《Duty》chapter 19 絆 -5
5 9月16日 終わり
雷鳴に紛れて聞き取れなかった微かな音がやっと屋上にも聞こえてきた。
それは確かにパトカーのサイレンだった。
「……」
五十嵐と東は睨みつけるように屋上から音の鳴るほうを見た。
かなり近い。
いや、これは既にこの校舎のなかにまでやって來ているほどの。
そのとき、沢山の人々が屋上への階段を上って來る足音が聞こえてきた。
そして、屋上のドアが蹴り飛ばされ開けられた。
何人もの大人たちがやって來た。拳銃を持っている。盾も裝備している。
その中の一人に亜門の姿があった。
懐から手帳を取り出すと広げてから言い放った。
「警察だ。これ以上の抵抗はキミたちにとっても無意味だ。おとなしく柄を拘束させてもらう」
太と霧島は全に掛かっていた重りが全て霧のようになり、消えていくのをじた。
「霧島……お前、親父さんのこと呼んでたのかよ……」
だが霧島は目を丸くして呆然としていた。
「いや……僕は呼んでいない」
「え……」
「おそらく……乙黒さんが、気を回らせてくれたんだろう?」
太が大きく深呼吸をすると、既に五十嵐と東は大人たちに取り囲まれていた。
五十嵐と東は一切の表をかさず、まるで機械か何かのようなほどに、手を上げ降參していた。
五十嵐と東は取り押さえられた。
ふとその近くを見ると、靜間の死を大人たちがシートで覆っていた。
靜間のだらけの死。
もう目の前で人が殺される瞬間には見慣れてしまったのか。
太たちは悲鳴すら上げられなかった。
靜間のことはどう処理されるのか。
五十嵐と東が何も発言しなければ、この事件・慘劇の被害者の一人となるのだろうか。
もしかしたら命を懸けて、生徒を守った教師として稱えられるのかもしれない。
どう処理されてもいい。
太はそう思ってしまった。
気が付くと影零がシートで覆われた靜間の死のそばに立っていた。
そして、シートを足でどけ、靜間の顔を見下ろしていた。
風になびく彼の髪のせいで表はわからなかった。
だが雨のなかに、何か別の輝きが彼の頬を伝ったような気がした。
そんな影零に気が付き、近くの大人たちが彼を死から離した。
抵抗もなく影零と靜間奈子の距離は離れていった。
笑顔ではなかったが、重荷が消えたかのような安堵の表で、太と桜、霧島はお互いを見合った。
もう『審判』は終わった。
自分たちは助かったのだ、と。
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