《終わった世界の復讐者 ―僕はゾンビをってクラスメイト達に復讐する―》第28話 スーパーへ
翌日の朝。
トバリとユリは、昨日の大型スーパーの前にやってきていた。
昨日ホームセンターから持って帰ってきた資は、そのほとんどを剎那の家に運び込んである。
日持ちする食糧品類もすべて剎那の家に置いてあるため、剎那の家自がちょっとした倉庫のようになってしまっているが、それを気にする人間はここにはいない。
「……さて、どうしようか」
運転席の窓越しにスーパーを眺めながら、トバリは軽くため息をついた。
こうして來てみたのはいいものの、あのスーパーの中にどうやってるかはあまり考えていなかった。
いや、正確に言えば考えてはいるのだが、それがあまり気乗りしない策なのだ。
「トバリ、行こう」
「……そうだな」
しかし、ここでうだうだ悩んでいても仕方ない。
とにかく行を起こさなければ。
そう思ったトバリは、スーパーの駐車場へ向けてアクセルを踏んだのだった。
しばらく進むと、立駐車場の途中の道が、大量の車で遮られていた。
「どうなってんだ……?」
これでは先に進めない。
しかし、ここまでは一本道だったはずだ。
昨日のトラックは、どうやってここを通ったのだろうか。
「いや、そうか。多分仲間のトラックが通った後に、毎回このバリケードを作り直してるんだろうな……」
手間はかかるが、確実な方法でもある。
今のこの世界では、時間も余り気味になるだろう。
「トバリ。どうするの?」
「うーん……」
ユリのそんな質問に、トバリは答えあぐねる。
とりあえず、これからどうするか考えなければならない。
向こう側の人間に気付いてもらう必要があるのだが、その方法も悩みどころだ。
現実的な方法としては、ライトを照らしたり、クラクションを鳴らしたり、あとは普通にこの車のバリケードをよじ登って突破するのがいいと、トバリは考えていた。
「そういえば、ゾンビたちが何に反応するのかもよくわかってないんだよな、僕たち」
「ゾンビは、大きな音とか、強いなら、反応するよ。耳は、聞こえるし、目は、見えてる、みたいだから。人間の、けはいにも、びんかん」
「……お、おう。そうなのか。ありがとう、ユリ」
幸いにも、ユリがゾンビの習を知していたおかげで、ライトを照らしたり、クラクションを鳴らすのは悪手だということがわかった。
おそらくトバリやユリが大聲を出してもゾンビは集まってこないのだろうが、中にいる人間たちにとっては、基本的なゾンビ対策もできていない地雷だと思われてしまうだろう。
「それじゃあ、普通に歩いて行くか」
「そう、だね」
方針が決まったところで、トバリとユリは車から降りた。
武は、小さめの包丁だけ隠し持っていく。
不要な軋轢あつれきを生まないことは必要だが、護用に持っておいたほうがいいという判斷だ。
中にって、どういう會話の展開でここの集団に取りるか、トバリは改めてシミュレーションしておくことにした。
しかし、トバリのそんな思考は、突然遮られることになる。
「――止まれ」
「――ッ!?」
車をよじ登ろうとしたところで、そんな聲をかけられた。
トバリが慌てて聲がした方に目を向けると、車の上から、一人の男がこちらをすくめている。
ラフな格好をした男だが、ガタイは良く、警察や自衛隊などの人間なのかもしれない。
何のもじられないその顔に、トバリとユリは警戒が強める。
「後ろを向いて手を上げろ。妙な真似をしたら撃つ」
「っ……!?」
そして、彼の右手には拳銃が握られていた。
「早くしろ」
「わ、わかった」
ユリが不安そうな表でトバリを見るが、トバリも考えがまとまらない。
……し、甘く見ていた。
刃や長ならともかく、拳銃となると、トバリにもその威力は未知數な部分がある。
今のところは、おとなしく手を上げておくべきだろう。
これで頭を撃ち抜かれたら終わりだが、向こうはある程度人數がいる集団なのだ。
警備の問題で、常に同じようなことをするように言われている可能が高い。
