もたついている大柄の前に立ち塞がるのは容易いことだった。大柄は驚いたように足を止める。やはりきはとろいらしい。

「久志はどこにいる ?さっきボコボコにしたって言ってたよな」

 大柄は再び餅をつく。そのまま後退りながら、「ひぃ」と掠れるような聲をあげた。

そのあまりのけなさにいささか拍子抜けしたものの、聖二は拳を握りしめ、低い聲を保つ。

「教えろ」

「す、すみません。教えます、教えます ! だから許してください !」

 大柄が勢を変えたと思うと、へこへこと頭を地面にり付け、土下座を始めた。

すっかり毒気を抜かれてしまった聖二は、拳を緩め、聲のキーを戻す。呆けたようなしゃべり方になっていることだろう。

「……久志のいるところに案しろと言っただけだ」

「そ、そうですね ! すみません !」

 大柄は立ち上がった。そのはずみで、被っていたフードがずり落ちる。

聖二ははっと息を呑んだ。

大柄の顔で、一匹の蛇がとぐろを巻いていた。

黒い蛇はうねり、首をばし、深紅の舌を細く泳がせている。

鱗に艶はなく、蛇に生気はじられない。

しかし、濡れた土を想起させる黒く小さな眼からは妙な生々しさがぜられた。

不気味なタトゥーだった。

顔にそんなものを彫れば、社會で生きにくくなること請け合いである。

一どう生きていくつもりなのかと余計な懸念が聖二の頭をよぎった。

「みんなが、友達の証にってこれをプレゼントしてくれたんですよ」

 へらへらと笑い、大柄が頭をかく。どう考えても薄気味悪いタトゥーには似つかわしくない表で、ミスマッチ合がことさらに不気味だった。

みんなというのは、逃げていった不良たちのことだろうか ?

大柄が足をひっかけられていたのを思い出す。彼の仲間でのポジションが漠然と察せられ、いたたまれない気持ちになった。

「早く案してくれないか」

 話が線する前に、聖二はもう一度促した。

大柄は立ち上がり、走り出した。