《T.T.S.》FileNo.0 The Christmas Miraculous offstage Chapter 2-2

A.D.2014.12.24 17: 48 日本國 東京都渋谷區

8階建てのビルの屋上でも、その眺めは中々に絶景だった。

スクランブルを行きう人々はネオンの照明をけて生き生きと躍し、街に命の脈を與えている。

「平和なもんだ……いぃ時代だな」

片足を虛空に投げ出し、頬杖で視界を支えつつ、い(かなはじめ)源は紫煙と共に言葉をらした。

ポニーテールに結わえた長い黒髪がたなびき、白く揺う言霊と紫煙とほけが強風に流されて行く。

常人ならば恐怖の勝る絶壁にあって、源は全く恐怖をじさせないリラックスした様子で、ワイヤレスヘッドホンにを揺らしていた。

周辺狀況確認と言う名目でぶらついた際、気盛んにも絡んで來た若者から奪ったヘッドホンは、お高めな見た目にマッチしたいい音を奏でる。

紫姫音に探させたこの時代の音楽も、夜の東京にはぴったりだった。

『普通にいぃな、誰ん曲だ?』

視覚に広げたイコライザーにはBOOM BOOM SATELLITESの字が明滅していた。

ビッグ・ビートの抉る様な低音が雑踏と喧騒を刻み、かき鳴らされるギターがクラクションの様に冬空を裂く。やがて二つの饗宴はモッシュし、人々はただそれに巻き込まれて行く。

師走の名を持つ月の終わりに相応しい、1年と言う時間が螺旋のり臺へルタースケルターを転がり落ちて行く様な聴き応えだ。

な時の刻みの速さを前に、人々を襲う混や狼狽を、BOOM BOOM SATELLITESはび続ける。

その狂騒的で混沌とした音が、人の死ぬ瞬間を目撃すると言う、給金以外には何も得る事のない仕事を前にした今の源には、心地良かった。

し上機嫌に、曲の一部をハミングした時だった。

〈そろそろ時間だけど。今どこ?〉

骨伝導音で聴覚に直接伝わる音聲と共に、視界一杯に広がる眼下の景にカーソルが現れ、ハチ公像前のをロックする。

信と共に完了した逆探知機能が、送信者の顔をズームアップする。

言わずとも知れた源の相棒バディ、正岡絵の姿がそこにあった。

一面に広がる群衆の中にあって、その場所だけスポットライトが當たった様だった。

十頭のスラリとしたに、黃金比の顔立ち。

ただそこにいるだけで絵になる強烈な存在に、周囲は辟易としている。

「ここにいるよ」

敢えて返信と言う形は採らず、源は手を上げてみる。

勿論、この応えが屆く訳もなくて。

〈……ちょっと、何か言いなさいよ〉

斷熱と保溫に優れた任務用のスーツに、寒気が走る溫度の聲が聞こえた。

「怖ぇ怖ぇ……紫姫音、時間になったらちゃんと行くから待ってろっつっとけ。そんでも何か言う様なら適當に応えといてくれ」

〈りょーかーい〉

間の抜けたの聲を聞き屆けると、源は吸殻を思い切り指で弾いた。

両腕を速でかせる特異質の放つデコピンは、亜速に達する。

吸殻は熱に焼かれ流星の様に燃え盡きた。

「さぁてと」

大きくびをし、源はおもむろに絶壁から距離を置く。

と肩回しをし、首を數回捻ると、気分も整って來た。

「俺も一仕事しとくかね」

落下防止のフェンスを登り切り、天辺で両腕に力を込める。

本任務の難點は、臨機応変さを求められる事だ。

故に、狀況確認とその更新は確度に関わる。

「まずは奴さんの場所確認から行きますかねぇ」

気を利かせた紫姫音が、咄嗟に違法時間跳躍者クロック・スミスの顔寫真を載せる。

男前だが、どこか華のない半眼顔がこちらを窺っていた。

整ってはいるが特徴のない顔は、雑踏の中では強いステルス機能を持っている事だろう。

玄山英嗣。

それが、今回の違法時間跳躍者クロック・スミスの名だった。

「見付けんのえれぇ大変そぉだな」

吸い出した骨格データをオートスキャン設定し、源はフェンスを蹴ってスクランブルの空に飛び立つ。

同時に、任務ツールから學迷彩カメレオンを展開。

そのを無明に溶け込ませ、速移のナイトクルージングを開始した。

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