早まった真似はしないと祈ろう。
分が悪い賭けではあるが、仕方ない。
トバリは、言われるがままに、後ろを向いて両手を上げた。
それを見て、ユリも同じように両手を上げる。
トバリたちが命令に従ったのを確認した男は、左手を上げて、何か合図を送るような仕草をした。
その直後、拳銃を持つ男の後ろから、數人の男たちが現れる。
後ろを向いているトバリは、車のほうから數人の男たちが現れた気配をじ取っていた。
後ろを向いたまま両手に手錠をかけられ、トバリは前を向かされる。
隣を見ると、ユリも同じような狀態になっていた。
そしてトバリは、目を見開いた。
ユリの手錠を確認している男。
背はそこまで高くない。
し太り気味で、何も知らない人間が見れば、のある顔立ちをしている。
だがトバリは、そいつがどれほど醜悪な人間なのか知っている。
笑いながら、他人をげることができる人間なのだということを、トバリはよく知っている。
――城谷。
トバリの復讐対象の一人が、目の前にいた。
「……っ!? 夜月!?」
トバリが正面を向いたことで、城谷もトバリの存在に気がついたようだ。
明らかに狼狽ろうばいした様子で、トバリから一歩後ろに下がった。
「なんだ、知り合いか?」
拳銃を持った男が、城谷にそう問いかける。
城谷は頭を振りかけて、しかしそのきを止めた。
「……おれと辻くんのクラスメイトです」
「そうか。何か含みがあるようだが、問題がある生徒だったのか?」
拳銃を持つ男の言葉に、城谷は一瞬口ごもったが、
「いえ……どちらかというと、おれや辻のほうが問題児でした」
「そうか」
その會話を聞いて、トバリは心で驚愕していた。
あの城谷が、トバリをかばうようなことを言い出すとは思わなかったのだ。
「……っ」
トバリの顔には、驚きのが強かったのかもしれない。
城谷は、トバリの顔を見て骨に視線を逸らした。
「ん? どうした?」
「……とりあえず移しましょう。話はそこで」
「お前が話とは珍しいな。わかった。話はあとで聞かせてもらう」
拳銃を持つ男がそう言うと、男たちはバリケードの向こうに撤収する準備を始めた。
準備と言っても、しだけ車をかして、人が通れる程度の隙間を作っていただけだったが。
その作業が終わると、トバリとユリはバリケードの先に連行されていく。
心なしか、先ほどよりはしだけ丁寧な扱いになった気がする。
とりあえず、すぐに殺されたりすることはなさそうだ。
今のところ、それなりに統制が取れている集団である印象をける。
城谷の態度はし気になるが、骨に嫌悪を示されたりはしていない。
それがいいことなのか悪いことなのか、今の段階ではまだ判斷がつかないが……嫌な予がするのも確かだ。
男たちの様子を観察しながら、トバリはそんなことを考えていた。
「よし、止まれ」
トバリとユリは、駐車場にあるスーパーのり口のところで、その足を止められた。
スーパーの店舗の中には、今のところれてもらえる気配はない。
どうやら、話もここでするようだった。
「し待っていろ。――城谷!」
「はい!」
拳銃を持った男が城谷を呼び、その耳元で何事かを囁く。
城谷はそれを聞くと黙って頷き、スーパーのり口を通って、一階の食料品売り場へと続く階段を下りていった。
しばらくすると、城谷が戻ってきた。
そのかたわらに、見覚えのある年を連れて。
し低めの長で、中的な顔立ちの年だ。
久しぶりにその顔を見たが、城谷と同じく大して変わっていないように見える。
年――辻は、トバリを見ると、大きく目を見開いた。
驚いた様子を隠せていない。
「……夜月か?」
「ああ。そうだよ」
できるだけ棘を含まないように言ったつもりだったが、辻は骨に顔を歪ませた。
それは、何か痛ましいものを見るかのような、そんな表に見える。
こうして、城谷と辻にとっては思いがけない、しかしトバリによっては予定されていた再會が、果たされた。
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