《Duty》chapter 12 郭 -2
2 7月8日 郭
「この生徒の恨みが現化され『審判』って出來事を起こしている。そしてそれによってお前たちのクラスメイトが次々と死亡している……か」
乙黒はひたすらにぶつぶつと太たちから教えられた事を反芻するように呟いていた。
「ただこれは僕の個人的な推理……いや思い込みです。ただその調査結果によって何かわかるかもしれない」
「思い込みか。100パー當たっている推理なんて有り得ない、初めは全て思い込みさ。なんだか順調に亜門警部のを引いてるらしいね、お前」
「……チッ」
霧島は普段太たちには見せないような表で舌打ちをした。相當イラついているようだ。
「だが人が殺人以外の方法で、かつ自殺願も無い生徒たちが死亡している。程確かに普通の人間の仕業とは思えないな」
霧島は紙コップに注がれたスポーツドリンクを一気に飲み干した。
そんな霧島を一瞥した後、太が乙黒に向かって言った。
「俺たちは貴方を一応かたちとして信じてこの話をしたんです。だから貴方も調査結果を証明してください」
「実に不思議な事件だね。これは警察に相談しても偶然の一致として処理されるか、もしくはその伊瀬とかいう生徒の自殺兼集団殺人事件としか疑われないだろうね」
桜は俯いて、ぽつりと溢すように言った。
「偶然だと私も最初はそう思ってました。そう思いたかったのかもしれません。でもこのままだと確実にまた人が……死にます」
「……だろうねえ」
「……怖いんです、私たちは」
そんな桜から視線を外し、乙黒は太と霧島に向かって言葉を発した。
「……その平森隆寛とかいう生徒、一応警戒しておいたほうがいいよ」
「俺たちは平森隆寛が犯人だとは思いにくくて……というかクラスの中に犯人がいるとは……」
太の推論が気に食わないとでも言いたそうに、霧島は太を橫目で睨みつけた。
「犯人だとか、元兇だとかじゃなかったとしても、『審判』が行われたときに自由にかせてはいけない存在であることは確実だよ」
太は考えるように俯いた。
「僕たちの現狀はこれが全てです。調査結果を教えてください」
「……ああ。いいとも」
乙黒はファイルをゆっくりとテーブルの上に差し出した。
* * * * *
調査結果資料要約。
今から10年前、宵崎高校1年2組の男子生徒が校舎屋上から飛び降り自殺をした。
(これによって學校は長い間屋上への生徒の進を止とするが、最近解される)
當時発行された各地元新聞記事にも生徒の自殺のことは記載されたが、どの記事でも原因とされるものは『両親の離婚』であった。
しかし、當時この生徒は同じクラスの生徒たち複數名から「イジメ」と思われる行為をけていた可能が高いことがわかった。
(宵崎高校は近隣からのイメージも真面目で禮儀正しいと評判だった為、そんな高校で稀な「イジメ」だったらしい)
また教師陣が行われていた「イジメ」を認識できていたかは不明。
イジメが自殺の原因となったかどうかは不明ではあるが、仮に學校側がイジメを知っていたとして、事実を隠すため新聞記事題でカモフラージュしたことが可能の域であり得る。
(宵崎高校理事が地元でも有數の権力を握る資産家であった。報作をすることは十分に可能ではあっただろう)
自殺した生徒の名は『影充』。
両親が離婚するまでは父と母と妹の4人家族であった。
* * * * *
桜と霧島は驚愕した。
「影って……」
太もその綴りを聞き、自分の中で何度も繰り返し読んでみた。
「この自殺した生徒の名前……ミカゲ ミツル……」
「ミカゲ……」
桜と霧島はお互いに顔を見合わせた。
「ミカゲって……どこかで聞いたことあるな……」
ひたすらに考え込む太に対して、霧島は呆れ顔で告げた。
「だからキミは。……クラスメイトの名前ぐらい覚えておくものだよ」
「……なんだと!?」
太はその瞬間、數時間ほど前の記憶を掘り起こしてみた。
