《VRゲームでもはかしたくない。》第0章3幕
『商都 ディレミアン』に存在する案所は8階建ての建で、遠目から見たら大學のようにも見えます。
1階は大きなホールになっており、パーティーの募集やギルドメンバーの募集が行われる場所です。
2階から4階まではクエスト等の注ができ、階が上がるにつれ難易度が上がっていくといったじになります。
5階から7階までは多目的なスペースとなっており、ホームを持たないギルドの會議スペースや決闘に使われるスペース、図書館などがあります。
8階は現在『ディレミアン』を統括しているギルドのみが使用できるスペースになっています。
用があったのは4階の<転生>クエストカウンターだったので私はそこに向かいます。
「チェリー! 心の準備はできたかい?」
すーはーすーはーとリアルで深呼吸をしてエルマに宣言します。
「大丈夫。今日こそはクリアしてくるよ」
「頑張って! 畫面の向こうで紅茶飲みながら畫見るついでに応援してる!」
エルマのおかげで適度な張を持ってクエストがけられそうです。
NPCに話しかけ、<転生Lv.3>解放クエストと書かれた項目を選んでクリックします。
10秒ほどのカウントダウンが始まり、私は呼吸を整えます。
ヘッドフォン越しに聞こえてくる、ボリボリという音を意識から外して転送されるその瞬間を待ちます。
『<転生Lv.3>解放クエストを開始します。制限時間は20分です。』
何度も見たテロップが表示され、畫面がったあと、闘技場に転送されました。
『ゴ゛ギャギャギャギャ』
ヘッドフォン越しに強敵の鳴き聲が聞こえてきます。
では……參りましょうか!
モンスターは〔機械怪鳥 ヒクイ・ヴェロキラ〕という絡繰り仕掛けの大型鳥モンスターです。
外裝がとても固く、斬ることを主力にしているプレイヤーにはとても強敵です。
まずいつも通り、〔ヴェロキラ〕の視界から逃れるために、右手に持った【ナイトファング】のアクティブスキルを発させます。
「≪靜かなる殺戮サイレントキリング≫っ……」
數秒間敵に発見されなくなる武固有スキルを発し、〔ヴェロキラ〕の背後に回ります。
【ナイトファング】には未発見狀態でAGIの10%分ダメージにボーナスが付く裝備効果がついています。
「っと! ≪ダブルファング≫」
そしてもう一つの武固有スキル≪ダブルファング≫は左右の手両方に短刀または短剣を裝備している狀態で2回分のダメージを與えられるアクティブスキルが備わっています。
『ゴギャッァ』
やはり堅い……!
この二つを併用して離、≪靜かなる殺戮≫のクールタイムが終わったらもう一度と、何度も繰り返して今まで戦ってきました。
それでは勝てないのはすでに知っています。
今日〔ヴェロキラ〕を倒すために制作した左手の短剣【ペインボルト】を構えます。
こちらに向かって飛んでくる〔ヴェロキラ〕を橫に飛んで回避し、【ペインボルト】の武固有スキルを発します。
「≪サンダーエンチャント≫」
10秒毎にMPを100消費しますが、武に雷屬を付與することができるスキルを用いて大ダメージを狙います。
先ほどの一連の流れで私のMPは6720まで減っています。
闘技場ではポーション類が使えないのでエンチャントを維持できる時間は672秒、約11分で倒さなければなりません。
【ペインボルト】に≪サンダーエンチャント≫をした狀態なら火力が低い私でもダメージを多めに通せることが分かりました。
しかし決定打になる攻撃はなく、〔ヴェロキラ〕の急所に私の刃では屆きません。
みんなには緒にしておいたのですが、ユニーク【稱號】の【斬罪神】を持っています。
そちらのスキルは〔人型モンスター〕とプレイヤーにしか発できないので使えません。
裝備しているユニーク防【イナーシャグローブ】のパッシブスキルも発はしているのですがあまり効果がありません。
【イナーシャグローブ】にはもう一つアクティブスキルがあるのですが、発した場合、私のプレイヤースキルでは攻撃をはずしてしまうかもしれません。
AGIは〔ヴェロキラ〕より勝っているので何とか避けれていますが、HPが16530しかない私にとって、一撃でもクリティカルした場合運が良くても瀕死という結果になってしまいます。
