《終末語》第3話「やるしかないよな」#2
・「あ〜…どうしたもんかなぁ…」
灰崎春人は自分の自室のベットに座って悩んでいた。彼が悩んでいる理由は1つ。彼が今住んでいるこの廃墟の一部に侵者が現れたのだ。しかも、この侵者というのが彼の人の日野崎ひさぎだった。侵者は今回が初めてというわけではなかった。今までに何回も今回のような事はあったし、そのたびに追い出すなり、殺すなりしていた。(食べてはいない。)しかし今回は自分の彼だ。殺さずに追い出さなければいけない。それも自分の正を隠してだ。
「難しいなぁ…。まぁ、やるしかないよな。行くか。」
そう言いつつ彼はいつもにつけているショットガンを腰につけ、で汚れた金屬バットを持ち、フルフェイスのヘルメットを被って、彼のいる商業施設の南側に向かうのだった。
・「よお。こんな所で何をしているんだ?」
目的地の南側の商業施設についてから約5分で春人はひさぎにあった。彼は彼が自分の聲で自分だとわからないように自分の聲帯をあらかじめ変えていた。これは彼がゾンビになった時に得た能力の1つである。そんな彼を前にひさぎは帯刀していた刀を抜いて、戦闘態勢にっていた。
「こんにちは。あなたには関係のない事よ。」
「そうかい。つれないねぇ…でも、何してようが知らないね。こっから先はいかせない。俺のテリトリーだからな。」
「へぇ〜…そうなの?でも、それは誰が決めたの?」
「俺だよ。俺が決めた。ずっと前にな。だから行かせない。それでも行くってんなら……殺すぞ?」
「はぁ…アンタバカなの?協定で獨占行為の類は止って聞いてないの?」
「へぇ〜…そうなのか。でも、知らないね。だって俺はゾンビだからな。」
「!?」
(まぁ…そんな反応だろうな。)
春人は驚くひさぎの顔を當たり前だという様にヘルメット越しから見ていた。それもそのはずで、生き殘っている人間の間で春人達の様な人間の理が殘っていて、姿も人間に代わりないゾンビがいる事はまだほとんど知られていない。変異と呼ばれるような巨大なゾンビもいるが春人達程珍しくなかった。
「噓でしょ!?アンタ、本當にゾンビなの?」
「ああ。噓はついてないぜ。俺は4月10日のあのパンデミックのあった日に噛まれてゾンビになったやつの1人さ。もっとも他に俺みたいなやつがいるかは知らないがな。」
(まぁ、本當に俺達以外にこんなゾンビがいるのかも疑問だが。)
春人も、自分や自分の仲間達以外に人間に近いゾンビがいるのか本當に知らなかった。春人達のような人間の理を保ってゾンビになるには、ゾンビに噛まれるか傷口から染してから10分以にウイルス用の特殊なワクチンを投與しないといけなかったからだ。そして、そのワクチンを作れる人を春人は1人しか知らなかった。そして、その人はもう死んでいる。だから春人自もいないと信じて疑わなかった。だからひさぎに『他にいるかは知らない』と言ったのだった。
「まぁ、そうゆうわけだ。お嬢さん。俺が優しく話しているうちにとっとと帰れ。でなけりゃ、俺はこのバットとアンタの頭でスイカ割りをしなけりゃならん。」
「じゃあ、目隠しがわりにアンタのそのヘルメットの向こう側の両目を潰してあげる。」
(まぁ…そうなるだろな…)
春人はひさぎと彼になる前から彼の事を知っていた。なぜなら、春人とひさぎは小さい頃からの馴染だったからだ。
(俺は、ひさぎの格をよく知っている。ある程度理解しているつもりだ。だから次にどうゆう行をとるかははっきりわかる!)
だから、彼はひさぎにあの様に言ったのだ。ジョークに似た挑発に彼はよくのる。そしてその後は…
「挑発をした相手を間違えたわね!」
(やっぱり斬りかかってきた!)
春人の予想していた通りにひさぎは猛スピードで間合いを詰めて、手に持っていた刀で斬りかかってきた。シンプルに上段からの斬撃だが、その一太刀はあまりに速く、鋭い。普通の人間ならかわせずにその一撃をもらってしまうだろう。そう、普通なら。春人はその鋭い一太刀を自のをしずらして必要最低限のきでかわす。その後にひさぎがはなった下段、中段、右、左の四方八方からの斬撃も持っていたバットでいなすか、必要最低限のきでかわした。そして、ひさぎの攻撃は1発も當たらなかった。
「ハァ…ハァ…な、何で1発も當たらないの!?」
それもそのはずである。今、春人はゾンビである。能力は普通の人間の數倍はゆうに超えているし、視力もまた異常だ。だから今の彼にこの斬撃をかわすのは簡単なことだった。そして、この他に當たらない理由がもう1つあった。ひさぎは、ゾンビパンデミックになる前は、大人も出場する様な剣道の全國大會で優勝するような実力者だった。そして春人は、ひさぎのサポーターをしていた。そんな春人は、ひさぎのサポートをしながら、見ていたのだ。試合中の彼の太刀筋を。だからこそ今の春人は彼の攻撃に1発も當たらず、全てかわすことが出來た。そして春人は正を隠しているため、ひさぎはそのことを知るよしもなかった。
「はぁ…力の差が分からないって怖いな。」
(さぁ、ここからどうするか…)
そんなことを言いながら春人はさっきまで続けていた攻撃で息が上がっているひさぎを見て考えていた。実は、春人はここから先はノープランだった。
(ひさぎをバテさせるのは功した。でも、この後は考えてなかったな…。)
何かいい方法はないものかとひさぎに考えていることをバレない様に考えていると、1ついい考えを閃いた。だが、それは賭けにも近い危険な策だった。
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