次の日、隣の村からお通夜をしてくれる業者さんがやってきた。

ぼんやりとした心のまま日中を過ごし、夜。數分で一日が終わるような気がした。

「いいの？　私もお供させてもらっちゃって」

「いいんですよ、瀬戸さんが犯人を探してくれたんだし」

花姉さんが瀬戸さんにそう言う。

僕達はお母さんの部屋で、棺にったスミレさんを囲みながら皆で話をしていた。

「ねえ……、皆、香壽君に話してもいい？　経緯とかさ」

全員が曖昧に頷いたようだった。

瀬戸さんはちょっと俯く。キラキラした瞳の中に蝋燭の炎が映って、更に煌めいている。

「まず……ね、香壽君。徳郎さんが亡くなった夜に香壽君が見た縄垂らしは茂さん。やっぱり、誰かに見られても気づかれないようにだって。そして、神を確認しようとお墓の方に行ったときに見たのは、千ちゃん」

千姉さんは申し訳なさそうに笑う。

「ごめんなさい、香壽。怖がらせちゃったわよね。私も、香壽と菫ちゃんと同じことを考えて実行したのよ。……ただ、見つかるかもしれなかったから……、縄垂らしの格好をしただけ。振り返ったとき一瞬香壽の顔が見えて、ばれてたかと思ったんだけど」

僕は完全に縄垂らしだと妄信していた。

最初に見た縄垂らし……いや、茂さんだったけど、それと大きさも見た目も全然違ったのに、僕は縄垂らしだと信じて疑わなかったのだ。

「そして、犯人がどうして茂さんだと思ったか。この前香壽君と……菫ちゃんと話したとき、家のれ替わりが機なんじゃないかという話になった。ちょっと千ちゃんには悪いけど、一応その時點では千ちゃんも容疑者候補だったよね。

でも壯一郎さんが亡くなったことで、松園家と竹園家はれ替わることになった。これによって、犯人は竹園家にいる説が濃厚になる。

でも子さんだと將太さんを殺す機がないし、祐三さんは家がれ替わる前に家出をしている。よって、祐三さんである可能は低い。皆の話を聞いたところ、裕二さんは甘いを吸いたい格だから、自ら當主になる必要もないの。

それで、殘るは裕一さん」

「でも……茂さんがやっただなんてどうして？」

僕が聞くと、瀬戸さんはその質問を待っていたと言うように頷いた。

「まず一番犯人である可能が高いのが裕一さん。でも、徳郎さんと菫ちゃんを殺す機が無い。これは容疑者全員に言えること……。

となると、機が家のれ替わりじゃないという説も出てくる。そうだったとして、単獨犯でこの人數を繋ぐ一つの機があったとも思えなかったの。

そうなれば、殘るは複數犯でしょ。複數犯ならば、家のれ替わりという大きな機を軸にして、もう一つの機があってもおかしくはない。この場合、もう一つの機の被害者は徳郎さんと菫ちゃんかな」

「だったら、もう一人の推理は一からやり直しじゃないですか」

「いや、まず子さんが徳郎さんと菫ちゃんを殺す機があるとは思えない。むしろ蔑む対象がいなくなるから、殺さないんじゃないかな。裕二さんも、殺す理由があるようにはとても思えない。だってそもそも竹園家の人達は、あまり梅園家と関係が無いんでしょ？

関係が無いなら、機も無いはず」

そこで千姉さんが手を挙げた。

「それで、私と茂さんが第二容疑者だったんですよね」