《【お試し版】ウルフマンの刀使い〜オレ流サムライ道〜》一章03
飛び出し、一足跳びに大地を駆ける。
ウルフは一匹では大した力は無いが、群れ……パーティを組んだ場合、傘下に置いたメンバーの敏捷を上昇させる効果がある。
そして最初に選んだワードスキルの扱い方もコツを摑んできた。
オレが最初に選んだのは3つ。
種族にとって死にスキルと呼ばれようと、これでなんとかしなくちゃいけない。
☆ワードスキル:3/3
<斬:武の切れ味上昇>
<刀:刀の會心率上昇>
<払:反発する力を付與>
刀を構え、スキルを発する。
このゲームではスキルを扱う際に減るゲージは一つではない。
視界の左上には常にHP、MP、ST、ENの4つのゲージがあり、これらを消費することによってスキルを行使することになる。
HPは生命力、これが盡きれば教會へ一直線。あまり減らすのは得策ではない。
MPは魔導力、自然系スキルを扱う場合のみ消費するゲージだが、生憎と『種族:ウルフ』とは縁遠い。あまり世話になることのないゲージだ。
STはスタミナ。これが切れると一定期間一切の行が出來なくなる。これは全ての行に対して消費される為、HP管理よりも重要なゲージである。
かなければENを消費して回復可能。
ENはエネルギー。俗に言う満腹度。こっちはあまり減る要素はないが。満腹指數が高いほど様々な恩恵が得られる。また、なくなりすぎても狀態異常が悪さをするので放って置けないものとなっている。
90%以上でステータスにプラス補正
80%以上でHP微回復
70%以上でST微回復
60%以上でMP微回復
50%恩恵なし
40%恩恵なし
30%で回避系スキルにマイナス補正
20%で攻撃系スキルにマイナス補正
10%で察知系スキルにマイナス補正
0%で意識を失う、等だ。
<斬><刀>はHPを消費し<払>はSTを消費する。このゲームではスキルを同時に発することができるし、足して使うことも可能であると先ほど発見したばかり。
助走をつけて飛び出したオレは抜刀した刀を前面に突き出し、<刀>スキルを発した。これでヒットした時の會心UP。《HP100→99》
続けざまに刀に対して<払>を発した。走ることによって減ったSTが更に消費されていく。
《ST98→97》
手元から弾かれた刀は勢いを増してホーンラビットを捕捉、直撃を確信した。
しかしでホーンラビットのが直前でブレる。
刀はダメージを與えることに失敗し、ホーンラビットの殘した殘像を切り裂き、草を數十センチ単位で切りそろえた後地面の上に転がった。
くそ、見失った!
こう言う時に頼れる味方は……
「闇影!」
『任せるでござる!』
を伏せて<隠>を発していた闇影はホーンラビットから捕捉されておらず、相手のきを察知する為に更に<見>を発、<報>でオレに潛伏位置を逐一教えてくれた。
応答も<報>のスキルで返してくれる徹底ぶりだ。
オレはその間に落ちした武を徒歩で拾いに行く。あまりSTを消費したくないからな。
闇影からいい報を貰ってある場所へと駆け出した。STを消費すべきタイミングはここだ。そう直した。
刀を口に咥え、四足歩行で大地を駆ける。
これが本來のスタイルであるとばかりには思考に順応し、オレは瞬間風になった。
それに、これはSTの消費が二足歩行で走るよりもないことに気づく。
し距離をとってホーンラビットの背後から強襲。だが勘のいいホーンラビットは皮一枚で回避し、赤茶の粒子を撒き散らすだけに留めた。相手のHPゲージは數ミリ減。
だが、はは……『出』の狀態異常の付與に功したぞ。
ホーンラビットは余裕の表から一転、苦悶の表を浮かべ、完全に狙いをオレに定めたようだ。
全のを逆だたせ、威嚇しながらの突進攻撃。
「バカめ、背後から來なければただの的よ!」
怖いのは角だけだ。突進自の威力も加味されるが、この角さえどうにかすればなんとでもなる。
納刀して武の裝備を解除し、角の側面を掌底で<払>い、そのまま真下から膝を顔面にクリーンヒットさせた。
ハッハー、突進攻撃が仇になったな!
速度の乗った突進に膝がめり込み、赤茶けたの粒子を散らす。
グリーンだったホーンラビットのHPゲージは勢いよく減ってオレンジにまでなっていた。
PCはMobのHPをパーセンテージで見ることはできない。で判斷するしかないのだ。
グリーンはHP満タン、オレンジはHP半分前後、そしてレッドはHP20%以下。
が変わる度に狀態異常にもかかりやすくなる。
例にれず、ホーンラビットは『気絶』狀態に陥っていた。
膝蹴りが効いたのだろう。現在隙だらけである。
チャンス!
