ﾁﾘﾝｯﾁﾘﾝｯ

"なんだいこの音は……"

森の奧の奧深く。

そこには名もない１人の魔がいた。

醜いその姿は誰からも恐れられ、人っ子一人いない場所に住まざるを得ない孤獨な魔だった。

自分の所有地で見知らぬ音が聞こえ、外に出てみると１人、寂しそうに怯えている１人の小さな子供が家の前で立っていた。

だらけで顔も見えない。

中傷だらけで醜いその姿に魔は目を見張ると、

「……お前、どうやってここまでってきたんだい。

親はどうした？」

ここに來れたことを驚いたかのように一言呟いた。

年「……ママもパパもみんな死んじゃった。」

目らしき場所からは大粒のの涙が溢れ、持っていた鈴を落とし大泣きし始めた。

「おや……、なんの縁やら…。

私も家族は殺されたんだ。

さぁ、おいで、寄りのない醜い人の子よ。スープをやろう。」

年「……え……

ヒッ」

魔を見た年は怯え小さな悲鳴をあげた。

「ふん、我が怖いのかい。

みなそうだ。どいつもこいつも同胞も人の子も変わりはないな。親切にしてやろうと思っても誰も醜い我に近寄りはしない……。

我の子が嫌なら人の世界に戻してやろう。」

醜くも優しい魔は人の子を持ち抱えると飛び立った。

「さぁ、行くがいい。

お前の帰る場所に連れてきてやったぞ。」

年「……あ、ありがとう……、」

「ふん、禮はいい。我が怖ければもうこの森には近づかないことだ。」

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１５年後

ﾁﾘﾝｯﾁﾘﾝｯ

「はぁ…、また迷い貓か？

最近は捨て貓が多いもので困る…。

まったく……勘弁してしいものだ……」

ｶﾞﾁｬﾝｯ

「迷い貓よ、著いてくるが……っ……お主、あの時の醜い人の子か……？！なぜまた」

魔の目の前には、長したあの時の年が立っていた。

傷でだらけだった醜い姿は跡形もなく、しい青年に長していた。

年「優しい魔さん、迷ってしまいました。

だから、僕を貴方の人にしてください。」

「……お前……迷ったわけではなかろうに…。正気か？醜い我の子ではなく人になるために來たとてすぐに逃げ出す恐ろしさよ……。」

年「いいえ、貴方はしい。」

ﾊﾟﾘﾝｯ!!

何かが、割れた音がした。

真っ直ぐな噓偽りない年の言葉は何千年も前にかけられた魔の呪いを解いたのだ。

年の前にいたのは、醜い魔ではなく、

それはそれは花のようにしい魔だった。

「……っ、ありがとう……。」

魔の目からは涙が溢れかえった。

年「今度は僕が恩返しをする番ですから。」

その後、生涯魔と年は幸せに暮らしたそうな……。