5分ほど戦闘を続け、〔ヴェロキラ〕のHPを3割ほど削りました。
しかしこのペースのままだとMPが切れるまでに倒すことはできません。
苦戦しているとズズッという音と小さな聲で「ご馳走様」と聞こえてきました。
「チェリー。集中してるときにごめんね」
「ううん。大丈夫」
「チェリー。今日失敗してもVRアプデの開始前までにもう1回は<転生>クエストうけられるよ。失敗しても大丈夫。【イナーシャグローブ】のスキルつかってみなよ」
「そう……だよね。エルマ。これで失敗したら呪うから」
「えっちょっとまって!それは怖い!」
エルマの発言を意図的に無視し、私は【イナーシャグローブ】のもう一つのスキル≪輝く軌跡≫を発します。
「≪輝くグリッター・軌跡ムーヴィン≫」
TPを秒間100消費する代わりに、空気抵抗やなどを含む、に存在するすべての抵抗を無視することができるスキルです。
このスキルの発中は直線のきしかできなくなります。もし武が手に固定されていなければ持っていることさえ困難になるはずです。
私はTPの最大値が19000ありますが発にTPを消費する≪ダブルファング≫を今まで15回ほど使用しているので10000しか殘っていません。
殘りのTPでは100秒しか持ちません。
だったら……
「削りきる!」
私がスキルの発前に避けた〔ヴェロキラ〕がこちらに向かってきます。
橫にくこともできないので正面から迎え撃ちます。
左手の【ペインボルト】を構え、〔ヴェロキラ〕の突進をけます。
『ゴギャッギャッギャッギャ?』
「くっ……!」
吹き飛ばされ闘技場壁に衝突したことによりHPが4000程度減っています。
しかし目に見えて〔ヴェロキラ〕へダメージがりました。
頭部から尾部まで真っ二つに割れています。殘りのHPも半分を切っているようです。
機械特有の配線類を裂け目から垂らし、黒いオイルのようなものを撒き散らしています。
真っ二つになっても羽と足で用にバランスをとり立ち上がってくる〔ヴェロキラ〕に戦慄しましたが、殘り85秒しかないので急いで追撃をします。
座り込んでなくてよかった。
座り込んでたら立てなかっただろうし。
「ハッ!」
『ゴギャァアアギャァァ』
壁から一直線に〔ヴェロキラ〕の右半まで詰め寄り、もう一度【ペインボルト】を一閃し、の向きを変え、再び背中から壁に激突します。
1800程度と先ほどの半分程度のダメージなのは自分で作して突っ込んだからでしょうか。
殘り75秒。
今の位置からなら左右同時に斬れるっ!
向きを微調整し壁を蹴ります。
殘り70秒。
一閃。
『ゴギャギャギャギャアアアアア』
『ギャァアアゴオゴゴゴアアアア』
左右両方の〔ヴェロキラ〕が苦悶の聲をあげています。
〔ヴェロキラ〕のHP確認すると2割程度殘っているようです。
距離があったので激突のダメージも大きく、2900ほどでした。
殘り60秒。
殘りHP6030。
再び一閃。
背後からノイズのような悲鳴が聞こえます。
あと2回で削り切らないと……しの焦りが出てきます。
原型を留めていない〔ヴェロキラ〕がこちらを見つめています。
まずい……。
そう思ったときには遅く、〔ヴェロキラ〕が遠距離攻撃を放っていました。
避けることもできないので、HPが殘ることを祈りました。
【アルティナローブ】という〔ユニークモンスター〕からドロップしたユニーク防には20メートル以上離れた魔法攻撃のダメージを50%軽減する効果がありましたが、〔ヴェロキラ〕の攻撃が魔法かどうかもわからないので、本當に神頼みです。
しばかりの抵抗と両手をの前でクロスし、防姿勢もとってみます。
――直撃まで3秒
スローモーションのようにじられます。
――2秒
殘り時間も50秒を切っています。
耐えきれても倒せるかどうかわかりません。
――1秒
視界をすべて奪う巨大な火の玉が私のキャラクターを飲み込もうとしています。
――0秒
ヘッドフォンを通して、直撃による音とそれではない何かの音が聞こえてきます。
また負けちゃったな……。
と思っていますが、頭のどこかではまだ生きているという期待が捨てきれませんでした。
20秒ほど畫面が煙に包まれていましたが、それも晴れ、結果を見ることができました。
私のHPは940殘っていました。
生き殘った!
