《T.T.S.》FileNo.1 Welcome to T.T.S. Chapter5-3

腹に響く重い打撃音が、間斷なく、徐々に強くなっていた。

非常燈のみが照らす不気味な靜寂の中にあって、その音は殊更高圧的且つ無慈悲に響き渡る。

施設の電気回線や自家発電區畫は、唯一的明星軍團イーパッケージの作戦初期の段階で破壊されており、今は災害時にも臓電力で作するだけがいていた。

故に。

「っと、まぁたこの類かよ」

突如飛來した紫電を纏った二本の棘を躱しつつ、地上から20cm程の高さに滯空する掌大の小型ヘリに対峙する。

プロペラを四枚で滯空するソレは、警備用の自律起型ロボットで、機上部に取り付けられたレールが飛ばす二本一組の電極で相手を拘束する。

ロボットヘリが次の電極をリロードするまでの僅かな間隙を突いて、源は唯一的明星軍團イーパッケージからくすねたマガジンを向ける。

迷わず、最上部に顔を出す弾丸を指で弾いた。

その気になれば速でく源の指は、銃のスプリングよりも尚速い。

音速にやや遅れを取る速度で放たれた弾丸は、見事に機中央を捉えた。

「ほんとにロボットとめなくていいの?」

「あぁ、今は大禍の開放が優先だ」

空になったマガジンを放り投げた源は、あと二つ角を曲がれば怨敵と再會する事を確認する。

足を止め、相棒に問うた。

「紫姫音」

「なに?」

「大禍解放まで後どん位掛かる?」

「もうすぐでおわる」

「そぉか、宜しく頼む」

決著の時が迫っている。

予想外の絵の行で、源の思い描いていた結末は大分ズレて來てしまっていた。

正直、源はギルバートと大禍を使って心中する心積もりでいた。

ただ、それではバディを明治時代に置き去りにする事になってしまう。

紫姫音の起條件は源自の生命活とリンクして起している為、後始末を任せる事は出來ない。

これはT.T.S.の報を護る為の仕様であり、仕方がない。

だから、源は何としてもギルバートに生きて勝利しなければならなかった。

しかも、この勝利には重大な意味が加わっている。

“GOD bless you”

源以上に実力主義者リアリストな絵が放った、余りにも他力本願ファンタジーな言葉。

そこに込められた大量の意味は、紫姫音の報告で理解した。

気付いた時には呆れたが、絵らしい推察と手段はどこまでも彼の手垢をじさせ、実に愉快だった。

では、それにどう応えるべきなのか。

『なぁに、簡単な事だ』

の振り方を考える時は、いつだってこの考えに立ち返って來た。

『俺は武だ。武は使用者の意のままじゃなきゃなんねぇ』

正岡絵は、明確な意思でいかなはじめ源を送り出した。

ならば、源は“Die Haendeum Gott zu fangen”としてではなく、T.T.S.No.2ストレートフラッシュの“片手間ワンサイドゲーマー”としてギルバートに勝てなければ意味がない。

『アイツの為に戦い、アイツの為に勝つ。そんだけだ』

幸い、絵は逆転のカードまで用意してくれている。

これで勝てない様では、そもそも絵の相棒バディである資格がないという事になる。

『厚かましぃ期待に応えんのも武の役割だぁな……そんじゃ』

「いっちょやってやっかね」

決意と頭の中に渦巻いていたあらゆるを洗い流す様に溜息を吐き、決意も新たに肺に深く酸素を送り込む。

熱を帯びた中の患部から心音を辿り、耳を澄ませる。

自らの奧底から湧き上がる地鳴りの様な脈が、生命としての証明をんでいた。

ふと、絵の言葉がフラッシュバックする。

“アンタはもう武じゃない”

『……そぉでもねぇさ』

「紫姫音終わりそぉか?」

「うん、カウントダウンひょうじするよ」

「宜しくどぉぞ」

呟いて、歩み始める。

『だって俺ぁな』

學迷彩カメレオンを起させ、源の姿は景に溶けた。

マガジンパックを持った両手を孔雀の雄の様に低く上げ、歩調を強める。

口元が、自然と緩んだ。

『俺ぁこんなにもお前の武になれて喜んでいる』

大禍の詰まったパンドラの匣が開く。

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