《極寒の地で拠點作り》防衛線作り その五
「き、來ました! ユズさん來ました!」
「え? 何が……って! 私も來たよ!」
私達は手を繋いで、上下にブンブンしてはしゃぐ。それだけ私達を喜ばせるのは、數は何本目だったか忘れたけど、固定して埋め終わった直後、私達にも遂にソレが來たことだった。
「えっと、なになに?」
「……『柵作り』、ですって!」
「ほんとにそのままだったね…………」
そう、ケイ君が持っていた様な任意スキルが私達の所にもやってきたんだよ! 嬉しいことこの上ないね、どうせ私の所には來ないものだと思ってたから。
「それで効果は何かな、っと」
「えーと、『簡単に柵を作ることが出來る』? どういうことでしょうか」
「なんか凄くアバウトだよね」
「うーん、とりあえず使ってみましょう」
「そうだね。じゃあ私が使うよ。『柵作り』!」
【ユズの柵作り!】
【しかし何も起こらなかった】
私はそのスキルの名前を言う。
けれど、何も起こらなかった、となってしまった。
「え? どういうこと?」
「……もしかして、材料となるをってやらないと出來ないとかじゃないですかね」
なるほど……流石に魔法じゃないんだし、何も無いっぽい所から木とか鉄とか出されたら駄目だもんね。そうして、リンちゃんの助言通り二本の原木を両手でれて同じ様に呟く。
「『柵作り』」
【ユズの柵作り!】
お、今度は問題無いみたい。
何が起こるのかドキドキしながら様子を見ていると、私がれていた二本の原木が消えた。
「えっ? え、何処に……」
まあ場所は、作り途中の柵の橫を思い浮かべながら使ったから知ってるんだけど、目の前でいざ原木が消えるとやっぱりこう慌てちゃう。
その謎現象にリンちゃんもし驚いていたけど、何処に行ったかはいつも通り指を差したリンちゃんが知らせてくれた。
「あっ、ユズさん! 見てください!」
「……えっと?」
二本の原木は今まで作ってきた柵と等間隔でその橫に並んで柵の一部と化していた。
「おおー! 凄いよ、これ!」
「わ、私もやってみたいです!」
そう言ってリンちゃんも『柵作り』する。
リンちゃんと柵が同時に見られる位置で見ると、原木が瞬間移した様に……いや、してるのか。と、そんなじだった。
それから今、気づいたんだけど、任意スキルって総じてMP消費しないのかもしれない。それなら使い放題なんだろうから、二本ずつという効率の悪さでも全然問題無い。
というか、これでもまだ作業開始一日目、初日なんだよね。もうすぐで東側半分終わるから八分の一だけどおかしいくらいの進捗だよ、私達。
まあこれからの一ヶ月、現実の事もあるだろうから皆が皆毎日來れるとも限らないし、これくらいが丁度良いと思う。
私とリンちゃんは片方がいなくても、同じスキルを持ってるから何とかなるけど、伐採役のハープがいないと結構致命的だ。木が無ければ私達は何も出來ない。でもまあ、なからず影君が木を運ぶペースに追いついてそういう時間は出來るだろうけど……いいや、その都度考えよう。
「私達の今までの苦労はこれの為だったんですね!」
「そうなるね。私も土塗れにならないで済むし」
「なんか私、気合ってきちゃいました! ユズさん! 影さんが持ってきてくれた木、全て植えちゃいましょう! ね! さあ、早く!」
おおう、リンちゃんが今までに見たことないくらい張り切ってる…………原木運びやら柵作りの反だと思うけど、これにはハープのAGI探求のテンションに通ずるをじる。下手したら凌ぐ。
「……リンちゃん、大丈夫?」
「大丈夫って何がですか! ユズさんがやらないなら私がやっちゃいますね!」
「あ、ちょっと!」
もしかしてリンちゃんは、自分があまり活躍出來てないこと気にしてるのかなぁ。それで今、自分に出來ることを見つけて率先してやろうとしてるのかも。
でも、リンちゃんは充分貢獻してくれてると思うんだ。この歳であれだけのことやってくれるし、何より私達の中で唯一の回復役だし、そうじゃなくてもリンちゃん自癒し枠だし。
そりゃあ、ハープのプレイヤースキルにもケイ君の思考にも私の……私の……あれ、私自の何かってなんだろう。向こう見ずはマイナスだし……まあ、いいや。
とりあえず、二人のソレには適わないかもしれないけど、個あってこその和みの館なんだから気にしなくてもいいと思う。
私はそんなことをせっせと柵作りをするリンちゃんを見ながら、杞憂かもしれないけど考えている。リンちゃんは良くも悪くもそういう格だから私達が守っていかないと。
「リンちゃん、私もやるよ」
「はい! では、互にやりましょう!」
そんな勢いにを任せながら、私は柵作りに取り組んだ。すると予想通り、しっかり影君に追いついてしまった。
作る場所を思い浮かべながら両手をれて飛ばして確認して代、みたいな流れだったけど主にリンちゃんの掛け聲で餅つきしてるみたいになった。案外、楽しかったからいいけどね。
「追いついてしまいましたね……」