そう喜びましたが、《火傷》の狀態異常が付いています。
《火傷》は秒間最大HPの100分の1ダメージを継続で與える狀態異常です。
CONが60あっても105ダメージけます。
あと9秒しないうちに私は死亡し、<転生>クエストに失敗することでしょう。
最後のあがきとばかり殘っていたMPをすべて注いでほぼ鉄屑と化した〔ヴェロキラ〕へ【ペインボルト】に備わった≪中級雷屬魔法≫を発します。
「≪サンダーライン≫」
私が使える魔法の≪シェイプ≫の中で最も到達が早い≪ラインシェイプ≫を用いました。
1秒もかからず〔ヴェロキア〕に直撃しました。
悲鳴すら聞こえないのでしもダメージがらなかったのでしょう。
魔法を全く使ってこなかったツケでしょうか。
『〔機械怪鳥 ヒクイ・ヴェロキラ〕の討伐を確認しました。クエストクリアおめでとうございます』
テロップが畫面上に表示され、案所のクエストカウンター前に転送されました。
「えっ?」
自然と口から疑問の聲がれました。
「おちゅかれー! 倒せたかなー?」
ヘッドフォン越しに聞こえるエルマの聲もどこか遠くから聞こえる気がします。
「チェリー?どうしたの?」
なにか話さないと……。
「う……うん。倒せた……のかな?」
「どゆことー?」
事の顛末を話します。
「えっ?それで最後に殘りMP全つっぱの≪サンダーライン≫で倒せたわけ?」
結構エルマもびっくりしているみたいです。
「たぶん」
「…………」
「エルマ?」
すぅっと息を吸い込む音が聞こえエルマが話し始めます。
「〔ヴェロキラ〕討伐おめでとう! やっぱり私の目は間違っていなかった! チェリーは魔法系向いてると思ったんだ!」
≪中級魔法≫で20メートル以上の狙撃はかなり難しいとは知ってましたが、そこまで褒められることではないと思います。
「いやいや! ほとんど初めて使った攻撃魔法で既定距離以上の攻撃を功させるのはほんとにすごいよ!」
「よくわからないけど、全くけなくて、あとちょっとで死ぬって狀態でも撃てる魔法にちょっと楽だなって気持ちはあるよ」
「VRでもできそうじゃない?」
「できるかもしれない」
「よっし<転生>すませて魔法系の武制作素材集めに行こう!」
そういえば完了報告がまだでした。
『<転生Lv.3>解放クエスト完了。報酬をおけ取りください。』
NPCから報酬をけ取り確認します。
「えっと、報酬は……【機械怪鳥の片翼】? どんな効果だろう」
「ユニークだからね !私のとは違うはずだから確認してみなきゃ!」
「そうだね」
【機械怪鳥の片翼】
ユニーク特殊裝備品
裝備効果:裝備中自が発した抵抗に関する能力の対象外になる
固有スキル:≪アンチ・グラビティ≫:アクティブスキル
STRの上限を100制限することにより発
數ミリ空中に浮いた狀態になる。
≪フライト・レギュレトリー≫:パッシブスキル
地面に接していない狀態で姿勢の制及び方向転換が可能となる
「だってさ。裝備補正とかはないね」
「んーあんまりいいスキルとは言えないね。でも努力の証だから記念にとっておくんだよ!」
「うん。わかってる。【稱號】は【廻転生】と【豬突猛進】の2個が増えたみたい」
「【豬突猛進】の効果は何かな?」
「えーっと、『直線の移中に攻撃を行うとAGIの10%分追加ダメージを與える』だって」
「まんまじゃん」
「まんまだね」
「なんにせよお疲れ様!蓄積経験値でのレベルアップで何レべまで行った?」
「えーっと、転生Lv.3+8だね」
「おおー! Lv.308! あたしと一緒じゃん!」
「ステータス開いてるついでにポイントも割り振っちゃおう」
「それがいいねー! まだ振り直しはできないんだから慎重に振ってね!」
「言われなくてもわかってるよ」
今回の<転生>の完了とレベルアップでの獲得ポイントの合計が40ポイントでした。
レベルが一つ上がるごとに5ポイント貰えるのでそこに変化はないようです。
「いつもおもうんだけどさー?」
「なに?」
「<転生>すると転生Lv.3+0とか表示されるじゃん?」
「そうだね」
「<転生>前は転生Lv.2+100じゃん?」
「うん」
「同じ300なのにややっこしいよね!」
同じことを私も一度目の<転生>の時に思いました。
「運営にとっては意味があるんだと思うよ」
「そっかー」
と話してる間にポイントの割り振りが完了しました。
「MNDに+20、INTに+20振ったよ」
「片方に振らなかったの?」
「まだ魔法系慣れてないからね。慣れるころにはまたポイントたまってるだろうし」
「チェリーらしい考えだねー!」
「そうかな?」
「これでMND系とINT系のスキルレベル9まで使えるようになったよ。」
「あれ? レベル8までのスキルじゃないの? MNDもINTも82だよね?」
「そうだけど【アルティナローブ】のパッシブで1つあがってるから」
「あっそうか! そのパッシブほんとすごい効果だよね!」
<Imperial Of Egg>では対応するステータスの10分の1のスキルレベルをもつものしか発できないという制約があるのでこういったスキルはとても貴重だそうです。いままで魔法系全然つかってこなかったからすごさがわかりませんでした。
「チェリーの<転生>も終わったことだしどうする?狩りでも行く?」
「素材掘りしたいけど、さすがにちょっと疲れたから仮眠とってくるよ」
「だよねー!」
「ここで落とすのはよくないし『ヴァンヘイデン』まで転移しよっかな」
「あたしもホームにいるみんなにチェリーの勇姿を伝えるから戻るね!≪テレポート≫」
「≪ディメンション・ゲート≫」
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