抜刀し、正々堂々と背後からバックアタック。どうせ武を扱えばダメージ半減だ。これでトドメを刺しきれなければ闇影にずっとネタにされる事は想像に難くない。だから使えるものはなんでも使う。
太に刃先を向けた上段の構え。
もちろんスキルは全部のせ。外したら泥仕合確定だ。一刀の元に斷ち切る。斷ち切ってみせる。
「イヤーーーーッ!!」
咆哮一閃。<払>で加速した刃先は空を切り、熱したナイフでバターを切り分けるごとく、ホーンラビットのをり落ちるように貫通した。一刀両斷である。
切斷面から赤茶の粒子が勢いよく吹き出し、顔を、皮を染めていく。
特に汚されたと言う覚は無いが、何故かオレの気分は高揚し、べろりと舌舐めずりをしていた。
刀を振り、油を落とし、納刀する。
「切り捨て免」
捨て臺詞を吐き、悅に浸った。
なんだろう、いつになくいい気分だ。
ただのMobを倒しただけだと言うのに、何かが満たされた気がした。
ああ、そうか。これがLVUP。
他のゲームと違って派手なファンファーレがならないから気づかなかった。
見ればLVは1から2へ上がっており、ステータスが種族補正分上昇していた。なお、初期ステータスは0である。
これがクソゲーと言われる所以かもしれないな。そういえば今の狀況はどうなっているかな?
ステータスでも見てみるか。
名稱:「ただの」マサムネ
稱號:なし
種族:ウルフ
LV:2
HP:80%
MP:100%
ST:60%
EN:70%
力:0→3
知力:0
筋力:0→3
神:0
用:0
敏捷:0→3
幸運:0
☆種族特
《格闘得意:素手の時ダメージ上昇》
《武苦手:裝備時ダメージ半減》
☆種族固有スキル
《統率:PT牽引時味方の敏捷上昇》
☆ワードスキル3/3
《斬》初級スキル:武の切れ味上昇
《刀》初級スキル:刀の會心率上昇
《払》初級スキル:反発する力を付與
他にはスキルポイントが10増えているくらいだが、スキル枠が解放されてないのでひとまず保留だな。
そこへ潛伏していた闇影が駆け寄ってきた。どうやらホワイトラビットの処理をしてきたようだった。アイテム欄に見知らぬ素材がっていた。
「LVUPおめー」
「ありがとう、おまえのおかげで一矢報いることができたよ。謝してる」
「倒したのはマサムネ殿でござろう?」
「闇影が居なければこうも上手くいかなかったさ」
「でもやはりマサムネ殿は凄いでござるな」
「何がだ?」
「四足歩法。あれは種族を獣人にした程度じゃなかなか至れない境地でござるよ?」
「え、普通にできたぞ?」
「ふむ、それも格変調の仕事でござるかな?」
「そうだな。そうであってほしい。それよりも闇影。素材採集についてだが、なんの素材を集めればいいんだ?  今ならなんでもできる気がする」
「その事でござるが……」
闇影は急に表を暗くさせ、アイテムを一つ取り出して見せた。
「これは?」
目の前には『ボロボロの皮/品質:劣』と表示された素材。
そしてもう一つ取り出し、そちらは『ホワイトラビットのもふもふ/品質:高』と書かれていた。
「これが現実でござるよマサムネ殿」
「……なんの話だ?」
「クエストの話でござる」
「クエストの?  素材採集か?」
「うむ。拙者たちが優先して集めるのはホーンラビット素材でござってな。マサムネ殿が討伐して手したボロボロの皮ではなく、ホーンラビットのモコモコなのでござるよ」
「それってもしかして……」
「さすがマサムネ殿。察しがいいでござるな。討伐処理の仕方によってはドロップ素材の品質が決まるので出來るだけ綺麗な狀態で倒してほしいのでござる。まずはモコモコで手出來なければクエストはいつまでたっても終わらぬでござるよ」
「そうか……目標の數は?」
「20でござるな」
「その、手伝ってくれたりなんかは?」
「拙者はサポートオンリーでござる。マサムネ殿が脅威を排除してくれたおかげで安全にホワイトラビットを処理することができたでござる。パーティでも組まない限り戦闘なんて無縁でござるが故」
「そうだよな。お前はそういうやつだった」
「拙者も協力するでござるよ」
闇影は肩をすくめ、俺の背中を叩くと同するように言ってきた。
「ちっくしょぉおおお!!」
そのあとめちゃくちゃウサギ狩りした。
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