「そうだね。でもケイ君もし遠くに見えるくらい進んだし、良かったんじゃないかな」
「そうですね…………確かにかなり進んだ気がします」
一旦作業を中斷することになったせいか、リンちゃんのテンションも元通りになった様で落ち著いた様な疲れた様なじでそう言っていた。
因みに進捗は、影君の今の所の原木を全て消費した結果東側はほぼ終わってしまった。この調子なら、見張り臺などの柵の側の設備に時間を當てられそうだ。
「…………」
「どうしたんですか? ぼうっとして」
「ん? ああ、いや、ちょっとね……」
「……?」
ふと、北西の山の方を見ると一部、山が出してしまっている所が見えた気がしたので見ていたら、リンちゃんにはそれがぼうっとしていた様に見えたらしい。
それで影君には悪いけど、ここらで一旦私達は休憩してハープの様子を見に行くのもいいかもしれない。大方、ハープも何かしらの任意スキルは手にれてると思うし。
そう思い立ったが吉日。早速リンちゃんをって様子を見に行こうと思う。そうしてってみたら、二つ返事で了解してくれたので片道十分ちょいで行く。道中現れた敵モンスターはすぐさま経験値になってもらったから問題無かった。
山に著くと、先程し見えた気がした通り、最初にハープが宣言していた様に斜面は広場化して見通しが良くなっていた。切り株だらけだし、何十本切ったんだろ。
更に進むと相変わらず木を切るハープとそれを丁度運ぼうとする影君を見つけた。
「ハープ」
「あれっ? 二人共どうして……あ、まさか」
「うん、そのまさか」
「……!!」
ハープが想像する『まさか』は多分、柵作りが一旦終わったことを意味するだから肯定したんだけど、それが影君も同じことを考えていた様でなんかひたすら謝る作をしている。
「あ、影君! 影君のせいじゃないから! 私達がペース早くて追いついちゃっただけだから、さ。だから謝ったりしないで、ペースも今まで通りでいいから!」
私が慌ててそう言うと、影君も了解してくれた様で元の雰囲気に戻った。
「それで? 何しに來たの?」
「ハープさんの様子を見に來たんですよ」
「ハープなら何かしらのスキル、習得してるんだろうなぁ、って思ってね。あとは単純な休憩も兼ねてかな」
「ふっふっふ、ご想像の通りその何かしらのスキルは取得してるよ。でも見て驚かないでよね?」
そう言ってハープは最初の時の様に近くの木に左手を添えて、右手でダガーを幹に向かって振る。
そしてすかさず二撃目を振ると、木は分斷されてハープの手によって倒された。
「おおー!」
最初はノコギリの様に前後にかして倒していたのにさっきのやり方は手斧に近いものだったと思う。そしてハープはその木をたった二回で倒してしまった。切りきるまでの時間僅か三秒、元から早かったけど凄い進歩だ。
「今はそれでこそ二回だけど流石に何かあったら危ないからさ、二回にしてるんだよね」
ハープはそう言った。
要するに一回でも行けるっていうことだ。うん、やっぱりやることが違うね。
「へぇ…………それで、スキルの名前は?」
「あー、えっとね。『木こり』、だったかな」
説明文を聞くと、『木を切りやすくなる』ということらしい。文面からは相変わらずアバウトさが滲み出てるけど、元々の作が私達よりも幾分か単純な所もあってか妥當な気がしてくる。
「で、ユズ達の方はどのくらい行ったの?」
「東側は……もう終わりますよね?」
「うん、もうすぐだね」
「ああ、もうそんなに行ってたの? 私、そこまで沢山切ったつもり無いんだけどなぁ」
「いやいや、かなり切ってると思うよ?」
見回してみても辺り一面、切り株だらけ。
一つの木で基本的に五本くらい採れるとは言ってもかなりの量だ。
「そうかなぁ?」
「そうだよ」
ハープはまだ納得出來ていないみたいだ。まあ集中して同じ作業ずっとやってたらそうもなるか。
「じゃあもっと頑張ってやらないとね。追いついたって言うくらいだから、どうせ二人共スキル習得しちゃったんでしょ?」
「うん、まあね」
「……! ……!」
「あはは、シャードも頑張るってさ」
「シャード?」
「ああ、言ってなかったね。この子の名前、シャードになったから」
「由來は……そのまんまだからいいとして。改めてよろしくね、シャード君」
「よろしくお願いします、シャードさん!」
「……!」
影君改めシャード君はペコリとお辭儀をしてくれた。
「うん。じゃあ、もうすぐ日も傾いてきそうだしそろそろ作業に戻るよ」
「わかった。それじゃあ私達は々合間に柵の側どうするか考えとくね」
「じゃあ、こっちは二人に考えさせないくらいのペースにする様に頑張るからね」
「……!!」
「あはは、覚悟しとくよ」
その後、日が暮れるまでし作業を進めて大収穫の一日目は終わった。
しハープとシャード君のペースが上がったおで、今日だけで東側を終わらせることが出來たから良かったかな。
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