《VRゲームでもはかしたくない。》第2章8幕 羅剎の王<Rāvaṇa>
サイズ調整可能というプレイヤーに優しい〔神話級モンスター〕と向き合い、戦闘が始まります。
多數の腕に持った武を振り回し、こちらに走ってきます。
「背後にも顔があるな。死角はあんまりないじかぁ」
前衛のポジションにジュンヤが移しつつぼやきます。
「上から魔法系の攻撃中てるのはどうかな?」
「いかにも耐ありますーって顔してるけどねー」
「は試し。≪ダーク・ボルテックス≫」
頭上から黒い雷が〔羅剎の王 ラーヴァナ〕に直撃します。
『効カヌ』
でしょうね。【イナーシャグローブ】の持つ抵抗無視のスキルが発しているのにも関わらずこの通らなさ。たぶん何か裏がありますね。
「ジュンヤ。理系の攻撃が通るか確かめて!」
「まかせろ!」
〔ラーヴァナ〕へ向かって走るジュンヤを注視します。
「そ……ラァ!」
長い槍である【神 トリシューラ】を振り回し、膝の下あたりを突きます。
「なっ!?」
驚きの聲を上げ、二歩、三歩とバックステップし、後退します。
「チェリー。こいつはダメージ減算式だ!」
なるほど。一定以上のダメージを與えないと0ダメージ扱いにされてしまう厄介な系統の奴ですね。<Imperial Of Egg>では裝甲持ちなんて呼ばれています。
「どのくらいの減算なのかは俺が調べる! お前らは攻撃手段を考えろ!」
「わかった」
「りょうかいだよー」
再び〔ラーヴァナ〕へ駆けていくジュンヤを見つつステイシーに話しかけます。
「ステイシー。デメリットなしで撃てる魔法で一番威力があるのは?」
「雷と雨の複合魔法かなー?」
「ちょっと使ってみてくれる?」
「まかせてー。≪ハイドロ・ルート・ボテックス≫」
貓姫のお城の中で使ったスキルの上位互換っぽいですね。
滝のような勢いの水流に纏わりつくように雷が走り、〔ラーヴァナ〕へ向かって行きます。
複數のスキルを併用しつつ戦っていたジュンヤがし距離を開け、道を作ります。
『フッフッフ……』
無傷のようですね。
「うそだー。これで無傷ってー」
「俺の攻撃も微塵も通らねぇ!」
うーん……。ステイシーと一緒にシナジーする屬の絶級魔法を撃つっていう手もあるんですが、ステイシーは雷と水で私は闇なのでシナジーできないんですよね。
ジュンヤは水系と炎系のスキルしか持ってないですし。
あぁ。ジュンヤの最大レベルのスキルにステイシーの雷魔法を乗っけるのはありかもしれませんね。
「ジュンヤ。水系の魔法で一番強いの撃てる?」
「チャージがある! その時間を稼いでくれればいける」
「了解」
「ステイシー。雷の絶級魔法をジュンヤのに乗せてみて」
「りょうかいー」
で、私は……。
「≪召喚〔GGB〕≫」
『グルゥオール』
「おーおー久しぶり。寂しかったかい?」
『グルルン』
「よしじゃぁ行くよ」
そう言って私はゴリラの背に乗り、おんぶされているような狀態になります。
「はしれー」
『グロゥ』
ドッドッドと音を立ててフィールドを駆け回ります。
『セーラム』が暇すぎてフランと一緒に考えたゴリライディングの果を見せるときがきました。
言葉を出さず、ゴリラの肩をツンツンして指示を出します。
接近してみてわかったのですが、〔ラーヴァナ〕はAGIが低く、STRもそこまで高くない様に思います。裝甲持ちは基本VITも低いので突破する方法さえ見つければそこまで苦労する相手ではありません。
手っ取り早いのが詠唱魔法で消滅させる方法なのですが、相手の手のがわからない段階でデメリットのある攻撃をしてしまうと事実上のリタイアが待っているのであまりしたくはありません。
一応人型モンスターっぽいですけど【斬罪神】のスキルが通じるようにも見えませんし。
そういう思考をしながら〔ラーヴァナ〕の攻撃をゴリライディングで回避し、ジュンヤのスキル発準備が終わるのを待っていると、聲がかかります。
「チェリー! 行けるぞ! 退避!」
「わかった!」
大聲で返事をし、當てやすい位置に〔ラーヴァナ〕を導し、橫に避け、線を確保します。
そのついでに巻き込まれても怖いのでステイシーの橫まで非難し、〔GGB〕を≪帰還≫させました。
「いいきだ! ≪【龍神大瀑布】≫ゥ!」
槍の先端に円形のゆがみが生じ、そこから凄まじい量の水が龍の形を模して出てきます。
「≪ハイライトニング・ドラグーン≫」
ステイシーも雷で龍の形を模し、ジュンヤのスキルにかぶせていきます。
「いやー。このスキルが中抜けのハリボテ龍でよかったー」
雷の鎧を纏い、二回りほど大きくなったジュンヤの水龍が〔ラーヴァナ〕を喰らい盡くさんと向かっていきます。
〔ラーヴァナ〕は足を止め、多腕を差し、防姿勢を取ります。
防姿勢をとるということは……。
【グオオオオオオオオ】
やはりダメージが通ったみたいですね。
大きく仰け反り、膝を地面に著きます。
「チェリー! 詠唱魔法行くよー」
「うん!」
私が使う詠唱魔法は≪常世ニ溢ルル消エヌ闇≫。
これでHPへの直接ダメージを與えます。
『歌エ 歌エ 原初ノ闇ヨ 踴レ 踴レ 原初ノ闇ヨ 我ガ神ヲ供トシ 有ルベキ姿ニ戻リ給フ 出デヨ 出デヨ 常闇ヨ ゼヨ ゼヨ 死ノ闇ヨ』
