの際、気にしないでおく。
「それとですけど、ハープさんの案で俺は丁度良いと思いますよ」
「あれ、ふざけて言ったんだけどなぁ」
「まあまあ……それで、ここからが問題何ですけど。その半徑150mの円を作るに當たってそれ相応の長さの紐がしいのと、一応スコップもあると嬉しいんですが、心當たりありませんか?」
「紐。紐かぁ……」
「スコップねぇ……」
多分紐は、コンパスでも作るつもりなんだろう。
それから、スコップは堀作りの補助のつもりなんだろう。間欠泉だけでは細かい所とか大変そうだし。
うーん、と私とハープがギルドホームやら街の道屋などを思い浮かべている中、突然リンちゃんが聲をあげた。
「た、多分ですけど…………騒ノ會のギルドホームに両方共あった様な気がします。お二人が偵察に出掛けてる途中、し案して貰ってたので」
「おお、ナイス、リンちゃん!」
「ひゃうっ!」
ハープがリンちゃんに抱きつく。リンちゃんは突然のことに驚いてるから、普段ならハープに何か言うんだけどリンちゃんが可いからそのままにしておこう。
「んじゃ、私、行ってくるよ」
ハープはリンちゃんに抱き著きながらそう言う。
「うん、わかった。じゃあ、連絡れるね」
「うん」
「あれ? もう返ってきたよ!」
私が連絡をれると、なんとすぐ返事が返ってきた。シェーカさんもナイスタイミングだ。なんと都合の良い。暇になってフレンド一覧でも見てたのだろうか。
「ほんと? で、なんだって?」
「別に構わないわよ、だってさ!」
「よし! じゃあ、全速力で行って帰ってくるから待ってて!」
「うん、わかったよ。気をつけてね…………ってもう行っちゃってるし」
ハープはし早口でそう言い、スタートを切ったかと思えばすぐにその姿が小さくなった。もうあれ、ブラストさんに限りなく近くなってんじゃないの?
「それじゃあ、私達は待つに徹する訳だね」
「そうですね。他にすることありませんし、ハープさんを待ちましょう」
そういう訳で、私達は第二回イベントに向けた防衛線作りは幸先の良いとなった。
因みに、ハープはスタートから20分程で帰ってきたので徹するまでも無かった。もうこれ絶対おかしいって。
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