《心霊便利屋》第8章 約束された平和と閉ざされた扉②
寫真を見るなりなくとも俺とクレアは固まった。
…これは一どういうことなんだ。
その寫真には驚くべきモノが映っていた。
ダムのり口にも見えるコンクリート製の施設から這い出ようとしているナニかが映っている。
それは以前、俺とクレアが遭遇した手足が異様に長い化けの姿だった。
…個差もなく全く同じものが3も映っている。
「晃、これってあの時の?」
俺は生唾を飲み込み、
「あぁ、俺にもそう見える…」
「おいおい、マジか!」
徹もさすがに信じる気になったようだ。
例の調査団が摑んだ報というのが、
「彼らにはスカウト役がいて、去年の春先くらいから醫療機関の関係者を裝い、投薬実験の協力者を募って、報酬目當てで集まった人間を奧多にある舊日本軍の地下壕に作った研究所に監しているようです。」
「…え?」
「クレア、どうした?」
クレアは恐る恐る振り向き、
「去年浩一が大學の學生相手に投薬治験に參加する人を集めるバイトをしてるって言ってた…」
なんだって?!
治験の協力者を募っていた人間が正不明の霊になり、その前後で手足が長い化けが俺達の前に現れたとなればもう偶然とは言い難い。
「アイツそんな前からこんなサイテーな実験に関わってたの?」
「さすがに最初から全部知ってて関わってた訳じゃないと思うけど、ニュースとか見てれば勘づくところもあっただろうしな。確かに高橋の責任は重い。」
「私がもっと早く気づいてれば…」
「無理だよ、林さんの言うことが本當に正しいなら、下手にけば消されて終わりだったはず。」
「…私、許せないの。もし浩一が拐の実行犯だったなら何も知らなかったわけないでしょ?」
「それも実際どうだったのかもわからないよ。それで責任がなくなる訳じゃない。なにより彼はもう死んでるんだし、俺達はしでも早く真相に辿りついてケリをつけないとな。」
「そう、だよね。」
「あぁ、それに瀬戸さんサイドの話が本當なら高橋はあくまで下っ端なんだし、俺達だけじゃどうにもできないよな。林さん、調査団がいるって話でしたけど、戦力としても使えるんですか?」
「もちろん。ですが…」
「どうかしました?」
「潛していた調査団全員と連絡がとれなくなっています。」
そんなことだろうと思った。じゃなければ今ごろ合流しているはずだし。
「それで、潛する方法は?大想像はできるけど、敵の施設に忍び込んだ途端、俺達は住居不法侵になるし、相手が人間なら倒せば傷害罪、下手したら殺人罪になりますよね?」
「そこは大丈夫です、あなた方には責任がいかないように手配してあります。」
それにはし心當たりがあるが…
「詳しくは教えてもらえないんでしょ?」
「はい。」
徹が俺の方を向く。
「晃、この案件はマジでヤバい思うぜ…」
「…そうだね。今回は人間も相手にしなきゃいけないんだよ?」
「あぁ、でもこの件を放置したらとんでもないことになるのも事実だ。」
「ではけていただけるんですね?」
「…條件がある。この數じゃ無理です。なくとも10人援軍をもらえないと。」
林さんはスマホを取り出し、玄関の方まで歩いていった。
「ちょっと、晃!ほんとにいいの?」
「今回ばっかりは相手がヤバいって。警察も役に立たないだろうし。」
「ああ、わかってる。でも、子供が拐されたのに、犯人を捕まえられないなんてあり得ないだろ!」
「それは俺も同じ気持ちだ。だからってなんで俺達がやらなきゃいけねぇんだよ!」
「瀬戸さんは何も言わなかったけど、多分この依頼は政府からだと思う。」
『え?』
クレアと徹の聲が重なる。
「國の立場なら表だってけないし、當然そうなれば非公式で解決に當たるしかない。マスコミが嗅ぎ付ければこの國は一瞬で大混だ。しかも相手は人間だけではないだろうしな。」
「じゃあなんで瀬戸さんはそれを私たちに隠してるの?」
「それは…」
俺が言いかけると、
「俺達を守るためだろ?本當の依頼主を知ったって俺達が得することなんて一つもないだろうし、下手すりゃ口封じされたって不思議じゃない。こんな世の中じゃ國の暗部を國民に知られたくないだろうしね。」
「それなら私たちは何も聞かない方が良いってこと?」
「そうだろうね。」
ガチャッ
林さんが戻ってきた。
「お待たせしました。10人の援軍が向かっています。ただ、全員あくまでただの人間ですので、悪霊等怪異が相手となると戦力にはなりませんので。」
「結構です。相手が武裝している場合それを制圧してもらえれば文句はありません。」
眉唾だらけの霊能者を呼ばれるよりよっぽどありがたい。
「それで必要なものは私と相良さんで集めますし、援軍が來た後、この事務所を作戦本部としますがよろしいですね?」
「え?俺も??」
徹が面食らっている。無理もないか。
「はい、結構です。俺達は何をすれば?」
「黒さん、楠本さん、もうチケットを手配済みですのであなた方は明日の朝、岡山に向かってください。瀬戸様がお待ちです。」
…なに?
