《VRゲームでもはかしたくない。》第6章38幕 選<lottery>
ムンバが見つけ出した『可いねぇちゃんのいる』宿に二泊することになりました。
「ここは闘技場も近くて栄えてる。必要なものは今のうちに準備しておけ。チェリーとステイシーは要項しっかり読んどけ」
「分かった」
「りょうかいー」
「俺は寢るぞ。この像とな」
ムンバはそう言って先頬作ったマオの像を丁寧に抱き締めながら歩き出しました。
「チェリーこれー」
ステイシーが要項のとあるページを指さしながら聲を掛けてきます。
「ん? 『転移に類するスキルの使用止』、『試合中武の換止』……ちょっとまって? これ決闘大會だよね?」
「うそでしょ」
エルマも驚いたようで、要項を覗き込んできます。
「ほんとだ……。こんなのまともに戦えないじゃん」
「エルマがいう通りだな。何か事があるんだろうが、厳しすぎるルールと言わざるを得ないね」
「これは明後日はずっと魔法で攻撃しないとだめそうだね」
私は魔法をおとりにして【暗殺者】の高速移と転移を含めた速度で倒すつもりでいたので戦を見直さないといけません。
「まぁまだ一日ある。明日ゆっくり戦法は考えることにしよう。ワタシも休ませてもらうよ」
「じゃぁあたしも」
サツキがそう言ってロビーから部屋へ向かって歩き出そうとするとエルマもついて行きました。
「ボクが思うことを言ってもいいかな?」
「察しはついてるけどー。なにかなー?」
「これって強者に対する制限だよね」
「そうなるねー。狀況に応じて武を変更する、たくさんの裝備を持った上級プレイヤーに対する制約だー」
「つまり、序盤に本気の、裝備を、見られるのは、避けないと、いけない、わ」
「マオに言う通りになるね。対策を取られちゃったらマズイ」
「そうはいっても僕なんかは使える屬すくないしなー」
「まぁやれるだけ頑張ろう」
私がそう言うと解散の流れになり、各々が部屋へと向かいます。
部屋へとった私はすぐにログアウトしてまだ早いですが休むことにしました。
次の日は特にやることもなく、ステイシーと武屋をめぐり、明日の決闘大會の準備を進めます。
「急ごしらえの裝備じゃどこまでできるかわからないよねー」
「だよね」
「とりあえずは溫存したい裝備の分は用意しないとー」
そう言ってステイシーは≪上級火屬魔法≫が扱える裝備を購しました。
私は序盤を剣で戦うことにしたので、特に新調する必要はなかったので良かったです。
5回戦を戦うと仮定して、剣士スタイル、魔法剣士スタイル、暗殺者スタイル、火屬魔法、闇屬魔法の5種類さえあれば、ある程度は戦えると思っています。
そもそも勝ち上がれないとあまり意味がないんですけどね。
ステイシーは最初の一戦だけ火屬魔法で戦って、殘り4戦は雷屬魔法と水屬魔法で何とかするそうです。
対策を取られても、3回分なら突破できるそうです。
その日は武屋巡りと、し練習した程度で終わりにし、明日の大會を待つことになりました。
私は再び宿屋のベッドにりログアウトし、明日の大會のために早めの就寢をしました。
「おはよ」
起きてすぐログインした私は、すでにロビーにいたステイシーに聲を掛けます。
「おはよー。かてるといいねー」
「目的は勝つことじゃないんだけどね。マーリンさんって人に會うのが目的だし」
「そうだけどー。でるには勝ちたいじゃんー?」
「まぁそうだね。負けて聞くのと、勝って聞くなら、勝って聞きたい」
「その気持ちが大事だ」
後ろから掛かったムンバの聲にし驚き振り向くと、別人が立っていました。
「えっ? 誰?」
「俺だ。裝備整えるついでに髭剃ったんだよ」
「あ、あぁ……」
ほんとに一瞬誰だか分かりませんでした。
「本音を言うと、カワイイ姉ちゃんが見に來てくれる見てえだから気合れたってとこよ。お前ら気合れていくぞ」
「対戦したら全力で倒す」
「本気でいくよー」
「あぁ。もちろんだ。俺も本気で相手する」
そして私達三人は握手をわし、妙に私の手をむにむにしていたムンバには冷たい目線をプレゼントし、闘技場へと向かいました。
「そういえばエルマ達は?」
「先に會場で待ってるってー」
「気合十分だな」
會話をしながら歩くと、アリスが私達を待っていたようで、こちらに向けて手を振ってきます。
「準備は大丈夫?」
合流した私達に、アリスがそう問います。
「ある程度はしてきました」
「僕もー」
「俺は準備なんかいらねぇからな」
「うんうん。よしじゃぁ行こう」
そう言って歩き出すアリスに続いて、私達も闘技場の口へと來ます。
「タグを拝見いたします」
NPCがそう言ってアリスのタグを確認したのを見て、私もインベントリからタグを取り出します。
全員タグを見せ終えると、控室のような場所に通されます。
「ここが控室ー?」
「いや。違うよ。ここは選室。今から選が始まる。全員揃ったらだけど」
今日の決闘大會に參加する者たちが、ぞろぞろと選室と呼ばれたこの場所へってきます。
目線で威嚇し合う者、何度も戦ううちに友が芽生えたものなど様々な空気が漂っていますが、一人だけ異質の空気を放っているプレイヤーがいました。
「アリスさん。もしてして彼が?」
「うん。そう。誰も話しかけないでしょ?」
アリスの言う通り、誰も聲を掛けませんでした。
數分すると選擔當らしきNPCが現れ、番號を引いていきます。
「タグ8番!」
タグの番號で選を行い、上から順にトーナメント表を埋めていくようです。
人數が會わないので、シードもあるみたいですね。
「完全ランダム選で、私でもシードはあんまならない」
へぇ。そうなんだ。というようにアリスの説明を聞きながら、自分の番號が呼ばれるのを待っていると早いうちに私のタグ番號が呼ばれます。
トーナメント表の結果、私とステイシーは反対側ですが、アリスとムンバとは同じ側になりました。
そして最悪なのは、マーリンというプレイヤーもこちら側だったということです。
それにこのまま行くと私とアリスが二回戦で當たります。
「これはもう何というかくじ引きが悪いね」
「恨むんならあのNPCだな」
「僕だけ仲間外れー」
そう三人が言っているのを聞いて、私は考えを変えます。
そうなんですよ。別に私が勝たなくてもムンバやアリス、決勝まで殘るであろうステイシーが勝てばいいのです。
そう考えると気持ちがし軽くなり、案された控室で、お茶を飲み始めました。
to be continued...
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