溫かい腕に包まれて年は靜かに眠っていた。

確かにそこにはがあると、年は一人そうじていた。

「ね～んねん、ころ～り～よ～。おこ～ろ～り～よ～。ぼうやは良い子だ～、ねんねしな～」

しかし、年はゆっくりと目を覚ます。

そこに広がるだらけの世界を確かめるように。

年は世界を憎んだ。

何もかも消えてしまえばいいとさえ思った。

自分は世界から逸れてしまった異端者。

しかし世界の調律にり込めなかったのは自分が悪いことなのか。

――許さない絶対に。

――僕は絶対に僕をこんな目にした奴等を許さない。

――たとえ僕が死んだとしても、

――この世から消えてしまって、

――奴らが僕を忘れてしまったとしても

年は心の中に何度もそう語りかけた。

そのとき、

「×××××！」

その聲に年の心は微かに反応した。

どこからか年の名を呼ぶ聲が聞こえた。

遙か彼方、闇に包まれそうな心の先、

小さなが差し込む外の世界との唯一の繋ぎ目。

そこから滲んでくるの聲。

それは年に屆いたのだろうか。

年自もそれを知ることは終にはなかった。

「×××××――！」

その聲を遮るように闇が覆っていく。

そして、への道は閉ざされ、心を闇が征服した。

の聲が年に屆くことはもう無い。

ここは闇が全てを支配し、憎しみと慟哭がこだまする世界。

もう誰にも止められない。

年はおそらくこの世から消える。

そして闇が年のから弾け、滲み出すように世界を覆っていく。

「僕はお前らを絶対に許さない」

年は宙へと駆け出し、無殘にも墮ちてゆく。

そして年は黒い霧になり、明日を呪った。

このさきに生まれてくるであろう年の怨念を、

年の化をして。

そして……自らがする母へと捧げるように。

醜い年の姿を。