「は?さっきは仕事の合間に來いと言われたばかりで、いきなり明日ですか?」
「そうです。」
林さんは表一つかえず返事をする。
なんかこの人、好きになれないな。
「今日は早くお休みになって明日に備えてください。」
急な話過ぎるが、逆に考えれば俺とクレアの訓練を早めたってことは、それだけヤバいあいてだってことなんだろう。
俺とクレアは食事を済ませ帰宅し、早めに休むことにした。
朝、目が覚めるとクレアが俺と自分の分の著替えをキャリーバッグに積めていた。
「おはよう。ごめんな、俺の準備まで。」
「ついでだから気にしないで。」
「ありがと。」
新幹線の時間までは2時間くらいあるので駅前のカフェに寄った。
「なんか、大変なことになっちゃったね。」
「そうだな。でもこういう事って表に出なかっただけで昔からあったのかもな。とにかく生き殘ることを優先しなきゃ。」
「うん、同棲もしなきゃいけないしね♡」
「あぁ、間違いない。」
あ、新幹線が來たようだ。俺とクレアは指定席に向かった。
俺達は駅弁を楽しみ、し仮眠をとると、ちょうど岡山についたようだ。
大3時間ちょいか。
駅を出ると岡山駅のシンボルの噴水が見えた。
…シンボルだったはずなのに、水は出てないんだな。
「やっぱ東京とは全然雰囲気が違うね。」
クレアがキョロキョロしながら呟いた。
…待ち合わせはこの辺のはずだよなぁ。
そう思っていると、目の前に黒いリムジンが止まった。
初老だが、背筋が真っ直ぐびた品のある運転手が出て來て俺達に深々と頭を下げた。
「お待たせいたしました。黒様と楠本様ですね?」
「あ、はい!」
「全然待ってません!」
運転手は後部座席の扉を開けた。
「どうぞ、お乗りくださいませ。」
『お邪魔します。』
リムジンで揺れること30分、俺とクレアはし張しながら飲みなどのサービスをけていた。
…生きている世界が違うと思ってしまうのは俺だけか?
クレアはそとの風景を見て楽しんだりしっかり順応してるようだ。
山道を上り、ようやく目的地に著いたようだ。
車から降りると、大きな鳥居を潛り周りを見渡すと。
…きっとでかい神社だとは思っていたが想像以上に広いじゃないか!
「遠いところをご苦労様。」
瀬戸さんだ。ここでは裝束を著ているんだな。
「確かに遠かったです。」
「でも、楽しかったね!」
「それはそれは。」
「瀬戸さん、力の使い方を教わる前に聞きたいことがあるんですが。」
「存じてますよ。ですが、力の制と新たな能力の獲得が先です。」
…新たな能力?
「その前にお茶にしましょう。」
瀬戸さんとし話した後、すぐにトレーニングとなった。
俺のトレーニングは、まず力の制だった。
瀬戸さん曰く平らな心で使う必要があるという。
怒りや勢いに任せればいずれコントロールを失って、神を消費し死に至るということらしい。
そして二つ目、相手が人間の場合、俺の力を使うと、打撃と神両方を攻撃することになり相手は死んでしまうと。
そこで神に作用する力のみを放つことで相手を無力化することが出來るのだと。
この力の用途については後程だそうだ。
クレアは片腕に金の腕を付けられた。
これはサトラレの能力を霊に対してのみ作用させるための霊らしい。
これを最大限に使用するために必要な神修行をけていた。
もう一つは【聲の障壁】というもので、サトラレの力を円形狀に展開することで、霊の攻撃、侵を防ぐというものらしい。
瀬戸さんが以前見せた霊力の壁と原理は同じものだという。
本來は何週間かにも渡って教わるものを無理矢理3日で叩き込まれたことで俺とクレアはフラフラになっていた。
…だが、まだ瀬戸さんに聞かなきゃいけないことが殘っている。
俺達は修行後最後の夕食を囲いながら、瀬戸さんへ質問をぶつけた。
「俺は相手が誰だとか組織がどうとかは聞く気などありません。」
「はい。では何が知りたいのですか?」
「あの施設では何が行われてたんですか?」
「…人実験です。」
「的には何を?」
「手した報によると、生きた人間を捕らえて、ある裝置にれます。
そこにれられた人間は、原理まではわかりませんがと魂が分離し、は仮死狀態となり保存が出來、魂はそのままの意識を保つよう作られていたそうです。」
「そんなこと何の為に?それに可能なんですか?」
クレアは話を聞いて呆然としている。
「結果は失敗だったようです。は死を迎え、魂は歪みその人間がもっている闇の部分が増幅されてしまう。」
「それがあの化けなんですか?」
「そのようです。」
「なんでその化けは私を狙うんです?」
クレアの疑問に瀬戸さんは、
「申し訳ありません。私にもそれはわからないのです。あなた方が突き止める他ないのかも知れません。」
待てよ。
そいつらはその化けを何のために作ってるんだ?
「瀬戸さん、その化けはなぜ作られたんです?」
「恐らく他國に対する兵転用かと。」
瀬戸さんの話を要約するとこうだ。
長らく日本は、隣國からの驚異にさらされ続けており自衛隊では専守防衛のため攻めいることも出來ない。
だが、魂のみ海を渡り抹殺対象のみを殺害出來れば日本は誰にも勘づかれることなく、安心安全に邪魔者を排除できる。
まともに聞いてれば、馬鹿馬鹿しい話だが、こんな研究に何十年もの間費やしていたようだ。
「あの、浩一の霊は何なんですか?化けとは見た目も違うし、生前の姿のままに見えました。それに姿は自由に変えられるみたいですし。」
「そう、我々は恐らく彼が功例じゃないのかと見ています。」
なんだって?!功している可能があるのか!
俺とクレアが言葉を失っていると、
「功例が彼一人だとは限りません。我々は急がねばなりません。日本が平和を約束された國で無くなる前に。」
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