同時にステイシーも詠唱魔法を重ねます。
『≪生マレ 生マレ 見エヌ力ヨ 吠エヨ 吠エヨ 槍ノ如シ 我ガ神を供トシ 目ニ見ヌ非ノ一槍ヲ≫』
『≪常世ニ溢ルル消エヌ闇≫』
『≪此ノ世ノ見ルコト能ワヌ雷槍≫』
二つの詠唱魔法が視界を覆いつくします。
私の魔法により暗闇となる視界の中に、星さえ劣る眩いが走っていきます。
『ゴアアアアアア!』
先に私の詠唱魔法があたったようで、後方に飛ばされていく〔ラーヴァナ〕が一瞬だけ見え、その直後ステイシーの詠唱魔法が〔ラーヴァナ〕のを食い千切り、おびただしい量のを噴き出すのが見えました。
『グオオオ……グガァッ』
上半と下半がおさらばした〔ラーヴァナ〕はその多腕を生かし、何とか上半だけで起き上がります。
「これでも足りねぇかよっ!」
そう大聲をあげるジュンヤと、MPの大半を消費しきり、きすら取れない私とステイシーは死を覚悟しました。
〔ラーヴァナ〕が姿勢の維持に使っている腕以外で武を投擲し、こちらを狙ってきます。
「くそっ!」
ジュンヤがそう吐き捨て、私達の前に立ち、投げられた武を槍で叩き落していきます。
「くっ……無限に湧いてくるのかこれは!」
腕をよく見ると投げた瞬間新しい武が握られ、投げ続けてきます。
「≪マテリアル・シールド≫」
私より先に直から回復したステイシーがジュンヤに対障壁を張ってくれました。
その後すぐ、私も対障壁を張り、作戦を練り直します。
「あれで倒せないってにはおどろいたぜ」
「私だって驚いてる」
「僕もー」
「どうするよ?」
「もっかいジュンヤとステイシーでさっきの合わせ技……って言いたいけどMPもTPも足りないよね?」
「すっからかんー」
「俺はPOTで回復できる」
「これ使って」
先ほどポテトから頂いたグランドポーションを渡します。
「グラポ!? こいつはありがてぇ」
すぐに飲み干して、TPを回復させたようです。
「ステイシーも私もガス欠」
「じゃぁ俺が頑張るしかねぇな。もっかい≪【龍神大瀑布】≫いくか!」
「まって!」
今の間にMPがしだけ回復したのでそのないMPでできることをします。
ぶっつけ本番……でもやるしかない。
ごくないMPを使い、新しい魔法のシェイプを想像し、創造します。
さっきのステイシーが使った≪ドラグーン≫のようなシルエットを思い、魔法を発します。
「≪シャドウ・アーマー≫」
そうして中抜けのハリボテ龍を作り出し、【稱號】に記憶させます。
「大丈夫。ステイシーほどうまくいくかわからないけど」
「上等だ! チャージするぜ」
ステイシーはその間も対障壁を強化し足りしていましたが、急にあっっと聲を上げ、提案します。
「僕もないけどMP回復してる分で龍の中に魔法で槍を作ってれるよー」
「助かる!」
「流石だねステイシー!」
「いつでもいけるぜ」
「気合れていこー」
呼吸を合わせ、スキルを順に発します。
「≪【龍神大瀑布】≫」
「≪サンダー・スピア≫」
「≪ドラゴニック・シャドウ≫」
ジュンヤが出した水龍の中に、雷の槍が生され、それらを守るかのように私が鎧をかぶせます。
「けぇえええええ!」
私達の魂がこもった攻撃が〔ラーヴァナ〕へと吸い寄せられていきます。
『グオオオ! ヤメロォォオォオ』
ダイナマイトの発にも匹敵する轟音が鳴り響き、そのあとには〔ラーヴァナ〕の姿はありませんでした。
『〔羅剎の王 ラーヴァナ〕の討伐を確認しました。ユニーク特殊裝備品【神 チャンドラハース】をインベントリに獲得しました。【傲慢】の【稱號】を獲得しました。』
【神 チャンドラハース】
裝備効果
ダメージ減算1000
固有スキル
≪投擲≫
ダメージ減算がついているのは良いですね。武じゃなくて特殊裝備品扱いなのもグッドです。
≪投擲≫は武を投げる時にダメージボーナスと命中率に補正がかかり、TPを消費して手元に武を呼び戻すことができるスキルです。まぁオマケ程度ですね。あっ普通に剣として使える! 便利!
【傲慢】は……特に意味のない【稱號】でした。
ジュンヤとステイシーも各々報酬を確認しているようですね。
「僕も特殊裝備品だったー。【神 ラークシャサリング】。MPの自回復効果付きだー」
「なかなかいいねー」
「まじかよ……」
「どうしたの?」
「俺が【神 ラーヴァナ】獲得しちまった……」
「だってジュンヤのおかげじゃん」
「そうか……。でもこのスキル……」
「ん?」
そう言ってジュンヤのメニューをのぞき込みます。
≪【羅剎化】≫とありますね。
「効果は?」
「……≪【羅剎化】≫」
そう唱えるたジュンヤがみるみる大きくなり、腕が4本増えました。
「…………ブッ!」
「つ……使いどころをえらぶねー」
こらえきれずに私達は笑ってしまいました。
to be continued...
魔力、愛、君、私
姉を探すリルと戦士のハルマ、 お互い同じ國の出身でありながらリルには小さな身體で殘酷な過去を抱えていた。 メーカーお借りしました() https://picrew.me/share?cd=cljo5XdtOm 亀さんペースですごめんなさい
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