學校廊下にて、階段へと向かうとき、曲がり角を曲がって、仄かに香るシャンプーの匂いと、なびく黒髪、肩がぶつかり、「らないで」。
そのとき桜が呟いていた「ミカゲさん」。
「まさか……」
「この自殺した生徒の名前、影充……家族構にある『妹』ってまさか」
「俺たちのクラスメイトのミカゲさんと同一人……?」
そのとき太に小さな衝撃が走った。太の脳裏に浮かぶ數時間前の景。
『何も知らない貴方は幸せね』そして、『神谷太』。確かにミカゲはあのとき太の名前を呼んだ。
クラスメイトだから太の名を知っているのは當然であろう。だが『何も知らない貴方』とはどういう意味なのだろうか。
つまり裏を返せばミカゲは『何かを知っている』ということなのだろうか。
「ミカゲさんは何かを知っている……?」
太は頭を押さえ、靜かに呟いた。
「なんだって?」
霧島は太を見つめた。桜は太の背中を心配そうにる。
「太? 大丈夫?」
「あ、ああ……ちょっと頭が……」
「大丈夫か? 頭痛薬いるか?」
乙黒が太を気に掛けたが、
「大丈夫です」
と、太は丁重に斷った。
「おそらくミカゲさんは……10年前自殺した生徒、影充の妹だ……」
霧島は不思議そうに太へ目を向ける。
「神谷君?」
「そして、ミカゲさんは……何かを知っているに違いない。そしてそれを俺にアピールしてきたんだ……きっと」
「ミカゲさんが、『審判』について知っているってこと? でもどうして私たちにアピールする必要が……?」
「……それは、わからない」
霧島はそんな太を眺めて、真剣な表からいつもの作り笑顔へと変貌させた。
「神谷君がそこまで言うってことは、確かかもしれないね。どうしてそんなふうに考えるのかは知らないけど」
太は靜かに霧島の姿を見つめた。
「まあ、ただ。僕たちのクラスに起きる出來事と揃った『影』という苗字。これらが全て偶然の一致とは思えないね」
「盛り上がっているところ悪いが」
乙黒は軽い咳払いをして、掌に頬を乗せ、指でテーブルの隅をコツコツと叩きながら言葉を挾んだ。
「一応その資料プラスおまけで見つけた報がある。だが、あくまでおまけで見つけた報だ。そこらへんの信憑は察してくれ」
「……はい」
「影充の父親はおそらく既に死亡している。母親に関して今は消息不明で、職業など何をしているのかわからないが……」
「……はい」
太は軽く相槌を打った。
「なんと當時は學校の講師をしていたって話だ。どこの學校かは知らんが」
「講師……ですか」
「それはまた僕たちに近な仕事ですね」
考え込むように俯く太の隣で、霧島が怪しく笑った。
「あとお前らが今話題にしている妹とやらは、おそらく現在は高校生ぐらいの年齢として考えていいと思う」
「やっぱり……か。いよいよミカゲ妹が怪しくなってきたな」
「ほーん……まあアタシはまだよくわかんねえけど、なんとなくお前らが言う郭は見えてきたかもな、ぼやっと」
乙黒がコメカミに指を當て、目を閉じて囁いた。
「當時、イジメが原因で自殺した影充の呪いによって、お前らのクラスで生徒が次々と死んでいる。もしも、ミカゲ妹(仮)とやらが本當に影充の妹ならば、何か『審判』について知っている可能もある……そして神谷太、お前に何故か接してきた……か」
乙黒は懐から手帳を取り出し、転がっているペンを床から拾い上げた。
「アタシもさらに詳しく影充とその家族について調べてみることとするよ」
「あ、ありがとうございます」
太は頭を押さえたまま禮を言う。
「まだ確証も無いわけだが、一応そのお前らが気にしている影充の妹(仮)の名前を教えてくれ」
桜が「はい」と答えて、差し出されたメモ用紙に漢字と読み方を綴って見せ、そのまま口に出して告げた。
「『影零』。『ミカゲ レイ』さん です」
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