《ヤメロ【完】》1
「ねぇ。今度の週末は久しぶりに遊園地にでも行かない? 」
晩酌しながらダラダラとテレビ畫面を見ていた俺に向けて、隣に座った穂がつまらなそうに話しかけてくる。
遊園地か……。混んでそうだし面倒だな。
そんな事を思った俺は、酒のつまみにと穂が用意してくれた枝豆を一莢ひとさや摑むと自分の口へと運んだ。
元來、俺はアウトドア全般を好まない。他人ひととの面倒な関わりを極力避けたいというのもあるが、単に人混みが苦手だということも理由の一つだ。
言ってしまえば、仕事以外の自由な時間は全て自宅でゆっくりとしていたい。というのが本音だったりする。
そんなっからのインドア派である俺の趣味といえば、自宅でのんびりとホラー映畫を鑑賞することで、まさに今、晩酌をしながらその趣味の真っ最中である。
今日借りてきた映畫はどうやら失敗だったようだ。イマイチ盛り上がりに欠ける映像をボーッと眺めながら枝豆に手をばす。
俺に付き合わされる形で興味なさ気に畫面を流し見ていた穂は、そんな俺の顔を覗き込むと口を開いた。
「……ねぇ、聞いてる? 」
不機嫌そうな聲音にチラリと視線を向けてみれば、やはり不機嫌そうな顔をした穂と視線がぶつかった。
やばいな……。これはそろそろキレられるかもしれない。
焦った俺は一度わざとらしい咳払いをすると、崩しきっていた制をしだけ正した。
「遊園地じゃなくてさ、映畫でも見にいかない? 」
「いつも見てるじゃない。遊園地がいい」
俺の提案をあっさりと卻下した穂は、先程よりさらに不機嫌な表をさせると頬を膨らませた。
本人としては怒りを表現しているのだろうが、その表はなんとも可らしい。
思わずクスリと聲をらすと、キッと俺を睨み付ける穂。そんな顔ですら可く思える。
「それがさ、普通の映畫とは違うんだって。前に話したことあるだろ? めちゃくちゃ面白いから」
最近のマイブームであるPOV方式のホラー映畫。し前に流行った撮影方法で、今となっては決して珍しいわけではないのだが、俺が最近こんなにもハマっているのには理由わけがある。
『実際の殺人映像』とのれ込みで上映された、一つの作品との運命的な出會いがあったからだ。
【書籍化・コミカライズ】誰にも愛されなかった醜穢令嬢が幸せになるまで〜嫁ぎ先は暴虐公爵と聞いていたのですが、実は優しく誠実なお方で気がつくと溺愛されていました〜【二章完】
『醜穢令嬢』『傍若無人の人でなし』『ハグル家の疫病神』『骨』──それらは、伯爵家の娘であるアメリアへの蔑稱だ。 その名の通り、アメリアの容姿は目を覆うものがあった。 骨まで見えそうなほど痩せ細った體軀に、不健康な肌色、ドレスは薄汚れている。 義母と腹違いの妹に虐げられ、食事もロクに與えられず、離れに隔離され続けたためだ。 陞爵を目指すハグル家にとって、侍女との不貞によって生まれたアメリアはお荷物でしかなかった。 誰からも愛されず必要とされず、あとは朽ち果てるだけの日々。 今日も一日一回の貧相な食事の足しになればと、庭園の雑草を採取していたある日、アメリアに婚約の話が舞い込む。 お相手は、社交會で『暴虐公爵』と悪名高いローガン公爵。 「この結婚に愛はない」と、當初はドライに接してくるローガンだったが……。 「なんだそのボロボロのドレスは。この金で新しいドレスを買え」「なぜ一食しか食べようとしない。しっかりと三食摂れ」 蓋を開けてみれば、ローガンはちょっぴり口は悪いものの根は優しく誠実な貴公子だった。 幸薄くも健気で前向きなアメリアを、ローガンは無自覚に溺愛していく。 そんな中ローガンは、絶望的な人生の中で培ったアメリアの”ある能力”にも気づき……。 「ハグル家はこんな逸材を押し込めていたのか……國家レベルの損失だ……」「あの……旦那様?」 一方アメリアがいなくなった実家では、ひたひたと崩壊の足音が近づいていて──。 これは、愛されなかった令嬢がちょっぴり言葉はきついけれど優しい公爵に不器用ながらも溺愛され、無自覚に持っていた能力を認められ、幸せになっていく話。 ※書籍化・コミカライズ決定致しました。皆様本當にありがとうございます。 ※ほっこり度&糖分度高めですが、ざまぁ要素もあります。 ※カクヨム、アルファポリス、ノベルアップにも掲載中。 6/3 第一章完結しました。 6/3-6/4日間総合1位 6/3- 6/12 週間総合1位 6/20-7/8 月間総合1位
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