《染めの館》りこ編 第2話
「ねえ、おねえちゃん。」
「?!」
そこに居たのは、小さい頃の私だった。
ありえない。過去の私がここにいる。
「ねえ、あそぼ。おねえちゃん。」
そこにいるもう1人の私は、一切表を変えないまま1歩ずつ近づいてきた。
「や、やめろ…來るな…」
「ねえ…オねェチゃン…」
だんだんとノイズがかかるような聲になってきた。耐えきれず耳を塞ぐ。
(やめろ。やめてくれ…!)
「オオォォォ-ネェェエェチャァアアァン」
「もうやめてくれっ!!!」
目をつぶって大聲でんだ。気がつくと靜寂があたりを包んでいた。
「な…何だったんだ…」
ふと、足元に落ちたケータイに気づく。急に暗くなったかと思ったら電池がなくなったようだ。
「まずいな。あと10%か。ひとまずにもの所へ戻るとしよう。」
そう思い扉のノブに手をかけた。
「っ!噓だろおい…」
鍵がかかっていた。押しても引いてもビクともしなかった。
「クソっ!にも!!あつし!!りんご!!!」
どうやら聲は屆いていないようだ。
「懐中電燈はにもに渡してある。電池が切れたら終わりだ。」
とは言ったものの、何も手段がない。
「幸いまだ明かりがある。そのうちに部屋を探索するしかない。鍵があったとしてもないとしても。」
そう意気込んで探し続けたものの、何も見當たらなかった。
「なんで?なんでないんだ?」
頭がおかしくなりそうだった。過去の私が現れて、扉が開かなくなって、電池がなくなって…
そうこう考えているうちに電池が切れてしまった。
「あぁ…そんな…」
暗い。何も見えない。怖い。
「そう言えば、ガキの頃こんなことあったな。」
ふと昔のことを思い出して鼻で笑った。
「小學三年生のちょうど今頃だったな…」
お薬、出します!~濡れ衣を著せられて治療院から追放された薬師さんが辺境で薬屋を開きました。極めたポーションは萬能薬と呼ばれて回復魔法を超えるようです~【書籍化コミカライズ企畫進行中】
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